第一章 五節
クレア・フローランスは放浪していた。
村を出てから2日、いまだローグ村へは着かず山道をさ迷っていた。
「もしかして、迷ってるの?」
キサラが呟く。
「もうすこしで着くと思うんだけどさ」
などといいながらカリンよりもらった地図をくるくると回すクレア。誰が見てもこれは地図を使いこなせていない様子だ。
とりあえずカリンの話通り東にずっと進んではいるが。と、木々の間から光が見える。外の様子が見えるようだ。森を抜けると
広大な水面が広がっていた。
「…こんなに大きい湖はみたことないな」
「あれーアレンくん。海見るのはじめて?」
クレアがにやにやしながら質問してくる。直感で判断する。こいつは俺を馬鹿にしている。しかし、初めて見る海に感動を抑えられない。水面はキラキラと輝きこんな雄大な景色があったなんて知らなかった。
「海…これが海か」
「もっと驚いてもいいのに。つまんない」クレアがふてくされている。
「キサラは海は…はじめてじゃなさそうね」
キサラはろくに海を見てはいなかった。
「もうすぐね」
キサラの目線の先には大きな城が見えていた。
「まさか、あれがローグの町?もはや城ね」
海沿いの崖の上に城がたっていた。ランスタッド国のような洋風の城ではなく、和風な作りだ。海沿いの切り立った崖の上に町はあった。町は坂になっており崖の上に建つ城に向かうように町が作られている。
「あれがローグの町…森を抜けなければ行けないのなら見つからないはずだわ」
「もうすぐ日がくれるわ。急いで町に向かいましょう」
ローグの町へ向けて出発する。
「あの、私はここで待ってるから。」
と、突然キサラが言い出す。
「でも、もうすぐ日も暮れるし」
「大丈夫です。私はここで待っていますから」キサラは力強く言う。
いつにもないキサラの強情な態度に仕方がなくローグの町へ行くのは明日にして、キャンプをすることにした。
食事を済ませたあとも、キサラは落ち着かない様子だった。まるでなにかを恐れているような。
「キサラ、この町で取りに来た荷物というのは何なんだ?」
「…薬」
「薬?それは薬草とかか?」
「それはわからないけど。でもこの町にしかない薬」
「その薬はどうするんだ?だれにわたすんだ?」
「それは…ごめんなさい」
それ以降キサラは黙ってしまった。
キサラが求める薬とはなんなのか、そしてその薬を誰に渡すのかまだわからないことばかりだがあの町へいけばきっと答えは出るのだろう。彼女はなにかを隠している。それだけは確かだった。
翌朝、朝日が上る前にキサラが起き上がる。
「…キサラ、どこか行くのか?」
キサラはすこし驚いた様子でこちらを見る。
「…早くもどれよ」
といい、ふたたび目をとじる。
「…はよ。あれ?キサラちゃんは?」
クレアが起きる。ボサボサの髪を直しながらクレアが問いかける。
「あぁ、朝早くでていったが」
「え?」
クレアが立ち上がり問い詰める。
「ちょっと!それはどういうこと!?どこにいったの?」
「…さぁ、わからないが」
「キサラちゃんはまだ傷が完全に癒えていないのよ!?」
「目的のものを取りに行ったんじゃないのか?」
「…あんたねぇ、キサラちゃんが心配じゃないの?」クレアはあきれながら言うと
「そんなことはないが、彼女なりに目的があったんだろう」
「ほら!ローグの町へ探しにいくわよ」
クレアは寝起きにも関わらずに町に向けて走り出す。
まったく、元気な女だ。こういうところは関心する。
町へは正面から町へはいる。
王国兵とは敵対関係にあるこの町で奇襲の心配はないのだから。クレアも警戒はしていないようだ。町のなかは小さい村と変わらない程度には栄えているようだった。
「へぇ、ジンは孤高の戦士と聞いていたのだけれど。こんな町を作るなんて」
「あぁ、それと気になったことがひとつ。この町は兵士が多すぎる」
「言われてみれば、たしかに…」
これは商人よりも兵士の方が多いんじゃないのか?まるで、戦争でも起こそうとしているようだ。
この中でキサラを探すのはすこし手間だな。
「クレア。本当にこのなかを探すのか?」
「もちろんよ!アレンはあっち!私はこっちを探すわ!」
そういうとクレアは人混みの中へ消えていった。
さて、俺も探しにいくとしよう。
人混みを掻き分け、キサラを探す。大通り・裏通路など町の方々を探したがキサラの気配は見えない。あと、探していないところと言えば。町の奥、そびえ立つ城を見上げる。
