38話
ソールの話が終わると一人は頭を抱えてその場にうずくまりソールに話しかけてきた男は大きな声でクソッと叫んだ。
「皆さんはステイルランクだったと思いますが迷宮で何かあったんですか?」
「油断が無かったと言ったら嘘にはなる。数日前までいなかった魔物が現れ始めてな……それにやられた」
「あの尻尾が刃みたいに鋭いキツネですか?そこまで強くなかった気はしますが……」
「ああそいつだ。名はゼオナールという。この辺にはいない魔物でなんにでも化けるキツネだ。普段は木や岩に化けて獲物を待つ。獲物が来ると体の一部を人が使うような刃物に変えて襲いかかってくる。お前が言う様にステイルランクなら一人でも問題無い強さだが……」
「なるほど。この辺にいない上に今まで迷宮に出なかったからという感じですね」
「ああ。仲間が寄りかかった木がゼオナールだった。仲間が倒れた後に近くにあった木のほとんどがゼオナールで俺達はやられた」
男が手を顔に当ててその時の事を思い出しているともう一人の男が悲痛な面持ちで大きな声を上げる。
「何階もこの階層に来ているが今まであんな狐はいなかったんだ!どうして仲間達が死なないと行けないんだ!何処の馬鹿だ!迷宮で死んだヤツは!」
従国士の事などを伝えようと考えたが……仲間をやられ心身共に疲弊している人に伝えてもまともな判断はできないと考えソールは伝えるの止め回復に専念してもらおうと考えた。
フォビッツが余計な事を言いそうになったのでその口を慌てて塞ぐと先にソールと話していた男が何かに感づいた。
「ん?お前達、何か知っているのか?」
もしこの二人が従国士に復讐に行くというなら止めはしないが……行くなら元気になってから行けととソールは思うので、フォビッツが金を巻き上げ様としていた話を思いだし適当な嘘をつく。
「知っている事はありませんが……私が貴方達を助けた時に彼女達のパーティーが狩りを切り上げて戻ってくれたので報酬の話が気になる様です」
今はそんな事言おうとしてないと言うような表情をフォビッツはするが男は納得し少し考えた後にフォビッツに聞いた。
「いくら欲しいんだ?」
「え?」
「えっ?じゃねーだろ。迷宮で狩り止めてまでその魔術師と戻って来てくれたんだろ。報酬ぐらい払う。いくらだ?」
どこぞの魔術師みたいにフォビッツはくれるならいくらでも欲しいと言う様なタイプではなかった様で少し考えてから、二万セルンほど欲しいと伝える。
近くにあった収納の魔導具を手に取って収納されているお金を取り出してソールとフォビッツに投げて渡した。
「六万セルンある。そこの魔術師が三万、お前も三万でいいだろ。俺達を助けてもらった礼だとっとけ」
ソールは礼を言って受け取り、ふっかけたはずのフォビッツはそれ以上の大金をもらったのでかなり慌てながら良いのかと聞き返す。
「あのな……ステイルランク舐めんな。このランク帯からはその程度の額はした金だ。感謝する気があるならその金で装備を調えて他のウォーカー助けてやれ」
ありがとうございます。と礼を言ってフォビッツはそのお金を受け取り満面に笑みで仕舞った。
そこで話も終わり二人とも無事そうだったのでもうこれ以上様はないなと考え、ソールとフォビッツが部屋を出ようとすると男が名乗った。
「俺はガニッシュだ。こいつはヘレセス。二人になったが剣舞という名でパーティーを組んでいる。リーダーは俺だ」
「ソールです。魔術、魔導の勉強をしながら旅をしているウォーカーです」
「わっ私はフォビッツです。求宝ってなのパーティーでウォーカーやってます」
「呼び止めて悪かったな。ソールだったか……この恩は忘れない」
「お金ももらいましたし忘れても文句言いませんが……せっかくの縁ですから何か困った事が起きたらよろしくお願います。では失礼しますのでお二人共お大事に」
軽く会釈をしてからソールとフォビッツは医療院を後にする。
医療院からでると良い笑顔のフォビッツがソールに質問する。
「ソールはこれからどうするんだ?私は仲間の所に戻って金を分けて買い物だ!素晴らしき臨時収入!」
「魔物も対策とかも知りたいですし一度協会に行きます。後はフォビッツさんと同じで色々買いに行こうかと思います」
「わかった!無駄遣いするなよー。またな!」
次にあったら間違い無く散財しているだろうと思わせる笑顔と足取りでフォビッツは消えて行く。
ソールもその足でウォーカー協会へと向かいたぶん暇であろう魔獣素材の買い取り場へと向かった。
買い取り場につくと協会の他の場所に比べてとても綺麗でまた掃除でもしていたのか、掃除用具を持った職員達がそれなりにいた。
眼鏡をかけたいつもの職員をキョロキョロと探していると奥から出てきたのでまずは挨拶をしてから杖を高値で買い取ってもらえた事を伝え感謝を伝えた。
「いえいえ。どう致しまして。それで今日はどうしましたか?昨日の今日で迷宮に潜って何かかき集めて来たとかですか?」
「近い内に迷宮に行こうとは思っていますが……出てくる魔物が変化している様なので何か新しい情報でもないかと思って来ました。あと報告ですが助けた二人が目を冷ましたので話を聞いたらゼオナールという魔物に囲まれてやられたらしいです」
「おう……また面倒な魔物が……」
「それで一つ聞きたいのですが……迷宮で戦う魔物は見かけたら襲ってくるのが多いのですが……その魔物の様に騙して攻撃するほど知恵があるんでしょうか?」
