火山はひやまと読む 第二話 プライド
やってしまった・・・・。未来は本気で後悔した。なぜあの男の名が真っ先に出てきたのか。だが、言ってしまったものはしょうがない。彼氏の名前を訂正する彼女なんているはずもない。ここは嘘を突き通すしかないと思った。
「まじかよ・・・未来ちゃんに男ができていたなんて・・・。」
さりげなく、名前で呼ぶ火山。
「そうだよ未来ちゃん!きらりそんな話聞いてなむぐぐぐぐ・・・。」
未来は物体浮遊魔法の応用できらりの唇を塞いだ。とりあえず、この子が余計なことをしゃべると面倒なことになる。
それにしても、火山がこれで身を引いてくれるのならとりあえず結果オーライだ。
「そ、その男はどこの学科なんだよ。」
「回復学科よ。あなたと違ってとても誠実な人よ。」
「じゃ、じゃあその男に会わせてくれよ!それでおれよりも未来ちゃんにふさわしい男だと判断したらおれはきっぱり未来ちゃんのことは諦めるから!」
未来は考える。どうしたものか。会わせるとなると前もって咲花と話しておく必要があるからだ。それはしたくない。未来にとっては宿敵である咲花に頼み事なんて言語道断である。だとすれば、どうするか。
「はぁ?何であなたみたいな下品な男を私の彼に会わせなきゃいけないわけ?やめてくれないかしら。」
「頼む!そうじゃなきゃおれ、未来ちゃんのこと諦められない!」
どうにも火山は引き下がりそうにない。この男に今後も付きまとわれるのも嫌だし、かといって咲花に協力してもらうのも嫌だ。とりあえず、どちらかに折れなければいけない状況である。
「分かったわ。とりあえず考える時間をくれないかしら?だから今日のところは消えてくれる。」
「ありがとう。じゃあまた明日返事効くから!」
ひとまず火山は去っていった。
「むーーーー!!!むむむうむううむむーーー!!!」
口を塞がれたままのきらりがいい加減魔法を解けと騒ぐ。
「ごめんなさい。今解くから。」
きらりの口が自由になった。
「もう!未来ちゃん!何で口塞いじゃうの!きらりだっていろいろ聞きたいのに!」
「だって、私彼氏いないもの。あの魔人と付き合うわけないじゃない。それなのに小野瀬さん本気で信じちゃって。余計な事言ってあの男が嘘だと感づいたらめんどくさいでしょ。」
「嘘だったの!!?全然わからなかった!!」
想像していた通り、きらりはかなり騙されやすい性格のようだ。少し未来はきらりの将来が不安である。いつか詐欺や悪い男に騙されてしまいそうだ。そのときは自分が守らなくてはと思った。
「でもさ、どうするの?咲花くんに会わせるの?」
「あの魔人とまともに話したくはないわ。でも、あの男に付きまとわれるのも嫌だからどうしたものかしら。」
「いいじゃん!この機会に咲花君と仲良くなったらいいじゃん!きらりあの人すごくいいと思うよ!」
「どうしてそう言えるの?魔人なんて何考えているのか分かったもんじゃないというのに。」
「んーーーー。何となく!」
一体その自信はどこから来るのやら。だが、それは咲花のウーママ・ナトゥラ・オクパットとしての人を惹きつける特性が原因であり、まんまときらりはその虜となってしまっている。
未来は考える。たった一度自分のプライドを捨て、咲花に頼んで彼氏役を演じてくれさえすれば、火山は近づいてくることはないであろう。だが、自分のプライドのために火山を咲花に会わせないとしたら、今後も火山はアプローチしてくるはずだ。冷静に考えて、合理的な判断を下すとしたら、当然前者を選択すべきだ。
「本当に心苦しい選択だけれども、これも全て自分の蒔いた種だもの。あの魔人に頼むしかないようね。」
「にひひ、なんだか面白くなってきたね。」
「全然、面白くなんてないわよ。」
~~~・・・・~~~
二人は五限の授業が終わると同時に、回復学科の授業が行われている教室まで走った。
こんなことになるくらいなら、あの回復学科の楓花とかいう女の子の連絡先くらい聞いておけばよかったわね。まぁ、今そんなことを思ったところでどうしようもないのだけれど。
教室についたとき、回復学科の生徒たちはぞろぞろと教室から出ていき始めるときであった。明日までに咲花と会うときは今このときしかない。未来ときらりは必死で咲花を探す。
「こんなに人がいたら全然分かんないよ~。」
きらりが大きく息を吸い込んだ。
「ま~~~じ~~~~ん~~~~~~!!!!!ど~~~~~こ~~~~~!!!!!」
突然大声を挙げるきらりを回復学科の生徒たちは変な目で見る。
きらりが突然魔人と叫んだところで、本当に魔人がいるなんて思う生徒はいない。もしいたら、大事件となっているはずであり、呑気に授業なんて行われていないはずだからである。
そこにきらりの前に咲花が現れた。
「僕を魔人と呼ぶのはやめてくれないか。斉藤さん。」
「きらりは斉藤さんじゃないもん!きらりはきらりだもん!とにかく見つかってよかった。未来ちゃんが探してたの。」
「え?未来ちゃんって・・・・もしかしてあの子・・・?」
未来は汚物を見るような眼で咲花を見つめていた。どこからどう見ても頼みごとをするような雰囲気は感じられない。未来からは出ているオーラは殺気そのものだ。




