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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
一章 新世界
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十四話

 急にパーティーを組まないかとティアに言われた事でソールは少々驚きながらもその理由を尋ねる。


「どういった理由で私とパーティーを組もうかと考えたんですか?」


 人として間違ってはいないが楽してお金を稼ぎたいやランクを上げたいといった理由なら断ろうかとソールは考える。


「時間が合う時だけでいいんですけど。私は魔術が苦手なのでソールさんが使うのを見て学ぼうかと思っています。必殺技とか教えてもらえればと思いまして!」


「なるほど……要は依頼をこなしつつ強くなりたいと」


「たぶんそんな感じです!」


「……分かりました。特に断る理由もありませんし私もこちらに来て分からない事ばかりなのでティアさんに聞く事も多いと思うのでよろしくお願いします」


「はい!こちらこそよろしくお願いします!」


 ソールが金欠と言うのもあり一人よりも二人の方ができる事は圧倒的に多く、特に断る理由もそんなには無かったのでティアとパーティーを組む事を決める。


 そしてティアがブレスレットを出しソールにも出す様に頼む。お互いのブレスレットが触れるとブレスレットの一部が緑色に光った。


「これで私とソールさんはパーティーになりました。緑の内は離れていても問題ありませんが、黄色になると危ない!赤になると死が近い!黒は死んだ!!になります」


「わかりやすい説明ありがとうございます。パーティーリーダーはどうしますか?」


「リーダー……二人ですし必要あります?……じゃあ。ソールさんがリーダーで!」


「分かりました。指揮官は苦手ですが……一からのつもり頑張りますのでよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


 パーティーが決まったので二人は協会のウォーカー達が集まり雑談する場所に移動し、お互いの希望等を話し合う。


 ティアは見習い期間があったとはいえある程度のウォーカーの知識はあるが技能も経験も足りないのでそこを伸ばしつつ必要な物を揃えたいとの事だった。


 ソールの場合は元の世界で元最高ランクの冒険者であったがこちらの世界の来て使えない魔法などが増え弱体化しているのでその辺りを調べながら生活基盤を整える事を考えていた。


 ソールの強さがあればヘルゲーターが沢山いる丘まで行って適当に間引いてくれば、それぐらいのお金はすぐに貯まるがそれではこの世界に来た意味が無いのでその考えはなくなった。


 しばらく二人で依頼票とにらめっこすると思いのほか討伐より採取の依頼がよさげなのに気付く。


「採取系の依頼はあれですよ!」


「どれですか?」


「採取できる所まで距離があるので魔導車を借りたりしないといけないので思ってる以上にお金がかかるので少し高めに設定されてるとかなんとか!回復薬とかの用途は多いですから需要はあるとかなんとか」


「競合する相手は多かったりしますか?」


「専門の人もいるとは聞きました!薬草系等はいくらあっても足りないのでいつでも依頼はあるとか何とか。ソールさん採取系の依頼を受けるつもりですか?」


「採取が安全とは言いませんが、本調子ではないので討伐系は避けようかと思っています。ティアさんに色々教えるにしてもまずは体力をつけてもらおうと考えていますので」


「肉体作りですね!わかりました!採取に行っても魔物とか普通にいますので私はそんなの倒して剣技を鍛えます!」


「分かりました」


 思った以上に話し込んでいたのでどの依頼はソールが宿で決めるという事になりウォーカー協会を出て二人は自身の宿へと戻っていった。


 そしてソールは夕食時に約束していたウォーカーに奢ってもらいながらオススメの採取依頼などを尋ね受ける依頼に目星をつけていくと少し仕事が落ち着いたのかベスパに話しかけられる。


「ソール。あんたウォーカーになったのかい?」


「冒険するのにウォーカーになった方が色々と楽そうだったので。明日、トルマさんちのティアさんとパーティー組んだのでどの依頼を受けるか考えている所です」


「なぜあんたが採取とか何の冗談だ。討伐でいいだろ……」


「いきなり新人が調子に乗って討伐とか受けても失敗するのがオチですので手堅く行こうかと」


「あんたみたいな装備の新人がいてたまるか」


 そんなベスパ見ているとベスパ自身も元はウォーカーだったと言う事を思いだしたのでソールは何かオススメの採取依頼がないかを尋ねた。


 少し仕事が落ち着きベスパ自身も面倒見がよいのもあってソールからブレスレットを受け取り慣れた手つきで操作していく。


 そしてすぐに目的の物を見つけた様でソールに説明する。


「その昼丘草の採取がいいと思うね。この地域によく見られる固有種で色んな薬に応用が利く薬草だね。その草を覚えておくと他の地域に行った時に見かけたらとって売るとそこそこの値段になるからね」


