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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
一章 新世界
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二十話


 木や岩を泥で固められた巣の中央には怪鳥オプキュティアが眠っていた。その丸く作られた巣の端に奇妙な形をした物がありそれがオプキュティアの餌箱だとレオルドはソールに伝えた。


「どうする?寝ている今がチャンスだが……全員で攻撃を仕掛けるか?」


「いえ。この辺についた辺り起きましたね。寝たふりと言うヤツで迂闊に近寄ると攻撃されますね。こちらの言葉が理解できないのがありがたいですね」


「だが……巣で戦うと問題だぞ。あの巣は見かけより脆く作ってある。不安定な岩場の上に作るから自分を狙う者が襲ってきた相手が戦いにくくする為だ」


「そうですね。ここは先輩ウォーカーの判断を仰ぎたい所ですが……私がオプキュティアと戦いますので皆さんは北側と西側の餌箱を調べてもらえますか?生命反応があるので誰かが生きています」


 その判断に驚きアークビショップのナイアが何度もソールとオプキュティアに視線を移動させ、あれと一人で戦うのか?尋ねる。


 誰かが戦わないと餌箱は破壊できないし消耗しているレオルド達に戦えなどと言うはずもないのでまともに戦えるのはソールだけだった。


「まぁ慣れていますから大丈夫ですよ。餌箱の中で生きてるのは人なのか他の生き物の判断まではできないのでその辺りはお願いします。そこそこ反応があるので何かは……生きている様です」


「ソールは探知系の魔術まで使えるのか……その割には術式が見えないが?」


「対人の癖で消してますからね(嘘)それとオプキュティアの下には卵がある様ですが……破壊して良いですか?幾つかはもう少しで孵る気配がありますけど」


「卵なら売れるが……雛になると只の魔物だからな倒してくれ。魔物は人には慣れるが懐く事はないからな」


「分かりました。私が魔法……では無く魔術を放ちオプキュティアを巣から離させるので皆さんはその間にお願いします」


「分かったが……巣から離れなかったらどうするんだ?」


「その時はオプキュティアの首と胴が離れるだけの話です」


 杖を唱え魔法を唱える準備をするとナイアから少し待ったがかかる。


 ナイアはソールの周りに何かの術式を書き魔力を込めると薄く発光しソールの周りに風の膜の様な物が現れた。


「音風除けの法衣って魔術だ。鼓膜が破れる程の音や体を持って行かれそうな風を防ぐ。私の神があんたならいけると言っているが……無いよりあった方が良いだろう」


「ありがとうございます。負傷者をお願いします」


「ああ。任せときな」


 オプキュティアに向かってソールが杖を構える。


 魔力が電気へと変換されソールの周りでバチバチと放電現象が始まった。


「ライトニングシェル!」


 ソールの周りで放電していた雷が杖の先端に収束され一本の細いレーザーの様に打ち出される。


 だがやはりソールが言っていた様にオプキュティアは起きておりライトニングシェルが当たる直前にその場から素早く飛び上がった。


 その場にあった卵はいくつかが割れもうすぐ孵化だったようで中からは雛になりかけの物が現れる。卵が割られた事でオプキュティアはソールを敵と判断し大きな咆哮を上げた。


「普段なら相手の土俵では戦いませんが……今回は仕方ありませんね。ライトニング・ワンダラー」


 巣を覆うように無数の雷球が現れる。その魔法はその場で停滞しオプキュティアがレオルド達に向かない様にする為のものでソールは慣れない魔術で足場描き雷球の隙間を抜けて夜空へと向かった。


 普段なら風の気持ち良い異世界の夜景を楽しむ所だが自分の巣を壊し土俵に上がり込んできた侵入者にオプキュティアは威圧し更に高度をあげ戦闘態勢を取る。


 そしてすぐに空中で静止するソール向かって力強く羽ばたき巻き込まれた者全てを吹き飛ばす様な突風を発生させる。


 その突風は発生から到達までが想像以上に速くソールが術式を書き終えたと同時に着弾し、盾の無属性魔術を簡単に破壊しソールを吹き飛ばし足場も破壊する。


「まさに……空を自由に飛びたいなって言うヤツですね」軽口を叩きながらすぐに魔術で足場を作り体制を整える。


 次は此方の番と言わんばかりにソールが魔法を唱え雷を発生させる。が、オプキュティアは一枚の羽を宙に固定させ唱えられた雷の魔法を避雷針の様に使い雷をそらし、自慢の速度でダメージを受ける前に離れた。


「クイーンが中ボスと考えるならあなたは一面のボスだと思うのですが……もう少し弱い方が異世界初心者には好かれますよ?」


 その態度に苛立ったのか言われた事が分かったのか……オプキュティアは先ほどの突風に刃のように鋭く固い羽を纏わせソールを狙い攻撃を激化させる。


 ◆◆◆


 ソールがオプキュティアと地上を分断した頃、レオルド達は言われた通りにすぐに行動し生きているものがいるであろう餌箱に向かった。


「まずは北側の餌箱に向かう。ダガフ、ナイア行くぞ」


 かけ声と供にレオルド達は崖を落ちるように駆け抜け巣にたどり着く。


 カイトシールドの様な大きな立ての裏側から盾よりは少し小さな戦斧を引き抜き力の限り振り抜き北側の餌箱の破壊にかかる。


 巣は脆く作られているが卵の周辺と餌箱はかなり強固に作られていたのでレオルドの一撃だけでは破壊する事は不可能だった。


 だがそれはレオルドが一人の場合だった時の事で他に二人信頼できる仲間がおり、ナイアが強化の魔術をレオルドにかけ強化し、ナイフやダガーといった物を得意とするダガフには鉄槌の魔術を使用しその形を光の槌へと代えた。


