30 お守り
「な、何故だ」
バルゾフの大剣は、レオンの胸を直撃したが剣先が何かにぶつかり刺さらない。
「これで終わりだな」
レオンは、刀を振るった。そして、静かに刀を背中の鞘に納めた。
直後、バルゾフの両腕、両足が切断。辺りが血に染まる。頭上から降る雨をボーっと見るバルゾフ。みるみる顔が青ざめていく。
「……さ、最後の剣筋。全然、見えなかったぜ」
「……」
「なぁ、お、お前の……名前は、何って言うんだ」
「レオン・カーティス」
「そうか……」
バルゾフの呼吸が途切れた。レオンは、バルゾフの両目を静かに閉じてやった。
「レオン様!」
戦闘が終わりレオンに駆け寄るシルヴィ。
すると、その場で力なく倒れたレオン。慌ててレオンを仰向けにしてシルヴィは、自分の太ももの上にレオンの頭をのせる。
「レオン様!レオン様!」
「……やぁ。シルヴィ。俺がいない間大丈夫だったか?」
今にも眠ってしまいそうな表情で小さい声でそう言った。
「だ、大丈夫じゃなかったです!フィオナがレオン様の左腕を洞窟から持ってきた時は……レオン様は、死んでないって自分の中で何度も言い聞かせてました……」
レオンの身体を手で触り自分の目の前にいるのは、本物のレオンだったと実感しこれは、夢じゃないと確信し安心して泣き出してしまったシルヴィ。
「泣くなシルヴィ」
「む、無理です」
「ワガママだな」
「そ、そうだ。レオン様。さっき胸に剣が刺さってましたよね?」
レオンは、胸ポケットに手を突っ込み取り出した。
「出発の日にユリエからこのダイヤモンドの原石をお守りにって貰ったんだよ」
「じゃあ、これがぶつかって平気だったのですね」
「そう……ウッ!」
「レオン様!?」
「ハハッ。すまん。少し疲れた。あとは任せていいか?」
雨と混じった涙をゴシゴシ拭く。
「はい!任せてください」
「……ありがとう」
レオンは、ゆっくりと両目を閉じて眠りについた。
「シルヴィ!マスター!」
フィオナ、アレシアと合流したイリスがやってきた。シルヴィは、口元に指を立ててシーッとする。
「ありゃ、マスター寝ちゃってる」
「雷鳴のリーダーを倒したんだ疲れちゃったんだろう。だがここで寝かせ続けるのは、駄目だろう」
「でしたらお城に行きましょう」
「いいんですか?」
「構いません。ここの処理は、私の兵士たちお任せください」
「だったら急ごう。シルヴィ私がレオン殿を背負うから」
「ちょっと待ってもう少しこうさせて」
「いや、だが」
「いいじゃんいいじゃん。マスターの寝顔イリスも見たいし、最近見てなかったから」
フィオナとアレシアは、お互い顔見てやれやれっと笑った。