「まぁ、一度確認しにいってみるか」
城の正門には門番が5名たっていた。
さすがに城の中にはキサラはいないだろう。それにそうそう容易く侵入できる城とは考えられないし。考え直し城に背を向けたとき背後から殺気を感じた。全身に鳥肌がたつ程の殺気。咄嗟に振り向くと城の門がゆっくりと開く。姿を表したのは着物を纏った初老の男性だ。服の上からでも見て分かる屈強な体格は強者を表現しており、同時に殺気を放っていた者。おそらくこの男がジンだろう。
男を睨みつつ後ろに距離をとる。視線を外せなかった。それほどの殺気。気を抜いたらすぐに心が恐怖に負けてしまいそうになる。
「ほぅ。珍しい客人だ。こんなところで話すのもなんだ。さぁ、城の中へ」
ジンの言葉は不意すぎて思わずついてきてしまったが、城の中を確認できるチャンスと思い後へ続く。城の中は開放的な部屋が多く中は隅々まで見渡すことが出来た。しかし、残念ながらやはりキサラの姿は見えない。それに城の中には兵士ばかりが見える。
ジンに案内されたのは城の最上階。部屋の四方の襖を解放しているようで城下の景色が一望できた。城の上は町中どころか辺り一面を見渡せるほどの絶景だった。やはりキサラはの姿は城下町にはみえないようだ。
「どうだ?素晴らしい眺めだろう」
「なぜ俺を知っている」
ジンはふふ、と小さく笑う。
「その両刃の仕込み刀。そんな珍しいものは牙蓮の名刀四神ぐらいしかない。それにお前から感じる強さが証明している」
こいつ、牙蓮を知っているのか。
「紹介が遅れたな。私はジン。この町を統べる者だ。名前を聞いていなかったな」
「俺はアレン。俺をここに呼んだ理由はなんだ」
ジンは首を横にふると即答する。
「牙蓮は最強の流派と言われている。その使い手がどれ程の力の持ち主なのか。前々から気にはなっていた。だが、牙蓮の噂はここ10年ほど聞こえなくてな。使い手は死んだのかと思っていたが、まさかおまえのような若者が使い手とは驚いた」
ジンは手を差し出す
「お前を呼んだのは外でもない。俺のものとなれ」
周囲に警戒をしながら慎重に言葉を放つ。
「断る。俺は誰かの下で力を使おうとは思わない」
ジンは顎の髭を撫でる
「たしか、おまえの連れは反乱軍のクレアと言ったか。王国に追われているのだろう?俺がお前たちを守ってやる。それでどうだ」
ジンの申し出は反乱軍としてなら悪くない申し出だ。しかし、この男…俺の直感が信用してはいけないと警笛を鳴らしている。
「もし、お前が反乱軍に加わり、王を倒したらどうするつもりだ」
「無論、俺が新しい王となる。そしてこの国を最強の国家にする。とりあえず敵国であるキュリオス国を潰し、植民地とする。そして…」
「もういい」
ジンの話を遮る。こいつはまたこの国に争いをもたらす。王が変わっただけ、この国の貧困は変わらない。
「その話を聞いて確信した。俺はお前の下には絶対につかない」
人は顎の白髭をさする。
「ならばどうする。俺を殺すのか?」
「…別に。俺には関係ない」
階段へ戻ろうとしたとき下の階から鎧の音がする。
ジンの方を振り向く。と、外から二人の忍びが室内に入ってくる。忍びは男性と女性。格好は黒い服装でまさに忍びという感じだ。背中に刀を背負っている。
「安心しろ。俺はお前に手を出したりしない」
忍び二人が背中に背負っていた刀を抜刀する。
「…俺はな」
同時に二人が切りかかってくる。二人の斬撃を四神をつかい受け止める。
男と女は交互に斬撃を放ってくる。ジンこそ手を出して来ないが二人を相手に戦闘。二人の攻撃を交互に四神で弾きながら攻撃をかわす。が、やはり二人相手では分が悪くじりじりと部屋の端へ追いやられる。頃合いをみて敵の刀を弾き、最上階の部屋から飛び降りる。
「よい、放っておけ」
後を追おうとする忍び達をジンが制する。
「面白い男だ」
屋根から海に向かって飛び降りる。高さは50メートルにも及ぶ。着水の瞬間、覚悟を決める。
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目を覚ますと何処かの小屋にいるようだ。波の音が聞こえることから海の近くだということはわかる。
「くっ…」
左手に痛みが走る。どうやら着地に失敗したらしい。
あの高さから落ちて片腕で済んだなら運が良かった。
「それにしても、ここはどこだ」