「んー基本的にはそんな知恵はないですね。ちょっと話は違いますが魔夜とか死者の迷宮には弓矢で攻撃してくる魔物がいるんですよ。何も考えずに襲ってくるなら弓で殴ってくるはず何ですがちゃんと弓を引き矢を撃ってきます。だからあまり難しく考えずにそういう攻撃をしてくる魔物ならそういう魔物と覚える方が楽ですね。迷宮にいるゼオナールも騙してと言うよりはただ化けて攻撃って感じでかね?たぶんですけど」
「なるほど」
「この辺にはいませんけど外のゼオナールの討伐案件とかめっちゃ賢いので普通にステイルの上位案件ですからね。攻撃とかは弱いですけども」
「迷宮に慣れすぎると外の仕事ができなくなりそうですね」
「そういう人は多いですね。だから外の依頼を受ける時は一つでもランクを落として受ける人が多いですね。逆もまた然りですけども……それで話は迷宮の情報ですが……正直終わってますね」
げんなりした様子の職員に詳しく話を聞く。
迷宮から戻って来た従国士達に詳しい話を聞こうと呼び止めたが、死んだ事が恥とでも思っているのか自分達の中に死者はいないプロークラブには挑まずに四十階層で狩りをしていたの一点張りとの事。
それだけなら本人達のプライドの問題で実害が出ていなければまぁいいかで流せたが……従国士が数名。ステイルランクのウォーカーが数名迷宮に食われた事で一桁の階層からそこそこ強い魔物が現れ始め……迷宮に慣れていないウォーカー達が数人犠牲になった。
数日もすれば迷宮も落ち着き出てくる魔物もほぼ固定されるが迷宮を出入り禁止にできる訳でもないので協会としては困り所との事だった。
「死人とか出るなら土砂の迷宮を出入り禁止でいいのでは?一ヶ月もすれば落ち着くのでしょう?」
「止めた所で何ですよねー……皆さん生活の為に潜っているのでもっと危険な魔夜と死者に行こうとするんですよね。何が悪いって魔夜とか死者で落ちるアイテムはマジでうまいので一度味を覚えるとそっちに行くんですよ……自分の実力がギリギリでもです」
「という事はある程度はウォーカー達に情報の規制とかしてるんですか?」
「内緒ですけどがっつりしてますね。入るなはできませんけど敵が強い癖に落ちるアイテムは不味いとかそんな感じの情報は流してますね。魔夜や死者で狩りをするウォーカー達も協力してくれてます。狩り場に人が増えてもいい事って少ないですからね」
「えっと……私にいって良かったんですか?」
「ソロで蟹を倒す人は放っておいても絶対に行きますからね」
ガニッシュがソールとフォビッツに大金を渡せたのも魔夜の迷宮とか死者の迷宮にも潜っているからなんだろうと答え合わせができた。
「土砂の迷宮が儲からない訳では無いんです。階層を進むごとに良いアイテムも出ますしね。ステイルランクの方々だと五十階層ぐらいで狩りをしていると聞きます。まぁ今は……出てくる魔物が変わったので戻って来てる人がほとんどですけども」
「じゃあ協会の方も買い取りとかで忙しくなりそうですね」
「ここはそんなに変わらないと思いますけどね。魔術師さん何か飲みますか?この前海藻もらいましたので」
相変わらず全然人が来ないのでソールもまぁいいかという気分になり珈琲をご馳走になった。
そして特に依頼を受けようとは思っていなかったがウォーカーブレスレットに移される依頼票にある特殊と書かれた迷宮の依頼について質問する。
特殊とは書かれているが外で受ける依頼と迷宮で受ける依頼を分ける為に書かれているだけで昔の名残だと職員は話した。
「迷宮か迷宮依頼って書けよって私は思うんですが……上は頭が固いのか変更するのが面倒くさい様なので……そこまで違いは無いんですよ。例えば呼び水の杖を十本揃えてくれとか。この魔物のクテルが欲しいとか。迷宮の主に挑みたいから道中の護衛を頼むとか。海藻を集めて欲しい等々ですね」
「依頼と似た様な物なんですね」
「大きな違いは無いですが頼む人も迷宮に関する依頼ばかりなので外の依頼はほとんど無いですね。丘都市とかなら猫を探して欲しいとかの依頼があると聞きますがこっちは猫はいますが依頼してくる人がいませんからね。ですから採取とか討伐もかなり少ないんですよ」
ティアがそんな感じの依頼を受けていたなとソールは思いだし、今頃あの姉妹は元気にしているのだろうかと少し微笑んだ。
最近迷宮の事ばかりで依頼票など全く見ていなかったので宿に戻ったら一度確認してみようとソールは考える。
「今の所はこちらから出せる情報は以上ですね。魔術師さんも迷宮に潜るなら十分に注意してください。あと今まで見なかった様な魔物を見たら報告してもらえるとすっごい助かります」
「分かりました。名前が分からない魔物がほとんどなので映像に収めておくようにします」
「ありがとうございます!ですけどそれなら依頼だしましょうか?」
「いえ。今日明日すぐに迷宮に行く訳でも無いですし戦闘の合間になるのでそこまで正確にはできないと思うので大丈夫です」
「了解しました。迷宮に潜る時は本当に気をつけてくださいね。またの起こしをお待ちしてます!」
珈琲もいれてもらい思った以上に長い時間話していたのでソールも礼を言ってから買い取り場を後にする。帰る時に協会の迷宮の窓口方面を覗いてみたが職員が言っていた様に土砂の迷宮からウォーカー達が引きあげているようでかなり混雑していた。
その中にはソールから見ても強者と思われる者もいたので、もう一度迷宮に潜る為の装備等を整える為にクロステッダの店に向かう事にした。




