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キスをする5秒前~kiss.kiss.kiss~  作者: 夏野 みかん
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葉月・・・理解できなかった。

「…おい。」


私の目の前に、差し出された紙袋。


「やる。」


「いらない。」


「やるって言ったらやる。」


「いらないって言ったら、いらない。」


「やる!」


「いらないって言ってるでしょう!い・ら・な・い。」


「ど、どうしろって言うんだよ。お、お、男の俺に…どうしろって言うんだよ。」


「…う~ん。」


「マジ、考えんなよ!」

睨みあう、弟久住さんと私に、盛大な溜め息を吐いて、丸山君が

「あの葉月さん、そしてお客さん。レジの前で…痴話げんかは営業妨害なんですが。」


「「痴話げんか?!」」


「「違う!」」


「ハァ~そこに食いつくんですか?!…そこはいいんです!とにかく迷惑!」


「だって!弟久住さんが…」


「なんで俺なんだよ。」


「いい加減にしてください!…いいんですか、葉月さん?」


「何が…丸山君…?」


「今月…二度続けて、葉月さん発注を間違えましたよね。その時、店長になって言いましたっけ?」


「あぁ!…ま、また発注ミスを起こしたら…」


丸山君は顔の前で、大きなバツを作り

「ブッー!正解はこう言ったんです!【今度、お店に迷惑をかけましたら、首にしてください。ですからどうか店長!!目を瞑っていただけませんか?】と言ってました。」


「で、で、です。」


「えっと…今は何時だ?もう…店長が入る時間じゃないかなぁ…。」


「…丸山君。」


「わかりましたよね。」


なかなか返事をしない私に、丸山君が右手で首を切る真似をした。

私は唾を飲むこむと、情けない声で


「は、はい。」と返事をすると、丸山君は頷きながら弟久住さんに目をやり


「お客様も葉月さんを首にしたくなければ…あと1時間で終わるので、どうぞ、お・み・せ・の・外で、お待ち頂けると助かります。」


「ぁ、はい。すみません…。」


「では、よろしくお願いします。」


「「……はい。」」



*****


いるのかなぁ…

裏口を伺いながら、顔を出すとぶーたれた声が聞こえてきた。


「…おつかれさん…」


「いたんですか…」


「あぁ…」


一時間後、コンビニの裏口に弟久住さんは待っていた。



いた。


どうして…いるの?

あっ?!そうだよ。そもそもなんで私がここにいるって知ってるの?

そう思ったら、またムカムカ、イライラしてきた。


「どうしてですか?!なんで私がここにいるって知っているんですか?!」


「知らべた…。」


「はぁ?!」


「ちょっと、話をしたかったんだよ。」


「…話しましたよね…今!じゃぁ、さようなら。」


「ちょっと、待て!」


えっ!腕を捕まれたよ。し、しつこい!なんなの。もうこうなったら、


私は大声を出すべく、大きく息を吸ったら、何をするか感づいた弟久住さんに、大きな手で口を塞がれた。


「待て!とにかく待て!話がしたいんだ。」


「わぁうあがおふぉえれぃう!」


「騒ぐなよ。頼むよ。手を離すから…大声を上げるなよ。」


弟久住さんの焦って青くなった顔と…捨てることなく、律儀に反対の手に持っている例の紙袋に…免じて、ゆっくりと頷いてやると、ホッとした顔で

「今日は…いや昨日から、は…づ…、高宮には悪いことをしたと、おも…おも、思ってる。だから…」


謝っているのか、これは?ハァ~謝りなれていない人の謝り方は…まどろっこしい、

「もう、いいですよ。悪いと思っているんなら、もういいです。」


「そ、そうか?!お前が良いなら、もう謝らないからなぁ。」


「いや、なに強気なその言い方!」


「…だって…もういいんだろう。だったら…」


「ハァ~もう帰ります。じゃぁ、さよなら。」


「あっ!ま、待て!」


「なんなんですか?!もういいって言ったじゃないですか。」


「もう少し、話せないか?お前の…親父について」


「お父さんの事?」


「高宮、お前は父親の事は知らないって言っていたよな。」


「はい。」


「俺さ、お前の親父を知ってる。」


「…知っている?どうしてですか?」


「俺、会ったことがあるんだよ。お前の両親とそして…お前に。」


「会った…?」


「あぁ、当時6歳だった俺は、婆様に連れられてどこかのホテルに行ったんだ。あの頃から婆様は俺をいろんなところに連れて行っては、いろんな人に会わせていたんだけど、毎回爺さんや婆さんばっかで、退屈で堪らなかったんだ。だけど…あの日、小さな女の子を連れた若い男女だったことや…男の方が金髪で青い瞳だったから、今でも覚えている。」


「でも…それって、それって私だとは言えないわ。」


弟久住さんは、静かに頭を横に振り

「俺、思い出したんだよ。久住では、俺より下の子供なんていなかったから、小さな女の子が珍しくて、その子にちょっかいを出していたら泣き出してな。だけど、その子の母親がにっこり笑って【ごめんね。葉月は泣き虫なのよ。】と言ってたんだよ。いや、それだけじゃないんだ。金髪の男が苦笑気味に【やっぱり、Wendyは言いづらい?でも、ウッドフォード国に行ったら、兄には葉月という発音は難しいから、Wendyで頼むよ。弥生。】と…言ったことをな。」



『ウェンディ』


覚えているのはその声と鮮やかな色。


それは金色と…青い色。


ただ…息が苦しくて、頭を横に振った。


でも、私以上に弟久住さんは、苦しそうに声を絞り出し

「昨日に高宮に会った時、誰かに似ていると思ったのは…その時会った女の子に似ていると言っているわけじゃないんだ。そのホテルに行く前に、スゲェーご機嫌な婆様から見せられた古い一枚の写真に…今のお前がそっくりなんだよ。」


「写真?」


「あぁ、そうだ。」


そう言って、弟久住さんは唇を舐め、


「その写真の女性は…久住 桂子。後にウッドフォード国の王妃になったと聞いた。」



何を言われたのか…さっぱり理解できなかった。


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