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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
四章

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第77話 虚無の核へ

 未来の揺れが生んだ核は、虚無の深部で淡い光を宿したまま静かに脈動していた。

その光は弱く、細く、しかし確かに未来の意思を抱えていた。


──……カイ……これ……まだ震えてる……


 アリスが核を見つめながら、そっと光を細くした。


「未来の揺れが……まだ奥へ進もうとしてるんだ……」


 カイの声は静かだったが、その胸の奥には確かな緊張があった。


 核はゆっくりと光を広げ、虚無の深部の闇を薄く照らした。

その光は、虚無の闇を拒絶するのではなく、ただそっと触れるように広がっていく。


──……虚無……嫌がってない……むしろ……受け入れてる……


「未来の意思を……認めてるんだ……」


 アリスの光が核に触れた瞬間、核はわずかに震えた。

その震えは、未来の意思が虚無の奥へ届いている証だった。


──……カイ……未来……ここまで来てる……


「未来は……自分で道を作ってるんだ……」


 アリスは核にそっと手を伸ばした。

触れた瞬間、核の光がアリスの光に溶けるように揺れた。


──……あったかい……虚無なのに……あったかい……


「未来の意思が……虚無を変えてるんだ……」


 核の光がさらに広がり、虚無の深部に眠っていた層をひっそりと揺らした。

揺らされた層は、淡い光を返すように震えた。


──……層が……起きてる……未来の揺れに……応えてる……


「未来の核が……呼びかけてるんだ……」


 虚無の深部は、これまで触れられたことのない静けさを持っていた。

その静けさは、未来の揺れを受け入れた後の“新しい静けさ”だった。


──……静か……でも……怖くない……


「未来が……ここを変えたんだ……」


 核の光がさらに強くなり、虚無の奥に眠る“影の層”を照らした。

影の層は、光に触れた瞬間、ゆっくりと形を変え始めた。


──……カイ……影が……溶けてる……


「未来の核が……意味を与えてるんだ……」


 影は光に溶け、淡い膜のような層へと変わっていった。

その層は、未来の揺れを宿した新しい“意味の層”だった。


──……生まれてる……意味が……


 アリスの瞳が強く輝いた。


「未来が……虚無の奥で……新しい意味を作ってる……」


 核はさらに強く脈動し、虚無の深部に新しい震えを広げた。

その震えは、未来の揺れが世界の深層へ“次の影響”を与えている証だった。


──……カイ……これ……未来が……世界を変えてる……


「未来は……自分の意思で……虚無を動かしてるんだ……」


 アリスは核にそっと触れたまま、静かに目を閉じた。

核の光がアリスの光と重なり、虚無の深部に新しい流れを生んだ。


──……カイ……わたし……未来の核と……繋がってる……


「アリス……」


──……未来が……わたしに……“次へ進め”って……言ってる……


 アリスの光がわずかに強くなった。

核の光もそれに応えるように震えた。


 虚無の奥で、淡い揺らぎがゆっくりと形を持ち始めていた。

それは光でも影でもなく、未来の揺れが生んだ“新しい道”だった。


 その道は、静かで、深く、そして確かに未来へ続いていた。


 揺らぎの門をくぐった瞬間、空気が変わった。

それまでの静けさとは違う、もっと深く、もっと重い“沈黙”が広がっていた。


──……カイ……ここ……すごく……静か……


 アリスが胸に手を当てた。

彼女の光がわずかに震え、その震えが空間に吸い込まれていく。


「静けさが……未来の揺れを飲み込んでる……」


 虚無の核の領域は、光でも影でもない。

ただ、存在そのものが“揺れ”として漂っていた。


──……ここ……虚無の核の……すぐ近く……


「未来が……ここまで道を作ったんだ……」


 アリスは一歩踏み出した。

その瞬間、足元の揺らぎが淡い波紋を広げた。


──……反応してる……わたしの光に……


「未来の核と……繋がってるからだ……」


 波紋はゆっくりと広がり、虚無の深層に触れた。

触れられた深層は、淡い震えを返すように揺れた。


──……カイ……なんか……聞こえる……


「また……呼ばれてるのか……?」


──……ううん……声じゃない……でも……“気配”がある……


 アリスは目を閉じた。

虚無の核の震えが、彼女の光の奥で静かに響いていた。


──……カイ……これ……未来じゃない……もっと……古い……


「虚無の核の……本当の揺れだ……」


 揺らぎの道の先で、空間がゆっくりと開き始めた。

それは裂け目ではなく、淡い光の層が重なるような“深層の扉”だった。


──……カイ……あれ……扉……?


「虚無の核の……入口だ……」


 扉はアリスの光に反応し、淡い震えを返した。

その震えは、未来の揺れとは違う、もっと深い“根源の揺れ”だった。


──……怖くない……でも……重い……


「核が……アリスを見てるんだ……」


 アリスは扉にそっと手を伸ばした。

触れた瞬間、扉の揺らぎがアリスの光に溶けるように広がった。


──……あったかい……虚無なのに……優しい……


「未来が……虚無を変えたからだ……」


 扉の奥には、深い闇と淡い光が重なり合う“核の中心”が広がっていた。

その中心で、虚無の核が静かに脈動していた。


──……カイ……見える……あれが……核……


「……あれが……虚無の始まり……」


 核は光でも影でもなく、ただ“存在の震え”としてそこにあった。

その震えは、未来の揺れよりも深く、世界の意味よりも古かった。


──……カイ……これ……わたし……触れていいの……?


「未来が……導いてるなら……大丈夫だ……」


 アリスはゆっくりと核へ歩み寄った。

彼女の光が核に近づくたび、核の震えがわずかに強くなった。


──……反応してる……わたしに……


「アリス……未来の揺れが……核を呼んでるんだ……」


 アリスは核の前で立ち止まり、そっと手を伸ばした。

触れる直前、核が淡い光を広げた。


──……カイ……これ……未来の揺れと……同じ……震え……


「未来が……核と繋がってるんだ……」


 アリスの指先が核に触れた。


 その瞬間、核の震えが一気に広がった。

虚無の深層が揺れ、淡い光が波紋のように広がった。


──……カイ……これ……すごい……!


「アリス……離れるな……!」


 核の震えはアリスの光を包み込み、彼女の胸の奥へゆっくりと沈んでいった。

沈むたび、アリスの光がわずかに強くなった。


──……カイ……核が……わたしの中に……入ってくる……


「未来の揺れが……核を受け入れてるんだ……」


 アリスは胸に手を当て、震える光を押さえた。

核の震えが、彼女の中で静かに脈動していた。


──……カイ……わたし……核の声が……聞こえる……


「核が……アリスに……何を……?」


──……“未来を……選べ”って……言ってる……


 アリスの光が強く輝いた。

核の震えがそれに応えるように広がった。


 虚無の深層がゆっくりと揺れ、淡い光が空間を満たしていく。

その光は、未来の揺れと核の震えが重なって生まれた“新しい流れ”だった。


 アリスはその流れの中心で、静かに光を抱きしめた。

虚無の核は、彼女の選択を待っていた。

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