葉月・・・プンプン。
「今日は…よりいっそう、疲れた様子ですね。覇気がまったくないですよ。葉月さん。」
コンビニのレジで、ぼんやりしていた私の背中に、丸山君が心配そうに声をかけてくれた。
丸山君の言葉に、微かに笑みを浮かべたけど、丸山君は眉間に皺を寄せ
「昨日、なにかあったんですか?」
そう、昨日は久住さんの家に招かれたんだんけど…散々だった。あれから、久住さんは弟さんと、そして由梨奈さんとどうなったんだろう。話は少しは進んだのかなぁ。ハァ~結局私は…ハァァ~久住さんのなんの役には立たなかったなぁ。寧ろゴタゴタを引き起こしてきただけで、とうとう久住さんとは話せないまま、帰って来ちゃった。それが一番堪えているよ。どうしてこうなっちゃったんだろう。
私って…ダメだよなぁ…あぁ…いや違う!違うもん!
あの人が…弟久住さんがムカムカ、イライラする事を言ったからだもん!
握り締めた私の手に、トングが渡された。
「葉月さん…またぼんやりして…まぁいろいろあると思いますが、レジ前でそんな顔で立たないでください。お客さんが引いてますよ。はいはい、肉まんを温めて…」
「なに?!そんな顔って…それって…不細工って言ってる?私…やっぱり…」
「言ってませんよ!なんでそうなるんですか!不細工だなんて言ったら、松下さんに半殺しにされます。」
「いやいや…丸山君、それってただ理香さんを恐れているだけで。ここは不細工じゃないですよって言う場面だよ。これじゃぁ、二人で和やかな空気を作れないよ。ますます…どんよりした気分になるじゃん。」
「ほんと、何言ってんですか?!今まで、凹んでいたくせに、突然偉そうに…。いいですか、われわれはバイトとはいえ、サービス業ですよ。そんな暗い顔でレジに立たれていたら、お客さんがお店に入って来れないって言っているんです。ぼ・く・は!」
「…う…ん。」
「ほら…あの人。」
「あの人?」
「さっきから、お店の前を行ったり、来たりして、葉月さんを見て、どうしようかとまるで迷っているみたいですよ。」
「えっ?どこにいるその人?」
「あの肉まんの、のぼり旗のところにいる人です、ほら今、下を向いたあの人ですよ。」
「わ、わかんない。」
「もう、わかんなくていいですから!とにかくあの人は、さっきからお店を覗いては溜め息をつき、そっとあののぼり旗に、隠れるように移動するを繰り返しています。まぁ…ちょっと気味は悪いですが、お店に入りたいという雰囲気がありましたから…あの人はお客さんですよ。いいですか、葉月さん。ここは少し笑ってください。」
「こ、こんな感じ?」
「う~ん、口元がブルブルと震えてて…笑っていると言うより、【寒い】って感じですね。ほら…もっと、こんな風に口角を上げて…」
「いっ…!!」
「あっ!!すみません、思わすほっぺたをひっぱっちゃいました!」
「ひ、ひどいよ、丸山君。理香さんに…言いつけてやる。」
「ゲェ!ま、待ってください!」
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「…仲がいいんだなぁ。葉月の…彼氏か?」
「へっ?」
「はぁ?」
「なんだよ。それは…!ここは、いっ…らっしゃいませ…だろう。」
「あっ!肉まんの…のぼり旗の…」
「…いやマジ?なんで、ここにいるの?」
「おい!なんて言い方だよ。葉月!俺は客だぞ。」
そう言って、差し出した品に…丸山君は黙って見つめながら
「葉月さんの知り合いって…なんか…残念な人、多いですよね。」
と言って、その手元から商品を取ると、
ピッ!
「332円です。」と言いながら、丁寧に紙の袋に入れ、
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弟久住さんに…生理用品を差し出した。
ようやく自分が何を買ったのか、わかったようで、真っ赤な顔で…「○×☆○&%」と意味不明な言葉を発し、固まった弟久住さんを丸山君はチラリと見て、大きな溜め息を付くと私に目をやり
「また…葉月さんが変わりに買います?」
「いいえ!」
だって、弟久住さんに私はプンプンなんだから!




