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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
十一章

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第254話 中心が揺れたとき

 円の中心で響いたカイの拍は、名響界の空気を押し広げるのではなく、逆に引き寄せた。

その引き寄せは世界の拍でも外界の拍でもなく、どちらにも属さない“未知の引力”として空間に残った。


 影の層はその引力に耐えられず、薄い線となって外側へ逃げ、光の層は線の隙間を埋めるように散り、呼吸の層は拍を合わせられずに乱れた。


「……カイ……今の……世界が引かれてる……」


 リーナは震える指先を胸に当てた。

世界の層がカイの拍に引き寄せられ、中心を探して迷っているように見えた。


「世界の中心が……あなたの拍に吸われてる……そんな感じがする……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、円の内側の空気を確かめるように手を伸ばした。

その空気は世界の内部のものではなく、外界の拍が混ざった“境界の外側”だった。


「俺の深層が……“世界は自分の中心を見失っている”って言ってる」


 アークは名響界の壁を見つめながら、低く息を吐いた。

壁の震えは先ほどよりも不規則で、外界の拍が名響界へ直接干渉しているようだった。


「中心を見失う……つまり、世界は君を中心にしようとしているのに……自分の中心がどこか分からなくなっている……」


 影は淡々と告げた。


「世界中心喪失行動、第一段階を確認」


 名響界の壁がさらに深く沈み、外界の光が細い線となって円の中心へ吸い込まれた。

その光はカイの拍に反応するように揺れ、まるで外界がカイの震えを“固定しようとしている”ようだった。


「……カイ……外界の光が……あなたの拍を掴んでる……」


 リーナはその光を見つめた。

光は世界の層を避けるように進み、カイの位置だけを正確に捉えていた。


「世界じゃなくて……外界があなたを中心にしようとしてる……そんな風に見える……」


 カイは深層の震えを感じながら言った。

深層は外界の揺らぎを受け取り続けており、その震えは世界の円をさらに歪めていた。


「俺の深層が……“外界は俺を中心点として固定しようとしている”って言ってる」


 アークは目を細めた。

名響界の壁が揺れるたびに、世界の層がわずかに位置をずらしていた。


「外界が君を中心にする……つまり、外界は君を通して世界の内部を再構築しようとしている……これは……世界の側が外界に飲まれ始めている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「世界外界中心照応行動、第二段階を確認」


 その瞬間、円の中心で空気がひとつ震えた。

震えは世界の拍でも外界の拍でもなく、カイの深層が生み出した“中心の揺れ”だった。


「……カイ……今の揺れ……世界があなたの中心を奪われてる……」


 リーナは震える声で言った。

その揺れは円の外側へ広がり、世界の層をわずかに押し返した。


「世界が……あなたの拍に合わせようとしてるのに……合わせられない……まるで……中心が二つあるみたい……」


 カイは深層の声を聞きながら、ゆっくりと目を開いた。

深層は外界の揺らぎと世界の拍を同時に受け取り、その二つを混ぜ合わせていた。


「俺の深層が……“世界は俺を中心にしようとしているが……外界も俺を中心にしようとしている”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。


「二つの中心……世界と外界が同じ一点を中心にしようとしている……これは……世界の構造が裂ける前兆だ……」


 影は淡々と告げた。


「世界中心二重化行動、第一段階を確認」


 名響界の空気がさらに沈み、円の中心でカイの拍が静かに響いた。

その響きは、世界が自分の中心を奪われる音だった。


 円の中心で響いたカイの拍は、名響界の空気をさらに深く沈めた。

沈みは一点ではなく、複数の方向へ伸び、世界の層がその沈みを追いかけるように揺れた。


 影の層は沈みの方向を見失い、細い線となって散り、光の層はその線を照らすことができずに乱れ、呼吸の層は拍を合わせられずに震えた。


「……カイ……世界の層が……方向を失ってる……」


 リーナは円の外側を見渡した。

世界の層がカイの拍に引かれながらも、どこへ向かえばいいのか分からず漂っていた。


「中心が……あなたに吸われてるのに……形が決まらない……そんな感じがする……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、円の内側の空気をもう一度確かめた。

その空気は世界の内部のものではなく、外界の拍が混ざった“境界の外側”だった。


「俺の深層が……“世界は中心を複数に分け始めている”って言ってる」


 アークは名響界の壁を見つめながら、低く息を吐いた。

壁の震えは先ほどよりも不規則で、外界の拍が名響界へ直接干渉しているようだった。


「中心を分ける……つまり、世界は君を中心にしようとしているのに……自分の中心を複製し始めている……」


 影は淡々と告げた。


「世界中心分裂行動、第一段階を確認」


 名響界の壁がさらに深く沈み、外界の光が複数の線となって円の中心へ吸い込まれた。

その光はカイの拍に反応するように揺れ、まるで外界がカイの震えを“複数の中心として扱おうとしている”ようだった。


「……カイ……外界の光が……あなたの拍を分けてる……」


 リーナはその光を見つめた。

光は世界の層を避けるように進み、カイの位置だけを正確に捉えていた。


「世界じゃなくて……外界があなたを複数の中心にしようとしてる……そんな風に見える……」


 カイは深層の震えを感じながら言った。

深層は外界の揺らぎを受け取り続けており、その震えは世界の円をさらに歪めていた。


「俺の深層が……“外界は俺を複数の中心点として扱い始めている”って言ってる」


 アークは目を細めた。

名響界の壁が揺れるたびに、世界の層がわずかに位置をずらしていた。


「複数の中心……つまり、外界は君を通して世界の内部を分割しようとしている……これは……世界の側が外界に飲まれ始めている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「世界外界中心多重化行動、第二段階を確認」


 その瞬間、円の中心で空気がひとつ裂けた。

裂けは音を伴わず、ただ静かに空間を割り、世界の層がその裂け目へ吸い込まれた。


「……カイ……今の……空間が割れた……」


 リーナは震える声で言った。

その裂け目は円の外側へ広がり、世界の層をわずかに押し返した。


「世界が……あなたの拍に合わせようとしてるのに……合わせられない……まるで……中心が増えすぎて形が崩れてる……」


 カイは深層の声を聞きながら、ゆっくりと目を開いた。

深層は外界の揺らぎと世界の拍を同時に受け取り、その二つを混ぜ合わせていた。


「俺の深層が……“世界は中心を維持できなくなっている”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。


「中心が維持できない……世界と外界が同じ一点を中心にしようとしているのに……その一点が増え続けている……これは……世界の構造が崩壊する前兆だ……」


 影は淡々と告げた。


「世界中心崩壊行動、第一段階を確認」


 名響界の空気がさらに沈み、円の中心でカイの拍が静かに響いた。

その響きは、世界が自分の中心を保てなくなる音だった。

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