「なるほど……その辺に生えてるんですか?」


「あるにはあるけど……数をとるなら魔導車でここから東に約三時間の所に大きな丘の上に群生地があるからそこがいいね。ウォーカーなら魔導車もレンタルできるから夕方には帰って来れるから割りかし安全だね。まぁ道中にはそこそこ色々いるから注意だけども」


「ティアさんも鍛えたいと言っていたのでちょうど良いですね。行って見ないと詳細は分からないので一度行ってみようと思います」


「ティア一人だけだったら行かさないけどパーティーだからいけるよ。まぁ道中にアナグラトカゲっていうトカゲがいるけどちょっかい出さなけりゃ静かだし魔導車よりは遅いから何とかなるよ」


「強さはどんなもんですか?」


「ゲーターとヘルゲーターの間ぐらいだね。魔物じゃないから倒したら消えないから買い取ってもらえるよ。まぁそこまで高く無いけどね」


 話を聞いているとソールが考えていた事と教えてもらった依頼は本当に都合が良かったので礼を言ってからその依頼を受注した。


 試してみたい事もできそうだったので気分よく奢ってもらおうと思ったがウォーカー達は全員が酔い潰れていたのでソールは諦めて部屋に戻り少し時間をかけて準備をしてから休息をとった。


 ◆◆◆


 鳥達の小さな鳴き声でソールは目を覚ます。背伸びをし顔を洗ってから一階に下りるとベスパも起きていたようでソールに何かを手渡した。


「あんたなら大丈夫と思うが……ティアになんかあったら使ってやってくれ。適当な回復薬と昼食だ」


「ありがとうございます。多少は戦闘させるかもしれないので助かります」


 ほどほどになと言う返事を聞きながら宿を出るとティアとディアナがこちらに向かって来ていたので朝の挨拶を交わす。


「ティアは私が思ってる以上に色々とできる様なのであまり口だししないでおこうと思いますので……ソールさん。すみませんが妹をよろしくお願いします」


「はい。多少は戦ったりすると思うので筋肉痛とかになると思いますが……何かあれば私がどうにかしまうのでディアナさんはあまり気にせず待っていてください。でも今日は初めての依頼なので少し帰るのが遅くなると思いますのでよろしくお願いします」


「分かりました。ソールさんもお気をつけて」


 そして受ける依頼の事を少し聞くと東の橋から出た方が速いと教えてもらったので、そこでディアナと別れてソールとティアは橋へと向かった。


 東の橋を抜けるとそこも他と同じ様に穀倉地帯になっていた。


 そんな中ティアが何度も周りをキョロキョロし目的の物が見当たらないのでソールに質問する。


「ソールさん。魔導車が見当たらないんですが……後から持って来てもらうんですか?」


 その質問にソールは無慈悲に答える。

       

走って行くと……


「ソールさん。冗談ですよね?」


「冗談はよく言いますが今回は冗談ではありません。少し理由があって私自身の体力が何処まで落ちているのかが知りたい事です。いくら私が魔法ではなく魔術師でも一に魔力、二に体力、三四がなくて五に魔力なので今の自分の見極めるつもりですので」


「ソールさん……私は剣を持った戦士型のウォーカーになるつもりですが……」


「戦士なら一に体力、二に魔力、三四がなくて五に体力だと思います。魔力と言うのは生命力でもありますので体力をつけておいて問題ありません」


「本当ですか!?」


「はい。私の超必殺技のサンダー・ソール・フラッシュも足腰が重要なので走ります。友人の剣士がよく言ってましたが技はなくとも突き・切る・払うで敵は倒せるとの事なのでティアさんはまずは体力をつけましょう」


