三つ目
次の日も当然、俺は通学路でぬっ殺されていた。
これも昨日の警察官が悪い。
ちょっとアイテムを買う時間くらいくれっての。
まあでも、明日こそはあの通学路のヌシを倒してみせる。
俺は生まれ変わったように強くなるのだから。
学校から帰宅すると、早速近所の交番へと、「ちょっとだけ良い剣」を買いに行く。
とか言っていると、なんだかシュールだな。
交番前に、スマフォを持った奴らが集まっている光景は、最近は見なれたものになってはいるが、どうも交番で、人をも殺せる剣を買うってのは、素直に受け入れられない。
とち狂っているとしか言いようがない。
此処は少しでも、現実世界から逃避し、バーチャル世界に入れるように、交番は見ないで、スマフォの画面だけを見ていよう。
「ふぅ~」
なんとか無事、「ちょっとだけ良い剣」を買う事に成功した。
今まで持っていた武器は「ネギ」だったから、特に罪悪感は無かったけれど、剣は流石に後ろめたいので、俺は早々に交番を後にした。
さて、今日の俺は、この後服なんかを買いに行ったりする。
服を買う為に見て回るだけでも、スマフォの中の勇者「俺」は、「ザコモン」をドンドン倒して強くなっていくだろう。
だけど今日は、ウロウロするつもりはない。
と言うか、買う店は決まっているのだ。
そう、服屋で買うのだ。
いや、それだと普通なんだけど、俺の言っているのは、ゲーム内での服屋だ。
実はゲーム内の服屋と、リアルの服屋はリンクしていたりする。
現実世界で実際に服を買うと、ゲーム内でバーチャルの装備が手に入るという、なんとも無駄っぽい機能が付いているのだ。
要するに、大人の事情で、店がゲーム制作会社と提携しているという奴だ。
まったく、こんな見え見えの販売戦略に乗せられる奴なんて、俺以外にどれだけいるっていうのだろうか。
そう思って指定の店に行くと、スマフォをいじっている老若男女が、所狭しと店の中を占拠していた。
うそ~ん。
みんな分かっていても、買ってしまうという事か。
ナカーマ、なんて少し思って嬉しくなったが、やっぱりなんだか恥ずかしいな。
俺は適当に必要な服を手に取り、レジへと持っていく。
お会計は、ゲームが起動されているこのスマフォのお財布機能で支払う。
するとあら不思議、ぱぱらぱっぱらぁ~!
アイテムが手に入った。
支払った金額によってアイテムは変わるらしいが、俺が貰ったのは・・・
ふざけるなコノヤロー!
「うさ耳」なんて貰っても、全然強くならねぇじゃねぇか!
それでもとりあえずつけてみる。
意外に可愛かったので、俺はそのまま「うさ耳」をつけておく事にした。
その後はまた、町を徘徊してモンスターを倒す。
「ザコモン」の強さは、自分のレベルなど強さによって、自動で変わるようになっている。
スマフォで覗いて見ると、「ザコモン」は全て、マキグソみたいなビジュアルだ。
偶にプレイヤがリリースしたモンスターがいたりして、いきなり死んでしまう事もあるが、今のところ、それほど強いモンスターに出会う事は少ない。
まあ、ゲームが始まって、まだ三カ月くらいだからね。
毎日町を徘徊できる奴なんて、そうそういないだろう。
このゲームに強いのは、営業回りをしているサラリーマンあたりだろうか。
俺はそんな事を考えながら、今日も健康的に町を歩き回った。
マジで競歩の選手を目指そうかな。




