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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第25話 はじまりの違和感

第25話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、これまで積み重なってきた違和感に、

一歩踏み込む回になります。


はっきりとした答えではないかもしれませんが、

確実に何かが繋がり始めています。


その瞬間を感じていただけたら嬉しいです。

事務所の一室。


 静まり返っていた。


 さっきまでの会話の続き。


 誰も軽く口を開けない空気があった。


「……さっきの、どう思う?」


 佐倉が口を開く。


 だが、その声はいつもより低い。


「……偶然じゃねぇ」


 恒一は迷わず答える。


 レイナも小さく頷いた。


「……私もそう思う」


 短い言葉。


 だが、確信に近い。


 佐倉が腕を組む。


「整理しよう」


「当たるのは確定」


「で、そのあと何かが起きる」


「しかも——」


 視線がレイナへ向く。


「レイナが近くにいるときは起きない」


「離れると起きる」


 沈黙。


 誰も否定しない。


 できない。


 全部、体験している。


「……意味わかんないんだけど」


 佐倉が苦笑する。


 だが、目は真剣だった。


「そんな都合のいい話ある?」


「……ねぇよ」


 恒一が言う。


「でも、起きてる」


 それが現実だった。


 理屈は後回し。


 事実だけが積み重なっている。


「……なあ」


 恒一が口を開く。


「もうひとつある」


 二人の視線が向く。


「……最初だ」


「最初?」


 佐倉が聞く。


「……6億」


 その一言で、空気が止まる。


「……は?」


 佐倉の思考が止まる。


「ちょっと待って」


「何の話?」


 レイナも戸惑っている。


「6億って……」


「俺、当ててる」


 静かに言う。


「一等」


 数秒。


 誰も言葉を発せない。


「……え?」


「いや、ちょっと待って」


 佐倉が思わず笑う。


「冗談でしょ?」


「冗談でそんなこと言うか」


「いやでも……」


 理解が追いつかない。


 レイナがゆっくり聞く。


「……ほんと?」


「ああ」


 短い答え。


 それだけで十分だった。


 空気が一気に変わる。


「……じゃあ、そのお金は?」


 佐倉が聞く。


 当然の疑問。


「……ほとんど使った」


「は?」


 さらに止まる。


「使ったって……何に?」


 一瞬だけ、間。


 恒一は視線を落とす。


「……母親だ」


 静かに言う。


「病気だった」


 二人が黙る。


「かなりヤバくてな」


「金かけりゃ助かる可能性あるって言われて」


「……全部突っ込んだ」


 その言葉は、重かった。


 レイナの表情が変わる。


 驚きから、別のものへ。


「……助かったの?」


 小さな声。


「……ああ」


「なんとか」


 短い言葉。


 だが、すべてが詰まっていた。


 佐倉がぽつりとつぶやく。


「……6億、全部?」


「……ほぼな」


「……マジか」


 現実感が追いつかない。


 だが。


 理解は始まっている。


 そして——


 恒一がゆっくり口を開く。


「……そのあとだ」


 二人の視線が向く。


「レイナ」


 名前を呼ぶ。


 少しだけ間を置く。


「お前、あのあとどうなった」


 レイナが一瞬だけ戸惑う。


「……え?」


 恒一は続ける。


「仕事、減っただろ」


「事務所も崩れて」


「活動、止まって」


 言葉を重ねる。


 逃げ道を塞ぐように。


「今みたいな状態になった」


 静かな声。


 だが、重い。


 レイナの表情が止まる。


 思い出している。


 あの頃を。


 佐倉も黙る。


「……タイミングが合いすぎてる」


 恒一が言う。


 否定の余地がない。


 沈黙。


 重い。


 空気が張り詰める。


「……じゃあ」


 レイナがゆっくり顔を上げる。


「私のせいってこと?」


 その一言。


 場が凍る。


「違う」


 即答だった。


 迷いはない。


 強い。


 レイナが少しだけ目を見開く。


「お前のせいじゃねぇ」


「でも——」


「違う」


 もう一度。


 はっきりと。


「……俺の問題だ」


 静かに続ける。


「使い方の問題だ」


「俺が選んでる」


「その結果が、どっかに出てるだけだ」


 それが、今の結論。


 完全じゃない。


 だが、かなり近い。


 佐倉が息を吐く。


「……つまり」


「力には代償がある」


「で、その中心にレイナがいる」


「……そういうことか」


 恒一は頷く。


 レイナは少しだけ俯く。


 そして。


「……変なの」


 小さく笑う。


 無理に明るくしようとしている。


 だが、その声は少し震えていた。


「でもさ」


 顔を上げる。


「だったら、簡単じゃない?」


 二人が見る。


「黒沢が変な使い方しなきゃいいだけでしょ」


 シンプルな答え。


 核心に近い。


「……まあ、そうだな」


 恒一も少しだけ笑う。


 だが、完全には安心できない。


 そんな簡単な話じゃない。


 そう感じている。


 レイナが一歩近づく。


「……ねえ」


 距離が近い。


 目が合う。


「これからは、ちゃんと考えて使お」


 静かな声。


「……一人でやらないで」


 その一言。


 重い。


 だが、優しい。


 恒一は一瞬だけ言葉を失う。


 そして。


「……ああ」


 短く答える。


 それで十分だった。


 この約束が。


 どれだけの意味を持つのか。


 このときは、まだ知らなかった。


第25話を読んでいただきありがとうございました。


これまで断片だった出来事が、少しずつ一本の線として繋がり始めました。

そして、この力がただの“幸運”ではない可能性も見えてきています。


まだすべてが明らかになったわけではありません。

ですが、確実に物語は核心へと踏み込んでいます。


そして同時に、二人の関係も少しだけ変わり始めました。


この先、その選択がどんな未来を生むのか——


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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