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第8話 一触即発!アビスプロ!


 東京ダンジョン第15層。

 イベント開催区域が俺にとって未知なる階層だが、エルも剣崎も特に気にしていない様子を見ると、ここはまだまだ低層の部類らしい。

 複数のパーティーが階層出入り口付近の広場に集まり、いずれの組も近くに配信ドローンを展開している。もちろん俺たちもおニューの配信ドローンを起動中だ。


 「エル、このダンジョンは何層まで攻略されてるんだ?」

 「74層です!もうすぐ75層の攻略が始まるって噂ですね!」

 「なん……だと」

 

 進んでいるにもほどがある。初心者向けイベントがこの層で開催されるのも納得か。


 雑談が突如として黄色い歓声に変わる。


「7期生だ!」

「キャァァァッ! レオン様ぁ!」


 俺たちが顔をそちらに向けると、通路の向こうから、およそ冒険者とは思えない華やかな衣装を身にまとった三人が歩いてきた。


 先頭を立つ黒色コートを羽織った赤髪をかきあげた青年は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


 「おうおう。騒がしいぜヒヨコども。モンスターどもが来ちまうぜ?」

 

 彼の両脇を、魔法使いのようなローブのような服を着たピンク髪の女性と、白髪が腰まで伸びる和服モチーフの服を着た女性がそれぞれ固めている。

 

 「みんな―!こんアビー!今日は私たちアビスプロ7期生と、楽しくダンジョン攻略しちゃおーね! アビーの可愛さは―?」


 「今日も世界一ぃぃぃぃ!!」

 

 魔法使い風の少女が可愛らしくウインクをすると、集まっていたほとんどの男たちから野太い歓喜の声が上がる。

 

 「……今日も私、いとエモし」


 「ユキメ様…今日もエモメロい…」


 和服の女性が自由気ままに自撮りを始める。合わせて冒険者たちもメロメロな様子で端末を構えて撮影し始める。

 

 全く冒険者に見えない三人に俺たちが視線を向けていると、うち一人、レオンと呼ばれた男がこちらに気が付くと、馬鹿にするようにを鳴らした。

 

 「ハッ!なんだよ七光りの事務員と、落ちこぼれのキリカもいるじゃねぇか。」


 剣崎が刀の鞘を強く握ってレオンを睨みつける。


 「お、お久しぶりです。レオンさん…」


 エルが作り笑いを浮かべると、その反応を楽しむように、レオンが近づきながら笑う。


 「そうビビんなよ。見たぜお前この前の配信。バズってたじゃねぇか!」

 

 途端にエルの表情がぱぁっと明るくなる。


 「そうなんです! リンネさんが助けてくれたアー」

 「やらせにしちゃあ手の込んだ演出だったぜ。」 

 「……え?」


 レオンの言葉に、エルの言葉が途絶える。


 「だが、たかだか10層にS級が現れたなんて嘘配信を流してもらっちゃ困るなぁ? 使ったのはAIか?」

 「ち、違います! 嘘でもAIでもありません!本当に10層であの巨大なモンスターに遭遇して、リンネさんに助けていただいたんです!」

 「リンネ? あぁ。この男か? ちょっとバズった変態野郎だろ?」


 レオンは、俺を頭のてっぺんからつま先までじろじろと見ると、鼻を鳴らして笑った。

 

 「ビジュもいまいちだな 」

 「び、びじゅ?」

 「おっと言われたことなかったか? わりぃわりぃ。でも安心しろよ」


 レオンは、きらびやかな装飾を凝らした剣を引き抜くと、刀身に炎が宿る。


 「この炎剣のレオン様が、お前ら素人に、ダンジョンでの立ち回りってやつをおしえてやるぜ!」


 なんだこの生意気で痛い奴は。

 最近はこういうのはモテるのか?

 事実として、集まった女性冒険者はわーきゃーと黄色い声援を送り、俺たちの配信コメント欄からも歓声が上がっている。

 確かにアイドル級のイケメンだ。

 だが―――それはそれとしてイラっとした。


 「でも、お前に教わることなさそうだけどなぁ」

 「……あ?」

 

 その場が凍り付く。

 それでも俺は続ける。


 「配信ってのはまだよく分からなねぇけど、ようはダンジョン攻略しながら盛り上げればいいんだろ?」

 

 俺の言葉にレオンぷっと噴き出す。


 「ハハハ! お前、ダンジョン配信舐めすぎだろ! 盛り上げるっても色々あってだな」

 「お前こそ、ダンジョンで死にかけたことはあるのか?」

 「はぁ?」

 「俺はある。何度もな。」


 レオンは、隣にいたピンク髪の女性、アビーと顔を見合わせて笑い合う。


 「……ハッ! 死にかけたのをネタにするのは正直ダサいし時代遅れだぜ? 」

 「その時代遅れの俺が、お前の言う事務員と落ちこぼれと一緒に、お前たちのやり方を超えてやるって言ってんだ」

 

 周囲がざわつく。

 袖が引っ張られ、顔を向けると顔を真っ青にしたエルが首をぶんぶんと横に振っている。


 「あの、リンネさん…そんないきなり挑発的なのは…もっとオブラートに」

 「そうか、オブラートにか……勝負だアビスプロ!! 格の違いってやつを見せてやる。」

 「それストレートなんですけど!?」

 

 レオンの剣から炎が噴出し、一気に周囲の温度が上昇する。その顔は怒りに満ちていた。


 「おいアビー、ユキメ、他の連中の指導はそっちで勝手にやってろ」

 「はぁ? レオンあんた何言ってるのよ。」

 「……事務所に怒られる…いと辛し」

 「数字が取れりゃいんだろうが。なにより、偶然でバズって調子に乗ってる奴に喧嘩売られて黙ってられるかよ」

 

 レオンの気迫にアビーとユキネが押し黙る。意見はまとまったようだ。

 

 「おい、その勝負に乗ってやるよ。変態新人。勝負内容は……ダンジョンRTA対決だ」


ここまで読んでいただきありがとうございます!

次回、アビスプロとのコラボ対決!

よろしければ、感想評価のほどよろしくお願いいたします!

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