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「魔法を使ってあの頃の青春をやり直したい」  作者: KAR
火山はひやまと読む
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火山はひやまと読む 第一話 嘘

 「一目惚れです!おれと付き合ってください!」


 突然だった。大河内 未来 (おおこうち みらい)が小野瀬 きらり(おのせ きらり)と学生食堂でお昼を食べていたときのことである。

 未来の目の前にいる男は見覚えがある。同じ防衛学科の一人だ。名前は火山 團歩 (ひやま とんぼ)

 それにしてもこの人の多い中、大声で突然告白するとは一体どういう神経をしているのか。未来はこの男に対し、苛立ちのみが沸き上がる。そして、未来はこう言った。


 「私の前から2秒で消えて。さもないと切り刻む。」


 「こ、怖いよ未来ちゃん。好きって言っている人に対して失礼だよ!」


 「こんな常識のない人に気遣いなんて必要ないわ。さっさと消えなさい。」


 「ちょっ・・・そんなこと言わないでくれよ!いきなり言ったのは悪かったから、話だけでも・・・。」


 「いきなりでなくとも同じこと。私はあなたなんかに興味はない。」


 定食を食べ終えた未来は、コップの水を飲み干し、お盆の上にコップをどんと音を立てて置いた。


 「くぅ~しびれる!やっぱり想像通りの人だ!そのツンケンした性格。その黒々と輝く髪。人を威圧するような眼。まさにおれが理想とする人だ!」


 未来は火山の肩を強く押した。火山はその場に倒れ込む。そして未来は火山の股の間に足を踏み入れ、胸ぐらをつかんで、顔を近づける。


 「私に話しかけないで。あなたみたいな浮ついた人は嫌いなの。」


 未来は本気で火山を威圧するが、火山は逆に喜んでいる。


 「はは・・・・もう最高だわ。」


 未来はあまりの不快感から、思わず火山の顔に平手打ちをかました。


 「未来ちゃん!」


 「行くわよ。授業が始まるわ。」


 未来は食べ終えた食器を持って、さっそうと立ち去る。

 きらりは頬をさする火山のもとに駆け寄った。

 

 「大丈夫?ごめんね。未来ちゃん、男の子に対してすごく攻撃的だがら。」


 「いやいや・・・むしろありがたいくらいだったぜ。何としてもおれの彼女にしてみせる!」


 「すごいね!すごくガッツがあるね!」


 「難易度高い方が燃えるってもんだろ!いや、萌える!」


 「ファイヤーー!だね!きらりが未来ちゃんの連絡先教えてあげようか?」


 きらりはここまでかというほどにデコレーションにデコレーションを重ねたスマホを取り出した。しかし、その申し出を火山は断った。


 「何言ってんだ、それは直接許可をもらわなきゃ意味がないってもんだ!おれは自分で努力して、自分の力のみで大河内さんと付き合うんだ!」


 「おお!かっこいいね!がんばれ!!」


 ~~~・・・・~~~


 それから毎日、毎時間というペースで火山は未来に対し、猛アタックを続けた。そのアタックはいつも未来に軽くあしらわれ、時には蹴りを入れられたり、ビンタをされたりと火山は散々な目に合うが、それでも火山は諦めることはなかった。というか、むしろ激化していった。未来の行動、発言はどれもこれも火山にとっては嬉しいものであり、未来がどれほど火山を遠ざけようとしても、逆効果なのであった。さすがの未来も別の手法で対処せざるを得なくなった。

 最初の告白から1週間経ったときのことである。授業後にそそくさと立ち去ろうとする未来の前にまたもや火山が立ちふさがった。


 「お願いだって!連作先教えてくれよ!この前のアドレスだって嘘だったし、電話かけてもつながらないしさ。おれ、教えてくれるまで絶対あきらめないぞ!」


 「いつもいつも、鬱陶しいわね。」


 「まぁまぁ、言っても別に大河内さん、彼氏がいるわけでもないんだしさ。いいじゃんちょっとくらい。男と関わってみようよ。」


 もう、普通にあしらっても意味がないと思っている未来。そこで、未来は一つ嘘をついてみた。


 「男?関わっているわよ。私彼氏いるもの。」


 「え?そんな話聞いてないぞ!」


 「え?未来ちゃん彼氏いたの!?」


 予想はしていたが、きらりも騙された。まぁ、きらりは後から誤解を解いておけばよいので、問題ない。今は火山が問題だ。


 「つい最近できたの。だから、あなたと関わることなんてできないのよ。彼氏、かなり嫉妬深いし。」


 火山がたじろいでいる。これはかなり効いているとみた。もうひと押しすれば諦めてくれるかもしれない。


 「な・・・名前は?その彼氏の名前は何て言うんだ?」


 火山は少し疑う。あれほど男を近づけさせない女が彼氏などそう簡単に作るものかと。

 そして、未来もたじろぐ。そこまでは考えていなかった。しかし、すぐ答えなければ信憑性が失われる。未来は真っ先に思いついた男の名前を口走った。だが、その名は最も口にしたくない名前だった。あと、数秒考えれば、嘘であってもそうとは言いたくない名前だった。


 「咲花 望よ。」

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