 三人のゴルディーランクのウォーカーが一斉に餌箱を攻撃し始めるといくら固いとは言っても所詮は岩や木と泥をオプキュティアの糞や唾液で固めた物なのですぐに壊れ中に溜められた物が流れ出す。


 ウォーカーにとって人の死、動物の死、魔物は死は見慣れた物であったがその全てが混ざり合う光景は死の国があふれた様な光景でダガフ、ナイアはその光景に眼を背け軽く嘔吐いた。


 レオルドもそんな光景に慣れている訳ではないが……目を離せない遺体がそこにあっただけだった。


 損傷の激しいその遺体はこのオプキュティアの討伐に参加したレオルド達のパーティーの魔術師と弓をメインに戦う魔導師の二人だった。


 三人は二人の元に行ってすぐに弔おうと考えたが……自分達の頭上で突風と電が戦っているの思いだす。


「ダガフ!ナイア!二人の事は後だ!ソールの言った事を忘れたか!それが終わり次第、俺達も戦闘に参加する!ソールがいくら強いと言ってもいつまで持つかは分からん!」


 二人は力強く返事をしあふれ出した死を調べ始める。


 魔物は死ぬと消えるのでその餌箱の中で生きていたのは手足をかみ砕かれた魔物だった。


 生きていると言っても死んでないだけの状態でありダガフがナイフで突くとすぐに死亡し塵となって消えていた。


「この餌箱で生きてる人はいないか……」


「ああ。私の方でも生きているならゆっくりと回復する魔術を展開したが……回復している奴がいないって事はそういう事なんだろう」


「分かった……次の餌箱に向かう」


 もう少し待っていてくれと犠牲になった仲間に声をかけレオルド達は次の餌箱に向かい先ほどと同じ様に破壊し始めた。



 ◆◆◆


 上空ではソールとオプキュティアの戦闘が更に激化していた。


 餌箱を破壊された事でオプキュティアは激高し見境なく風を呼び凄まじい速さで夜空を飛び回る。


 巣を守る為にレオルド達を排除する様な動きを見せた事もあったが停滞する雷、ライトニング・ワンダラーに阻止され近づくことはできなかった。


 その怒りは全てソールに向けられる。


 魔力が籠もった風などはソールのマイクロシェードで相殺されるが羽といった物理攻撃は軽減はされるが通り抜けた。


 ソールが装備している防具の性能はこの世界でも破格の性能で軽減されなくとも貫通する事はないが、肌が露出している手や顔は強化魔法が使えない状態では少しずつだが傷が増えていった。


「今までが……他の魔法に頼りすぎだったんでしょうね。それに気がつけただけでもありがたい事ですが……発動の遅い魔術では察知され躱されますね」


 遊んでいる訳では無かったが覚えた魔術を使いオプキュティアと戦っていた。


 強力な魔法を使い一撃で仕留める事はできるはずだが、想像以上にオプキュティアの速度が速く頭を使い先ほど使った様な直線的に攻撃する魔法を撃とうとするとレオルド達がいる方向を背にした為だった。


 その状態で広範囲で高威力の魔法を撃とう物なら考えられる結末は簡単だった。


「そこまで頭が良いなら無理に人を狙わなくてもいい様な気もしますけれどね……ただそろそろその速度にも慣れたので対処させてもらいます」


 杖を掲げソールは魔法を唱える。


「エレクトロリップズ」


 杖の先に空から小さな雷が落ちる。


 水面に波紋が広がる様に落ちた小さな雷も同じ様にソールを中心に放射状に広がり、逃げる様に飛ぶオプキュティアを飲み込んだ。


 オプキュティアの全てを飲み込んだ瞬間にそこから一気に放電し始める。


「そこまで威力の高い魔法ではありませんので仕留めきれませんが……その機動力は奪わせて頂きました」


 発動条件が少し難しくそこまで威力の高い魔法ではないがエレクトロリップズは接触し放電した後に視神経を破壊を破壊し相手の魔力を封印する魔法だ。


 その魔法を喰らった事でオプキュティアは目が見えなくなり、魔力が封印され風を使った攻撃などが使えなくなった。


 声や気配で何となくだがソールの位置は分かるがそんな状態で攻撃が当たる訳も無く最後はその巨体を活かした特攻しか思いつかなくなり声のする方向へ全力で飛ぶだけだった。


「まだまだやる事は沢山ありますね……」


 そう呟き腰の剣を抜き魔力を流し雷を纏わせる。


 オプキュティアもその声に反応し覚悟を決めた様に急上昇し、一気に反転急降下しソールを狙う。


 巨大な鳥と小さな魔女のシルエットが重なった。


 空気を斬った様な音がした後に足場は巨体に破壊され小さなシルエットは下降し始める。大きなシルエットは一枚の大きな羽を残しゆっくりと空へと還っていった。



 ◆◆◆


 レオルド達が残った西側の餌箱を破壊すると先ほど同じ様に様々な死が溢れたが、そこには希望も残っていた。


 かなりの瀕死だが片腕はなくなっていたが成人男性と呼ぶにはまだ顔に幼い部分が残る男の胸が上下に動いていた。


 その男の為にナイアが回復の術式を作るともう一つ他の場所で何かが動いた。


 確認する為にレオルドが近づく。


 それは少し前にウオーカー協会でブレスレット押し救援信号を鳴らした女の子だった。

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