40話
四十階からの地形は少し深い所もあったが比較的浅く狭く山が近い地形をしていた。
魔物の強さも一段階あがり丘都市周辺でよく見かけるヘルゲーターといった魔物や谷で見かけたトンボなども混ざる様になっていた。
ヘルゲーターといった戦闘能力が高い魔物は確かに現れ始めるが外にいるものの様に頭を使って戦ってくるわけでもないので淡々と処理しする、
出てくるアイテムにも高価な上級回復や魔力回復薬なども出始め武具なども混ざり始める。
ただこの階層は人気が無いの危険なのかは分からなかったが四十階代では全く他のウォーカーは見ずに五十階層へと辿り着く。
五十階層からは崖と水が少し流れるフィールドで、いつ何処で崖が崩れたりする危険がある場所だった。
土砂の迷宮の迷宮と言われるだけそこら中で小さな小石がパラパラと落ちて行く。そして早速ソールを飲み込もうと土砂崩れが発生した。
エレクトロ・アクセルで加速し飲み込まれない様に土砂崩れを避けるが避けた先でも発生し土砂の迷宮と呼ばれる事はあるなとソールに感心させた。
魔物も雷の触覚で探すが地中にいるものが多くそれらが原因で地盤が軟らかくなっているのが分かった。
そんな魔物達が土砂崩れと供に接近し襲いかかってくる。ミミズの様な大きな魔物やモグラの様な魔物まで本当に様々な魔物が襲いかかってくる。
そして戦っている側から土砂崩れが発生し落ちたアイテムを回収するのはとても困難な階層だった。
「魔物がヘルゲーターより強く地形が魔物の味方でアイテムが中々拾えない……人がいないのはそういう事なんでしょうね。実際腹立ちますし」
文句を言いながら地図を開き次階への入り口を探す。
魔物が強化され地形も変わる迷宮だが次の階層へ向かう入り口と出口は変わらない事をソールは不思議に思う。
もっと本気で人間を捕食する気なら入り口と出口の位置を変えるだけでもかなりの効果はある。それをしないのは知らないのかできないのどちらかとソールは考えた。
「生物が生まれる時は口と肛門ができて他の部分ができると教えてもらった事があるので……迷宮も元は生物というか魔物ですから何か関係あるのかもしれませんね。迷宮の中って体内みたいなものですし」
自分がが知らないだけで入り口と出口の位置も変わる迷宮もあるのかもしれないで戻ったら協会にいる職員に聞いて見ようと考えソールは先を進んで行った。
いつ土砂崩れが起きるか分からないので休憩などはできずに二日ほどかけて五十五階へと辿り着いた。
「珈琲が飲みたい……」
そんな事をいいながら歩く五十五階層は地形だけは変わらなかったが魔物強さは更に上がっていた。
空には強大化はしていながオプキュティアが飛び交いソールを見つけると見境無く矢のように振ってくる。他にも電撃に体勢を持つ魔導車よりも少し大きいゴーレムなどが現れ始める。
浅い階層で使っていた様な魔術は全く通用しなくなっていたのでここまで来る道中で考え、強度や切れ味をました槍や剣の魔術を描き戦っていた。
魔物も強いが落とすアイテム等は明らかに美味くなっていた。武器や剣は尚のこと、高値で買い取ってもらえると噂の金や銀のインゴットなども現れ始める。
「……でもあれですよね?迷宮に誰がインゴットを持って来たって話になるんですが……迷宮で倒れると奪われるとの事なので持ってくる意味は無いとおもうんですが……」
金属の目利きなどはできないのでこんな所で出てくる金や銀といたインゴットにソールは頭を悩ませる。
戻って鑑定してもらえば分かるかと考えているとようやく目の前に五十六階への道が現れた。
五十六階に入ると入った辺りは草などが少し生えており少し綺麗で崩れた様子は無かったので流石に少し疲れたソールは休憩する事にする。
結界を設置すると土砂崩れが起きた時に回収出来ない恐れがあったので雷の触角で辺りを警戒しつつ珈琲を入れて美味しくない迷宮食と口直しの食べ物を準備する。