 ティアは橋の上から目的地であろう方角を眺めるが起伏が激しい丘が見えるだけだった。


「ソールさん本当に走るんですね?」


「はい。走ります。ティアさんが嫌と思うならパーティーは解消しましょう。私には私の考えがありますしティアさんにはティアさんの考えがあります。お互いにそれは押し付けては駄目ですし強要するものではありません」


 ティアは少し考えた後に両手で顔をバチンと叩き覚悟を決めた。


「分かりました!走ります!足腰に自信があるのでソールさんこそ遅れないでくださいね!」


「大丈夫ですよ。ティアさん様に疲労回復のお茶も準備したので常に全力で走ってください」


「ふふん。ブロンランクですが体力には自信ありますからね!ソールさんこそ。遅れないでください!」


 そういって元気よく走り出したティアを見て少し微笑んだ後に、瞬き一つで先に走り出したティアの横に並ぶ。


「うへ!?」


「ティアさん。一つ忘れていませんか?貴女とディアナさんを助けたのは誰だったでしょうか?」


「……そうだった!ソールさんむちゃくちゃ足が速いんだった!」


「そういう訳で飛ばしますよ。夜には帰って来ないと駄目なのでティアさんはもっと本気で走ってください」


「……走りやすい格好でくればよかった。攻めて剣は置いてくれば」


「駄目です。剣士たるものいつでも近くに剣を持ちいつでも何処でも戦闘態勢に入れる様に」


「わっ分かりました。先生!」


 頑張ってくださいと応援を送るソールの顔は少し笑っており、また先生と呼ばれるのかと少しだけ昔を思いだした。


 なれない身体強化の魔術を使用し常に本気で足を動かしティアは緩急の激しい丘を駆け抜ける。途中で体力が落ちスピードが落ちるとソール特製の披露回復茶で強制的に回復させ走らせる。


 ソールの方は身体強化魔法が使用不可なので魔術の練習や雷の魔法で速度上げる事も考えたがそれをするとティアが着いて来られなくなるので身体能力のみで走っていた。


 それでも圧倒的にソールの方が速いので一時間と少しぐらい走った所でティアが文句を言いだした。


「ぐへぁ……ソール先生!本当に魔術師ですか!?魔術師は体力ないって聞きましたよ!」


「まぁ魔術師なんてそんなもんです。偏屈で変な所が頑固で友人がいなくて頭でっかちで人の話を聞かなくて体力が無いのが魔法使いではなく魔術師です」


「ブーメランって知ってますか!」


「知ってますよ。ですから昔の自分を反省し悪いなと思う所は直そうとしてます。体力が無くて動けない魔術師なんて只の的ですからね。ティアさん割りと余裕ありますか?」


「ないですよ!」


 特製茶の効果があるとは言え話せる余裕があるならもう少し速度を上げられるだろうと考えていると街道から少し離れた所に大きな穴があった。


 その穴を索敵すると大きな四足歩行の生き物の気配があったのでソールは少し閃きティアに話しかける。


「ティアさん。ちょっとハプニングが起こりそうなのでもう一度お茶を飲んで疲労をとっておいてください」


 訳が分からなかったが言われた通りにお茶を飲み体力を回復させるとソールから死ぬ気で走るようにと声がかかった。


 言われた通りにティアが速度をあげもう一度ソールの方を見ると大穴に向かって拳より少し大きな石を当たったらいたそうな速度で投げ込んだ。


 その石は大穴の主に命中した様でぐぎゃ! という音がした後にかなりの速度で大穴から這い出した。


 その主はアナグラトカゲで自分に石をぶつけた奴を探し舌をチロチロと出し興奮していた。


 そして一番近くにいたティアを敵と見定め大きな体に似合わずかなりの速度で追いかけだした。


「ちょっと!私じゃないですよ!ソッソール先生が犯人ですよ!」


 そう言いながらソールを探すが辺りにその姿は無かったがかなり離れた丘から声がする。


「はい。ティアさん。頑張ってください。遠くから見ているとよく分かりますが速度で負けていますので頑張らないと追い着かれますよ」


 丘の上から手を振るソールを見てティアは一つの考えが浮かんだ。


 この人と同じパーティーになったのは失敗だったのではないかと……

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