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キスをする5秒前~kiss.kiss.kiss~  作者: 夏野 みかん
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樹・・・告白される?

「おいおい葉月…、そんな恨めしい顔で見るなよ。」


「だって…」


「熱海で母親と過ごすより、美味しい料理と酒に舌鼓を打ちたいんだよ。それに…」


「なんですか!それにって…」


「葉月が…あたふたするのを見れるし…からかえるしなぁ…イヒヒ…」


「理香さん~ひどい。」


葉月をバカにできるのは、あたしの唯一の趣味なんだよ。だ・か・ら、他の奴らがお前をからかったり、笑ったりするのは我慢ならねぇの!あたしだけが葉月をからかって笑えるんだ。」


「えっ?…理香さん…私…嬉しい。」


ズズッズッ~


「鼻を啜るな…葉月。…おまえ、ぜったいMだ…なんで嬉しいってなるんだよ。」


「わかってますよ…理香さんは私を心配してるんですよね。」


「…あたしの言っていることが、おまえの頭の中でどう変換されてんだ?」


「えへへ…」




俺は…理香さんが大きく溜め息をつき、うな垂れながら…口元が綻んで行くのを見た。ほんとに…可愛くてしかたなんだ、葉月ちゃんが…


だからだ…


理香さんは企業法務専門なら…おそらく俺の立場を知っている。

内輪でやるパーティだが、俺が女性を連れてゆくことが、まわりにどう見られるか…

彼女を守るために…行くんだ。


俺と理香さんの眼があった。理香さんはフッと笑うと


「はい、はい…今日はそういうことにしておいてやるよ。葉月…そう言えば、所長が葉月に〇〇ランドのお土産を買ってきているから、部屋に寄れって言ってたぞ。しかし…葉月、よくあのゴリラのような猛獣所長を手懐けたもんだなぁ。」


「猛獣?…所長さんがですか?すっごく優しい方じゃないですか。」


「21歳のおまえに言うのもなんだが…お菓子をやるって言われたら、人について行きそうだなぁ。気をつけろよ。まぁ所長だから良いけど…おいおい、もう12時過ぎてるじゃんか、13時に所長のところに客が来る予定だから、その前に貰って来い。」


「もう、理香さんたら…じゃぁ、行きましょうか、久住さん。」


「久住…ちょっと待て。」


「は、はい。」


葉月ちゃんと一緒に出ようとした俺に、理香さんそう言って呼び止め。


キョトンとして、俺や理香さんを見ている葉月ちゃんには

「久住に金曜日のことで、聞いておきたいことがあるから、その間におまえは、所長のところに行って来い。」


「あっ!高価なお酒を出せとか言っちゃダメですからね。」


「…あたしにそんな口を利くのか…葉月…」


「い、いってきます!!」




バタンとドアが閉まり、振り向いた理香さんの顔には表情がなかった。



「…すみません。巻き込んでしまって…」


「大方、葉月から言い出したんだろう。想像はつく。」


「俺が…久住家の…「あぁ…知っている。もっとも公園で倒れていた時は、ただの兄ちゃんだと思っていたけどね。だが、名前を聞いてピンときたよ。」」


俺の言葉に被るように言うと…


「だが、まさか厄介ごとを持ってくるとまでは読めなかった。」


そう言って…理香さんはタバコを掲げ…「良いか?」と聞いてきた、俺が頷くと…タバコに火をつけ

「葉月は…いろいろと問題を抱えている。」


「えっ?」


「お前同様に…いろいろとなぁ…今回の件で…葉月は、お前と付き合っていると思われるだろうなぁ。だが、それは出来れば避けたい…」


「俺も…それが心配です。どうやったら、ただの友人として、彼女を紹介できるかと…考えていました。」


「あの…ばあさんにどんなカードを見せたら、安心するか…だ。」


「そう簡単なカードでは、納得しないですよ。」


「だろうなぁ…。おまえが出すカードはすべて疑うだろうし…。なんたって10年前…17歳のガキのおまえが、ばあさんの大事なカードの桐谷由梨奈にちょっかいをだし…計画をおじゃんにするところだったんだ。そんなガキが、10年経って…男になってアメリカから帰ってきた。…ばあさん、恐くてしょうがないだろうよ。」


「…会長は俺なんか、恐れていませんよ。」


「いや…恐れているから、平日の昼間から、こんなところで油を売るような羽目になってんじゃないのか?…聞いているよ。お前を神輿に上げようとする…重鎮らがいるらしいなぁ。だから、あの…ばあさんは葉月を見て思ったんだろうよ。公におまえには女がいる、それもコンビニにバイトをしている、ごく平凡な女が…と公表すれば、お前を神輿に上げようとする輩の中には、動揺する奴もでるだろうと…。」


タバコを灰皿に押し付け、大きく息を吐き

「だが…葉月はダメだ。」


「理香さん…?」


理香さんの顔は青褪めて

「あいつがお前の相手だと思われたら…余計…面倒な事になる。」


「余計…面倒って…どういう意味なんですか?」


「悪いが…それはこっちの話だ。聞くな。それより…あのばあさんから直接招待され、それを葉月が受けた以上、逃げるわけにはいかない。葉月がお前の彼女という形で紹介されないように…あたしと大吾が出張る。出張ることで…それで…」


と言って…理香さんは…俺を見ると…


「……樹。おまえは、あたしと付き合っていることにしろ。」


「えっ?」


コンコンとノックが部屋に響いたが…理香さんは気が付かないのか…俺を見つめ、小さな声で「それが…一番良い。」と呟くように言ったと同時にドアが開き…


キャラクターの付いたお菓子を抱え込んだ、葉月ちゃんの前で理香さんは…


「樹。あたしの彼氏になれ。」と言った。



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