数日ぶりの珈琲を飲みほっと一息ついていると少しは離れているが雷の触覚に戦闘している者の反応を捉える。
その方向に目を向けると煙が上がり、背に鳥の様な羽が生えた者が空中に静止していた。
確か背にに翼が生えている者をピュテア族と言うのだとティアから聞いたと思いだしその方向を眺め観察する。
すると木をなぎ倒してそのピュテア族と同じ高さまでクイーンゲーターが顔を出した。その巨体はソールが前に倒した物よりも少し大きく思えた。
クイーンゲーターの強さは知っていたので援護に行った方が良いのかと考えたが、その必要は無い様だった。
魔導車と同じぐらいの大きさの岩がいくつも空に現れた後にクイーンゲーターに向かって一世に急降下をはじめダメージを与えた。
そのダメージで怯んだ隙にピュテア族が体に薄い緑の光を纏いクイーンゲーターに向かって突撃するとクイーンゲーターの頭部に大きな穴が空きボロボロと崩れ始めた。
ソールは迷宮の初心者ではあったが迷宮の危険度やこの階層の魔物の強さは分かるので、この階層戦える者は強者でなので無理に援護に行く必要は無いなと考えた。
「救難信号や助けを呼ぶ声が聞こえたら行きますが……余計なお節介は避けた方が良さそうですね。邪魔にもなるでしょうし。というかこの階層からクイーンゲーターが出るんですね」
そろそろ魔法を解禁しないと大怪我しそうな気はするが、魔法を使うといつまで経っても魔術の熟練度が上がらないので難しい所だった。
先ほどのパーティーの邪魔をしない様に進み、何匹かのゴーレムや魔物を倒し進んだ。
五十九階に着く頃には十近いクイーンゲーターを撃破し数え切れない魔物を倒していた。
その間でいくつかのウォーカーのパーティーと情報交換をしたが本来はこの階層にクイーンゲーターはいないとの事だった。
「なるほど。迷宮で食われるとかなりの影響があるんですね」
「向こうも生きてるンだろうから必死なんだろう。ここまで魔物が変わってるともしかしたら六十階にいる番人アスケイプゴーレムも変わっているかもね」
「入り口と出口は変わらないのに番人は変わる事ってあるんですか?」
「ある。十年ぐらい前のこの迷宮の主はプロークラブだったがアスケイプゴーレムに変わったからね。迷宮も強い番人がいいんだろ。私達は番人の撃破に興味は無いから行くなら気をつけて行きなよ」
「わかりました。情報ありがとうございます。皆さんもお気をつけて」
ステイルランクの女剣士のパーティーに礼を言ってたぶん最後になると思われる六十階へと向かった。
その道中は本当に険しく音も無く大岩が崩れてきたり気がつくと地面が動き始めたりとソールでも気を使う険しさだった。
そしてようやく六十階への入り口を見つけるとそこは岩でできた神殿の様な姿をしており所々に休憩しているウォーカー達がいた。
皆、一人でここまで来たであろうソールに驚いてはいるが特に話しかけたりする事はせずに休憩を取っていた。
ソールもその場所で休憩を取り番人に挑戦する者がいないのかをしばらく観察する。
一時間半ほど待っても誰も突入はせずにまた五十九階へ狩りにいく者や入れ替えで休憩するパーティーばかりだったので門番に挑むルールなどは無い様子だった。
ソールはゆっくりと立ち上がり六十階へと入って行った。
六十階に入ると他の階層よりは狭く深いクレーターの様な場所で高い崖はいつ崩れてもおかしく無い様な作りになっていた。
「まぁ……敵地のど真ん中ですし。地の利などこちらにある訳もありませんね」
ソールの雷の触覚に魔物が引っかかる。
その戦闘態勢を取りその方向を見ていると土や石や岩がゆっくりと重なりなりあって体を成形し始める。
待つ必要もないので形が形成される前に叩こうと考え魔術の槍を飛ばす。