コホコホと小屋の奥でだれかの咳が聞こえる。
「だれか、いるのか?」
返事がない、咳ばかりが聞こえていたため重度の病人なのだろう。
「あ、目が覚めました?」
女性が小屋の中へ入ってくる。
「あなた、城の裏の海岸に打ち上げられていたんですよ。私ビックリしました」
「あなたが、助けてくれたのか」
「えぇ、私はリラ。怪我の調子はどう?」
リラと名乗る女性は長髪を後ろで結び。落ち着いた印象を受けた。年も俺よりすこし上といったところだろう。
「助けてくれて感謝する。俺はアレン。怪我はすこし左手が痛む程度だから大したことはない。失礼だがあそこにいるのは」部屋の奥を指差して尋ねる。
「あれは、お母さん。町からのお薬が買えなくてずっと体調を崩しているの」
リラはそういうとすこしうつむいてしまった。少し不味い質問をしてしまったと思った。
「そうか」
「ね!ご飯は用意しているんだけど食べていかない?」
「いや、まだ…!?」
ご飯?大事なことを思い出した。
「今何時だ?」
「もうすぐ日没だよ?」
「まずい…」
急ぎ小屋を出る。
クレアを探しにいく。必要もないようだった。村の入り口にクレアがたっていた。…それもかなり怒っている様子。
「ちょっと!どこにいっていたの!?」
「すまない、探すのに手間取った。そっちはどうだ?」
「まったく。こっちも、だめね。見つからないわ」
後ろからリラが追いかけてきた。
「アレン!急に走り出したからなにかと思ったわ。あら、そちらは?」
「…なに、その女は?」
リラをみてなにやらクレアは怒っているようだ。
「あぁ、こっちはリラ。そしてこちらがクレア」
クレアの気を紛らわせるようにそれぞれの紹介を行う。
「よろしく、クレア。そうだ!夕飯を準備しているのあなたもいっしょにどう?」
「え、えぇ」リラの雰囲気にクレアは押されているようだ。
リラの小屋は町からはすこし離れている。海岸沿いにある家だ。昨夜この家に気づかなかったのはちょうど反対側の海岸にあるからだろう。
「みたところ、あなた達はこの町の出身じゃなさそうだけど。どうしてこの町に?」
「人を探していたの。キサラって言う少女なんだけど」
リラは少し悩んだあと、首を横に降る。
「いえ、聞いたことないわね」
「そうよね、ありがとう。また明日探してみるわ」
「じゃあ、私は母にご飯をあげてくるから先に休んでて」
リラは母のもと向かっていく。
リラの母の病、町からの薬が買えないといっていたがキサラの求めているものと同じ薬だろうか。
と、クレアがリラが居なくなったことを確認してから小突いてくる。
「ちょっと、あの女はなんなの?まぁ悪い人じゃなさそうだけど」
「リラは俺が城から逃げて気を失っていたところを助けてくれたんだ」
「え…城?あなたまさか城に入ったの?」
「あぁ、入ったが」
クレアがあきれた顔をする。
「あなた、行く先々の町で問題を起こすつもり?」
「そんなつもりはない。だが、ジンという男は信用しない方がいい」
あの男の殺気は常人のそれではなかった。もっと悪い。
クレアはため息をつく。
「とにかく。明日は私一人で町に探しに行くわ」
「そこなんだが、町を見渡す限りキサラの姿は見えなかった」
「うーん。だとしたら建物の中にいるとかかしら」
たしかにその可能性はある。だが、もしかしたらこの町にはいないのではという思いがよぎる。
翌朝、リラの小屋からクレアと共に出る。
「じゃあ、今日も探しに行ってくるわ」
「クレア、あの町にいくのはやめておいた方がいい。あのジンという男は信用できない」
「何言ってるの。キサラは怪我してるのよ。どんな理由があっても放っておけるわけないじゃない」
「聞いてくれ。俺は昨日ジンと一戦している」
「はぁ?」
クレアがあきれた顔をする。
「あなた、行く先々の町で問題を起こすつもりなの?」
「いや、そうじゃない。とにかくあの町にはいくな」
「わかったわよ。町にはいなかったし。今日は周辺を探してみるわ」
「あの、アレンさん」小屋の中からリラが出てくる。
「一緒に森へ薬草を取りに行ってくれませんか?」
どうしたものか。クレアはすごくにらんでいる。
「いってあげればいいんじゃない。私は勝手に探すわ」
「クレア」
クレアはプイと背を向けると海岸の方へいってしまった。
「じゃあ、いきましょう!」
リラに手を引かれて森へ向かう。
森は町から反対側に位置する。
