エピローグ 純一の最期と随想録の終焉
これが本当の最終回です!
こうして、館山城の主となり、『南総里見八犬伝』の写し本を作り終えた俺は、ついに最期の時を迎えようとしていた。
「橡…来て…くれたんだな…?」
「ふん…。貴様がくたばる前に一つ、申しておきたい事があった所以でな…」
「はは…」
素直に「うん」と答えない辺り、何ともこの男らしいと俺は思っていた。
しかし、顔に浮かべる笑みとは裏腹に、俺の肉体はボロボロだった。39度近い高熱をだし、痙攣が止まらず…本当に起き上る事すらままならない状態であった。
「俺は…」
「…?」
小さく、掠れた声で俺は呟く。
そんな俺を、橡は黙ったまま聞いていた。
「俺は何故…この時代に呼ばれ…このような最期を、迎えるようになったのか…な…?」
意識が朦朧とする中、今まで誰にも洩らさなかった弱音をつい口にする。
当然、目の前にいる男はその問いに答えてくれるはずもない――――――そのようにして考えている間、俺達との間で沈黙が続いた。しかし…
「それを知る術は、全くない。…だが、貴様が現世から姿を消そうとも…その謎の答えを、これからも探し求めようではないか…この俺がな…」
「橡…」
俺の思いに答えてくれたのか橡だというのがあまりにも意外だったが…死に逝く俺にとって、この台詞は何よりも嬉しい慰めであった。
悪役のような不気味な笑みを浮かべる白髪の鬼。しかし、こんな顔でも、俺にとっては何よりも頼もしい表情であったのである。
「狭子…。俺は…」
震えた右腕を、俺が臥せっている部屋の天井に向かって伸ばす。
そこに、何か救いを求めているような表情をしながら―――――――
「こうなる前…に、もう一度…せめてもう一度、お前に…相まみえたかった…な…」
パタン…
最期にそう呟いた俺は、一筋の涙を流しながら…微笑みさえも浮かべ、その瞳を閉じた。虚ろな表情で見下ろす橡が見守る中…俺は、“染谷純一”という人間としての生をこの“戦国となりし世”で終えたのであった――――――――――
こうして、俺の随想録は、己の命と共に終わりを告げた。ちなみに、俺の前から姿を消した『南総里見八犬伝』の現代語訳本は、どういう訳か現代にある高校の図書館――――――もとあった場所に、時代を越えて戻っていたのであった。そしてその本をきっかけとして、俺の幼馴染・三木狭子を主人公とした物語が後に幕を開けるのであった。
しかし、当の彼女は俺を含む4人の登場人物が描いたこの随想録の存在を、最後まで知る事はなかったのである。
<完>
いかがでしたか。
このエピローグはとても短い物ではありましたが、全ての終わりなので何か感慨深いような?かんじがしましたね(^^
純一編は外伝ではありますが、他の随想録とは違い、一つの作品ともなりえる話だったのかと今は思います。
「狭子以外の視点で書きたい」という思いから始まったこの外伝集ですが、最初から最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました!!
新作につきましては、現在は楽しく構成を練中。掲載を開始するのはおそらく、今月末以降になる可能性が高いです。…諸々の諸事情につき。笑
それでは、今後とも皆麻の作品を宜しくお願いします。
最後までおつきあい戴いた皆様、本当にありがとうございました!!
ご意見・ご感想がありましたら、ドシドシ書いてくださいね★