刺さるには刺さったが大したダメージにはならなかった様で土と泥で作られた泥人形……と言うにはかなりの大きさのゴーレムがその場に現れた。
人で言う顔に当たる部分には幾何学模様の眼のの様なものが描かれ、それは確実にソールを捉えていた。
そそて先ほどの攻撃の礼だと言わんばかりに地面を叩きつけると周りの崖が崩壊し自分もろとも土砂崩れがソールを襲った。
エレクトロアクセルを発動し流れてくる岩などに器用に飛び乗りフィールドが落ち着くのを待つ。
これで番人が死んでくれれば話は楽で面白かったのだがそうはいかないようだった。
アスケイプゴーレムは土の中を移動できるようでソールが着地する場所に先回りし、土砂の中から拳を突き出した。
浮遊の魔法が使えない今のソールは着地の瞬間を狙われると回避しようがなかったので、身体能力にものを言わせてその拳を蹴り威力を相殺する。
「うおぅ……固っ」
岩や土であればソールの蹴りで破壊する事は簡単ではあったがアスケイプゴーレムの身体となった岩などは魔力で守られている様でとても強固であった。
その強固な体はソールを襲う攻撃にも使われる大きく腕を振りかぶるとアスケイプゴーレムの肘のから外れ、かなりの勢いで飛来する。
この攻撃をまともに受けては今のソールの盾では簡単に破壊されるのは本人が一番よく分かっていたので新しく丸く大きな盾を描き作り出す。
その盾は今までの盾とは少し違い素早く回転を始める。回転が速まり音が変わった辺りで飛来したアスケイプゴーレムの腕が当たるが壊れるより先に全てを弾き飛ばす事に成功する。
その防御方法で一つのヒントを得たので腕の再生を始めたアスケイプゴーレムに円盤に刃のついた物をを描きソールはそれを高速で回転させ飛ばす。
固い物と固い物がぶつかりあう金属音がするが最終的にはソールの魔術が競り勝ちアスケイプゴーレムの足や腕を切断する。
だが土や石といった物でできたアスケイプゴーレムの手足は簡単に修復し始める。
その事に少し戸惑うが元の世界でもこういう物は幾度でも見てきたので対策を考える。
基本的な物としては何処かにあるであろうコアの破壊。もしくは魔力が切れるまで徹底的に破壊。
「ゴーレムというぐらいですから文字を削って倒す方法もあるでしょうが……別の世界ですしそれは無いでしょうね」
ソールとまともに戦っても勝てないと思ったのか、もしくはこれがこのアスケイプゴーレムの戦い方かは分からなかったが、また土砂崩れを発生させた後に地中へと潜りソールが着地する瞬間を狙って攻撃を始める。
迷宮の魔物は基本的に力任せだがある程度の戦術的な戦い方はするのだとソールに教えた。
ただいくら力が強く強固であろうとも同じ攻撃をされれば誰でもなれる物で、出てきたアスケイプゴーレムの腕に槍を突き刺す。
その槍には雷の術式も組み込まれており刺さった瞬間に感電する様にされていた。
プロークラブを絶命させた程の電気が流れる。
アスケイプゴーレムにもダメージが入り機能を停止した機械の様にその場に倒れ込む……が雷の触角に土の中を高速で移動するもう一体の大型を察知する。
察知したそれは明らかにソールを狙っていた。
思いのほか速い攻撃だったのでアスケイプゴーレムに止めを差さずに飛び引くと、引いた場所から大きな何かが飛び出して来た。
その魔物はクイーンゲーターよりも大きく長く体は金属のような物に覆われていて顔の部分は騎士が使うようなランス様に円錐状に尖っていた。
その魔物がソール方を向くと円錐状の頭部に十字の切り込みが入りパカッと開かれた。
そこはやはり頭部だった様で大きな口とサメのような歯はあったが眼は無く鼻といった物も確認できなかった。
そしてソールを威嚇した後にもう一度地中へと潜るとアスケイプゴーレムも復活し二対一の状況が作られた。
「……迷宮初心者に優しくないと思いませんか?」
その問いに答える者はいるはずも無く第二ラウンドが始まった。




