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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
七章

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第168話 影が変える出会い

 二つの気配が近づき始めたあと、空気の奥に残った“交わりの兆し”は、やがて別の形へと変わり始めた。


 それは揺れでも震えでもなく、ただ、世界の奥で“何かが流れ出す”ような気配だった。

まるで見えない川が静かに生まれたような、そんな感触。


 リーナはその気配に気づき、思わず胸に手を当てた。


「……ねぇ……なんか……空気の奥で……流れてる感じがする……水じゃないけど……何かが動いてる……」


 カイはゆっくりと息を吸い、その流れを確かめるように目を閉じた。


「わかる。誰かの気持ちが……どこかへ向かってる。まだ届いてないけど……流れ始めてる感じがする」


 影が低く呟いた。


「……流通層が動き始めたな。交差のあとに反応するのは、世界の“流れの向き”だ」


 アークは驚いたように目を見開いた。


「流通層まで……?カイの影、どこまで世界を動かす気なの……?」


 リーナは不安そうにカイを見る。


「流通層って……何……?また新しい層……?」


 セイルは静かに頷いた。

その目はいつもより深く、どこか遠くを見ていた。


「世界はね、出会いが近づいたあと、その出会いが“どんな流れを生むか”を決めるんだ。それが流通層。人の思いや行動が、どこへ向かうかを調整する場所だよ」


 リーナは胸に手を当てた。


「……じゃあ……カイの影が触れた出来事……誰かの行動の向きまで変えちゃうってこと……?」


 カイは少し戸惑ったように笑った。


「そんな大げさなこと……俺にできるのかな……」


 リーナは首を振った。


「できるよ。だって……世界が動いてる。カイの影が……そのきっかけになってるんだよ」


 その瞬間、名の座標核の周囲に“流れの兆し”が生まれた。


 粒でも線でもなく、ただ、空気の奥に“誰かの思いがどこかへ向かっていく”ような感触が漂った。


 影がその兆しを感じ取り、静かに言った。


「……今、ひとつの思いが動き始めた。まだ届いてはいないけれど……世界がその行き先を決めようとしている」


 リーナは息を呑んだ。


「行き先を……決める……?どういうこと……?」


 アークは説明した。


「世界はね、人の思いがどこへ向かうかを、ときどき調整するんだよ。届くべき場所に届くように。流通層は、その“流れの方向”を作る場所なんだ」


 カイは驚いたように目を見開いた。


「じゃあ……俺の影が……誰かの思いの行き先を変えてるってこと……?」


 セイルは優しく頷いた。


「そう。思いの流れはね、未来の形を大きく変えるから。影が触れた出来事が、誰かの思いを少しだけ別の方向へ向けることがあるんだよ」


 リーナは胸を押さえた。


「……なんか……すごい……カイの影……そんなことまで……」


 カイはゆっくりと息を吐いた。


「……誰かの思いが良い方向へ向かうなら……それでいいよ。俺の影が……そのきっかけになれるなら」


 その瞬間、空気の奥で“流れが加速する”感触が生まれた。


 それは音でも光でもなく、ただ、世界のどこかで誰かの思いが新しい方向へ向かい始めた そんな気配だった。


 影が静かに言った。


「……流れが強くなった。世界が行き先を確定しようとしている」


 リーナは胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……カイの影……本当に誰かの思いの向きを変えてる……」


 カイはその気配を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。


「……誰かが前を向けるなら……それだけで十分だよ」


 空気の奥で、流れがさらに広がった。


 それはこれまでのどの現象とも違い、ただ静かに、世界のどこかで、ひとつの思いが新しい場所へ向かい始めていた。


 流れが新しい方向へ向かい始めたあと、空気の奥に残った“動きの痕跡”は、やがて別の気配へと変わり始めた。


 それは流れでも震えでもなく、ただ、世界の奥で“何かが結びつこうとしている”ような気配だった。

まるで見えない糸がゆっくりと近づいていくような、そんな感触。


 リーナはその気配に気づき、思わず息を止めた。


「……ねぇ……今の……誰かの思いが……何かに触れようとしてる感じがする……なんだろ……この感じ……」


 カイはゆっくりと目を開け、空気の奥を見つめた。


「わかる。流れた思いが……どこかで“何かとつながろうとしてる”。まだ形にはなってないけど……近づいてる気配がある」


 影が低く呟いた。


「……接続層が動き始めたな。流れのあとに反応するのは、世界の“結びつき”だ」


 アークは驚いたように目を見開いた。


「接続層まで……?カイの影、世界の構造にまで手を伸ばしてるじゃない……」


 リーナは不安そうにカイを見る。


「接続層って……何……?また新しい層……?」


 セイルは静かに頷いた。

その目はいつもより柔らかく、どこか遠くを見ていた。


「世界はね、思いが流れたあと、その思いが“どこで誰と結びつくか”を決めるんだ。それが接続層。未来の出来事と人の思いをつなぐ場所だよ」


 リーナは胸に手を当てた。


「……じゃあ……カイの影が触れた思い……誰かの出来事と結びつこうとしてるってこと……?」


 カイは少し戸惑ったように笑った。


「そんな大げさなこと……俺にできるのかな……」


 リーナは首を振った。


「できるよ。だって……世界が動いてる。カイの影が……そのきっかけになってるんだよ」


 その瞬間、名の座標核の周囲に“結びつきの兆し”が生まれた。


 粒でも線でもなく、ただ、空気の奥に“二つの気配が互いを探している”ような感触が漂った。


 影がその兆しを感じ取り、静かに言った。


「……今、ひとつの思いが、未来のどこかの出来事と近づいている。まだ触れてはいないけれど……世界がその距離を調整している」


 リーナは息を呑んだ。


「距離を……調整……?どういうこと……?」


 アークは説明した。


「世界はね、思いと出来事が出会うタイミングを、ときどき調整するんだよ。早すぎても遅すぎてもいけないから。接続層は、その“ちょうどいい瞬間”を作る場所なんだ」


 カイは驚いたように目を見開いた。


「じゃあ……俺の影が……誰かの思いと出来事のタイミングを変えてるってこと……?」


 セイルは優しく頷いた。


「そう。思いと出来事が結びつく瞬間は、未来の形を大きく変えるから。影が触れた出来事が、誰かの思いを別の出来事へ導くことがあるんだよ」


 リーナは胸を押さえた。


「……なんか……すごい……カイの影……そんなことまで……」


 カイはゆっくりと息を吐いた。


「……誰かの思いが良い出来事と結びつくなら……それでいいよ。俺の影が……そのきっかけになれるなら」


 その瞬間、空気の奥で“二つの気配が触れかける”感触が生まれた。


 それは音でも光でもなく、ただ、世界のどこかでひとつの思いが、ひとつの出来事へ向かって伸びていく そんな気配だった。


 影が静かに言った。


「……接続が始まった。世界が二つの流れを合わせようとしている」


 リーナは胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……カイの影……本当に誰かの思いと出来事を結びつけてる……」


 カイはその気配を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。


「……誰かが良い未来を迎えられるなら……それだけで十分だよ」


 空気の奥で、二つの気配がさらに近づいた。


 その近づき方は、これまでのどの現象とも違い、ただ静かに、しかし確実に、世界のどこかで、ひとつの思いがひとつの出来事と結びつこうとしていた。

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