一つ目
今日俺は、生きて学校にたどり着くことができるのだろうか?
最近毎日、俺は通学路で死んでいる。
と言っても、今生きて学校に通っているわけだから、死んでいるという表現は間違っているのかもしれない。
でも、このスマートフォンに起動された、リアルRPGという名のゲームの中で、俺は毎日のように死んでいた。
このリアルRPG、通称「リア」というアプリケーションゲームは、リアルのマップを使って、実際に動いてプレイするロールプレイングゲームである。
スマートフォンのカメラ越しに世界を見れば、そこには別のプレイヤやモンスター、宝箱が表示されていたりする。
今は登校中であるから、流石にそんな物を見ながら、通学路を歩くわけにはいかない。
何故なら・・・何故なら?・・・なんでだろう?
とにかくだ、カメラを覗きながら歩いていたら、変な奴だと思われるではないか。
きっと・・・
そんなわけで、ゲームを起動したまま、俺は学校への一本道を歩いていた。
モンスターと遭遇すれば、自動でモンスターとの戦闘が始まり、勝敗を決する事になる。
宝箱と接触すれば、自動で宝箱を開けて、アイテムをゲットする。
プレイヤと出くわせば、それぞれの設定によっては、戦闘を行って勝敗を決する。
基本的には、この三つを繰り返し自分を強くし、「ラスボス」を倒すか、もしくは「光と闇の宝具」を七つ集める事が最終目的だ。
このゲームのプレイヤは、現在二十万人を超えており、最初に目標を達成できた者には、一千万円の賞金がでる事になっている。
だからこのゲームをしている者たちは、みんなマジだ。
全く容赦がない。
弱い奴は叩ける時に叩き、嫌がらせも半端ない。
そんなわけで、誰だか知らないが、俺が通う学校への通学路に、やたら強いモンスターを配置して、この学校に通う勇者に対して、嫌がらせをしているようだ。
モンスターを倒すと、アイテムと、倒したモンスターが手に入る。
手に入れたモンスターは、自分の好きな場所に再配置ができる。
配置した者には、そのモンスターは襲ってこないし、倒す事もできない。
要するに、このモンスターを配置した奴は、毎日此処で俺が死んでいるのを見て、きっと笑っているに違いないのだ。
さあ、もうすぐ、いつも死んでいる場所だ。
此処を無事通過する事ができなければ、スマートフォンがまた、死亡を通知する為に、プルプルと震える事になる。
頼む!震えるな俺のスマフォ!
・・・駄目だった・・・
やはり俺のスマートフォンは、無情にもプルプルと震えていた。
結局今日も、俺は朝のほんの短い時間だけしか、ゲームをプレイする事ができなかった。