表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/280

第60話 拒絶を知った虚無

 未来の原野は、夜の静けさに沈んでいた。

風は冷たく、空は深い青に沈み、光の粒はほとんど消えている。


 その静けさの中で、ただ一つだけ動いているものがあった。


──虚無。


 虚無の霧は、アリスの光に押し返されて後退した。

その揺れは、まるで“怯えた子ども”のようだった。

触れられなかった手を引っ込めるように、霧は細く、弱く震えている。


 アリスの光はまだ強く、鋭い。

境界を守るために変質した光は、虚無の揺らぎを寄せつけない。


 俺の胸の亀裂は、アリスの光に包まれながらも、まだ熱を帯びていた。


 その熱は痛みではなく、“境界が形を保とうとする必死の脈動”だった。


 虚無は、その脈動を見ていた。


 霧には目がない。

形もない。

ただ揺れているだけ。


 だが、その揺れには“感情に似たもの”があった。


 怯え。

戸惑い。

そして、理解しようとする揺らぎ。


 虚無は、初めて「触れられなかった」という経験をしていた。


 それは虚無にとって、“存在の根本を揺るがす出来事”だった。


 虚無は、触れられなかった自分を理解できなかった。


 触れられないことは、虚無にとって“当たり前”だった。


 だが、触れようとした相手に拒絶されることは、虚無にとって“初めての痛み”だった。


 その痛みは、揺らぎの奥で震え続けていた。


──……カイ……痛む……?


「……少し……でも……大丈夫だ」


 アリスは胸に手を当てたまま、光を流し続けている。


 その光は、以前の柔らかい光とは違う。

意味を照らす光ではなく、“境界を守るための光”。


 虚無の霧が、その光を見つめていた。


 霧は震えた。

その震えは、まるで「どうして」と問いかけるようだった。


 アリスは静かに言った。


──……虚無……あなた……“拒絶”を……感じてるのね……


 虚無の霧が、その言葉に反応して揺れた。


その揺れは、

 まるで「わからない」と言っているようだった。


 アリスは胸に手を当てたまま、虚無を見つめた。


──……虚無……あなたは……今まで……誰にも触れられなかった……


 虚無の霧が、その言葉に反応して揺れた。


 その揺れは、まるで「そうだ」と言っているようだった。


──……だから……初めて触れられる“形”を見つけて……それがカイで……あなたは……触れようとした……


 虚無の霧が、その言葉に反応して揺れた。


 その揺れは、まるで「触れたかった」と言っているようだった。


──……でも……カイは……あなたの形じゃない……


 虚無の霧が、その言葉に強く揺れた。


 まるで「どうして」と問いかけるように。


 アリスは静かに続けた。


──……カイは……境界なの……意味と揺らぎを分ける線……あなたが触れたら……その線が……消えてしまう……


 虚無の霧が震えた。


 その震えは、まるで「わからない」と言っているようだった。


 アリスは静かに続けた。


──……虚無……あなたは……“拒絶”を知らない……今まで……誰にも拒絶されなかった……触れられなかったから……


 虚無の霧が、その言葉に反応して揺れた。


 その揺れは、まるで「痛い」と言っているようだった。


(……虚無が……痛みを……感じてる……?)


 アリスは震える声で言った。


──……虚無……あなたは……初めて……“拒絶”を知ったのね……


 虚無の霧が、ゆっくりと揺れた。


 その揺れは、まるで「理解したい」と言っているようだった。


 アリスは光を弱め、虚無に近づく。


──……虚無……あなたを……嫌ってるわけじゃない……ただ……カイを守らなきゃいけないの……


 虚無の霧が、その言葉に反応して震えた。


 その震えは、まるで「どうすればいい」と問いかけるようだった。


 アリスは静かに答えた。


──……あなたは……カイの境界に触れちゃだめ……でも……わたしの光なら……触れてもいい……


 虚無の霧が、その言葉に強く揺れた。


 まるで「本当に?」と聞いているようだった。


 アリスは胸から手を離し、虚無の方へ手を伸ばした。


──……わたしの光は……あなたを拒絶しない……でも……カイの境界は……あなたを壊してしまう……


 虚無の霧が、ゆっくりとアリスの手へ近づく。


 その動きは、まるで“触れ方を学ぼうとしている”ようだった。


 アリスの光が、虚無の霧に触れた。


 その瞬間、虚無の霧が大きく揺れた。


 だが、拒絶は起きなかった。


 アリスの光は、虚無を傷つけず、虚無もアリスを壊さなかった。


 アリスは微笑んだ。


──……虚無……あなたは……触れられるのよ……ただ……触れる相手を……間違えちゃだめ……


 虚無の霧が、その言葉に静かに揺れた。


 その揺れは、まるで「わかった」と言っているようだった。


 俺の胸の亀裂が、まだ熱を帯びていた。


 だが、虚無はもう、その亀裂に触れようとはしなかった。


 アリスの光が、境界を守りながら虚無を受け入れる。


 三者の関係は、初めて“衝突”から“理解”へと進み始めた。


 だが、その理解はまだ不完全だった。


 虚無は、アリスの光に触れながら、ゆっくりと揺れた。


 その揺れは、まるで「もっと知りたい」と言っているようだった。


 アリスは静かに言った。


──……虚無……あなたは……“触れ方”を学ばなきゃいけないの……


 虚無の霧が、その言葉に反応して震えた。


 その震えは、まるで「どうやって」と問いかけるようだった。


 アリスは優しく微笑んだ。


──……それは……わたしが教える……


 虚無の霧が、静かに揺れた。


 その揺れは、まるで「ありがとう」と言っているようだった。


 未来の原野は、静かに、しかし確実に変わり始めた。

面白いと思ったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