リラの後を続き森のなかをどんどんと進んでいく。
「なぁ、薬草はどの辺りにはえているんだ?」
「もう少し奥です」
「森にはいってからしばらくあるいているが」
リラは黙ってしまった。
まだしばらく歩くのだろうか。あの町が王国兵がいないとしてもあまりクレアを一人にしておくのは得策ではない。
「ついたわ」
「着いたって、ここは洞窟じゃないか」
「えぇ、洞窟の奥に薬草が生えているの」
洞窟の方へ進んでいくが、リラは洞窟の手前で足を止めている。
「どうしたリラ?」
と、殺気を感じすぐに身構える。
「探したぜ」
リラの目の前に男が現れる。男は忍装束をまとっていた。
「お前は、あのときの」
「あの城への侵入者を排除するのが俺の仕事でな。リラ、おまえの働きには感謝する」
男は小包をリラへ渡すと、手にもった槍を構える。
「ありがとうございます、フウ様」リラは来た道を走ってもどる。
「じゃあ、昨日の続きをやろうぜ。俺はあんたとまたやれるのを楽しみにしてたんだ」
槍を構えるとフウと呼ばれた男が突進してくる。それに応えるようにすぐに四神を抜刀し槍を弾く。
「へえ、やるじゃねぇか」フウはにやりと笑うと槍を構え直し、次の攻撃を繰り出す。
四神で弾きながら距離をとる。あの町にいるクレアが心配だ、早くあいつを倒さないと。
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ローグの町はいつも通りの雰囲気だ。
相変わらずキサラの姿はない。アレンはああ言っていたけど結局周囲には見当たらず再び町に来てしまった。町の様子は昨日とかわりない。しばらく探していたがキサラを見つけることができない。
「せっかくよくしてあげたのに、キサラといい、アレンといい。あーもう!!」
「クレアさんですよね?」
振り向くと忍装束の女がたっていた。
「ええ、あなたは…」
「私はジン様に仕えている者。あなたをお連れするようにとジン様より命を受けております」
「ジンが私に…」
これはチャンスなのかもしれない。アレンは信用できないと言っていたけどジンの力が手にはいるなら王を倒すことも不可能ではなくなる。
女に続きジンの城へ向かっていく。
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長物相手はとても面倒だ。なかなか懐にはいれてくれない。
それにこのフウと言う男。かなりの槍の名手。弾くことで手一杯だ。
「どうした!おまえの実力はそんなものか!?」
どんどん押される。洞窟の奥まで来てしまった。暗い洞窟内での戦闘は長物がよく見えないし、ここでの戦闘は避けた方がいいか。いっそ洞窟の奥まで引いた方がいいかもしれない。フウに背を向けて一気に洞窟を抜ける。出口は思ったよりも近かったようだ。抜けると一面花畑が広がっていた。周囲は崖に囲まれており外からはこの花畑を見つけることはできないだろう。その光景はとても神秘的で思わず見とれてしまうほどだった。
「おらぁ!」
フウの一撃で花畑の中へ弾き飛ばされる。
「くそっ」
勢いよく起き上がるとすこしめまいがした。
この花、まさか。
「気づいたのか?」
フウは花を一輪摘むと臭いをかぐ。
「この花は麻薬の原料となるものだ」
あまり、この花の臭いを嗅ぐのはまずい。左手で口元を覆いながらフウの槍撃を交わしていく。
「片手で弾ききれるほど、俺の槍は甘くないぜ!」
フウの言うとおり、片手で弾ききれる槍ではない。まずは、相手の槍を封じる。
息を止め、構える。次の一撃に集中する。
フウの槍を見切り相手の技の威力を倍加させて跳ね返す技・青龍を放つ!
しかし、刀の傷が浅い。やつに致命傷を与えることはできなかったようだが、左手を封じることはできたようだ。
フウは左肩を押さえると距離をとる。
「これでお互いに左手を使えなくなったな」
「この程度の傷で、おれが怯むと思うなよ」
フウは懐から小袋を取り出すと中の粉を一気に飲み込む。すると先程まで苦痛で動かなかった左腕を自在に動かしていく。
「なんだと」
「この薬は傷を癒す薬じゃない。だが、痛みを感じなくすることはできる」
フウが再び攻撃を再開する。しかし、先程の傷口からはどんどん血が流れていく。
痛みを感じさせないようだが、やはり動きに隙ができる。
すかさず、斬り込むがフウが小袋をとりだすと粉を撒き散らす。
麻薬!?
口元をマフラーで覆いながら急いで距離をとる。
が、目の前が歪む。少し吸ってしまったようだ。
「どうした?麻薬ははじmえtぇなnoか?」
頭がボーッとしてきた。フウの言葉も湾曲して聞こえる。
四神を構え相手を見据えるが、焦点が合わない。なんとかフウの攻撃を防ぐ。
「ほぉ、その状態でも我が槍を弾くか。おもしろい」
気配を感じとりフウの場所と攻撃を感知して対応しているが、気配を感じとるのも限界が近い。
フウを見失う前に決めるしかない。姿勢を低く構え、やつの間合いに入り一気に決める。
瞬速の剣技・白虎を放ちフウの懐に入ると、斬撃をぶつける。フウはそれに怯むと間合いをとろうと飛び退く。
「逃がすか!」
四神を勢いよく回転させるとフウを追い撃ちする。
刀の回転を利用し、6つの斬撃を同時に放つ空中の剣技・朱雀 雷!
六撃すべてがフウに命中し弾き飛ばす。
ドンという音と共にフウが地面に叩きつけられる。
心臓の鼓動が早い。麻薬のせいかめまいがひどい。頭がガンガンする。
と、視界の端で衛兵が二人名洞窟をぬけて花畑に現れるのがみえる。
「くそ、あの娘どこへいった。…あれは、フウ様!」
衛兵は抜剣し、切りかかってくる。青龍を放ち斬撃を斬り返して衛兵を倒す。
「はぁはぁ、まったく。次から次へと」
なかなかに疲れた。思わず膝を着く。
もう視界がぼやけているがキサラが洞窟をぬけて入ってくるのが見えた。
「そうか…あいつが取りに来るものってのは」
ゆっくりと近づいてくるのがわかる。
「そう、この麻薬」
キサラは兵士たちの懐から小袋を取り出すと、小太刀に手を掛ける。
「どこにいってたんだ!」
咄嗟のことでキサラは不意をつかれたようだ。
「おまえのこと、クレアはすごい心配して…ずっと町のなかを探し、回って…」
「…ごめん、なさい」
キサラの言葉を聞くのが先か、意識が薄れていった。
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意識を失ったのか。
そういえば昔も意識を失ったことがあったな。あれは、王都の訓練所でのときか。
おれが、目上の騎士達を稽古で負かしていたとき、王国皇子ジュードが訓練所に来て試合をしたんだ。
勢いよく斬りかかったが、あいつの重撃をまともに頭に受けて気を失った。
あのときはルークが心配してくれたっけ。
なぜか昔のことを思い出した。良かった思いでなんてひとつもなかったはずなのに。
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しばらくするとアレンが意識を取り戻した。
「…ここは」
「洞窟。花に囲まれているとぜんぜんよくなりそうになかったから運んだ」
「そうか、すまない」
アレンが息を大きく吸うと立ち上がろうとする。
「まだ、立ち上がっちゃ」
まだ、全身に力が入らない様で。膝を崩すように倒れそうなところを支える。
「無理をしてはダメ」
「俺は、いかなくちゃ。クレアが心配だ」
「でも、その体じゃ」
「行かなくちゃいけないんだ。…もう二度と大切な人を、失いたくない」
アレンの言葉にドキッとした。そんな言葉を言ってもらえるクレアがすごく羨ましかった。私はいままでそんなことを言われたことなんてなかったから。逆の立場だったら。きっと、この男も私が死にそうなときにはそんなことを思わないだろう。
「クレアはいいね。アレンが守ってくれるんだもの」
ふと、言葉が漏れていた。自分で意識したときにはなぜそんなことを言ったのかわからなかった。
「私は今まで誰かに大切に思われたりした事なんてないから。自分の事は自分で何とかしてきた。これからも誰にも頼らずに生きていく。例え一人きりでも、私は大丈夫。うまくやってみせる。私は…」
「俺が…」
アレンが不意に言葉を遮る。
「…俺が、守ってやる」
アレンの声は力弱く、聞こえるかわからないほど小さい声であった。それでも、とてもうれしかった。
「…約束、だよ」
自然と溢れ出しそうになる涙を我慢して、力一杯アレンを支え歩き出す。
アレンを支えながらローグ村の方へ。
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森を抜けたところで体調は大分良くなった。
キサラに問いかける。
「お前が村に入れない理由はそれか?」
麻薬のはいった小袋を指差して尋ねると、キサラは頷いた。
「そんなものいったいどうするつもりだ?」
「ごめんなさい。それ以上は聞かないで」
話したくないらしい。自分で使うわけではないらしいので、詮索はやめておく。
とにかく、この町から離れよう。王国兵よりも厄介かもしれない。
「俺はこれからクレアを連れてくる。そこを動くなよ」
キサラが頷くのを確認してから村へ向かう。




