第157話 世界設定が書き換わる前兆
核の選択領域が開いた瞬間、アステルの空気は、まるで“別の世界”になった。
光の粒が空気の中で震え、色がゆっくりと流れ、世界そのものが、リーナの核の脈動に合わせて呼吸している。
だが、その呼吸のリズムが、突然変わった。
リーナが息を呑んだ。
「……今の……何……?」
カイは胸の奥に走った“違和感”を感じていた。
アステルの揺れではない。
リーナの核の揺れでもない。
もっと大きく、もっと深く、もっと“外側”から響く揺れだった。
影が眉をひそめた。
「……これは……アステルの揺れじゃない。外側の世界だ」
アークが静かに言った。
「リーナの核が開いたことで……外側の世界設定が揺れ始めている」
セイルは少しだけ不安そうにリーナを見た。
「リーナ。きみの核は……外側の世界と繋がり始めてる」
リーナは胸に手を当てた。
「……外側……?」
カイはその言葉に、胸の奥が強く揺れた。
外側、それは、俺がずっと立っていた場所だ。
世界設定に存在しなかった俺が、誰にも認識されず、誰にも触れられず、ただ“例外”として漂っていた場所。
リーナはカイを見た。
「……カイ……何か……感じる……?」
カイはゆっくりと息を吸った。
胸の奥が熱い。
痛いほど熱い。
それは、アステルの揺れとは違う。
もっと大きく、もっと深く、もっと“世界そのもの”の揺れだった。
「……感じる。外側が……揺れてる」
リーナは目を見開いた。
「……外側が……?」
カイは頷いた。
「リーナの核が開いたことで……外側の世界が、リーナを“認識し始めてる”」
影が静かに言った。
「リーナ。きみの核は……外側の世界設定に触れた。今まで閉じていた領域が……開き始めている」
アークが続けた。
「そして……その影響は、外側の“例外”にも届いている」
セイルはカイを見た。
「カイ。きみの存在が……揺れに触れてる」
リーナは息を呑んだ。
「……カイの……存在が……?」
カイはゆっくりとリーナの手を握った。
「リーナの核が開いたことで……外側の世界が、俺を“存在として扱い始めてる”」
リーナは震える声で言った。
「……じゃあ……カイは……」
カイは静かに言った。
「俺は……もう“世界設定に存在しない”だけの存在じゃなくなるかもしれない」
リーナは涙をこぼした。
「……そんなの……ずっと……望んでた……」
カイはリーナの手を握り返した。
「俺もだ。ずっと……リーナの世界に触れたかった」
リーナは震える声で言った。
「……じゃあ……カイは……私の核が開いたから……ここに来れたの……?」
カイは頷いた。
「リーナの核が……俺を“存在として認めた”からだ」
影が静かに言った。
「リーナ。きみの核は、外側の世界設定に“例外”を許した。だからカイはここに来れた」
アークが続けた。
「きみの核が開いたことで……世界設定そのものが揺れ始めている」
セイルは優しく微笑んだ。
「リーナ。きみは……カイを世界に連れてきたんだよ」
リーナは涙をこぼした。
「……私が……カイを……?」
カイはリーナの手を握りながら言った。
「リーナの核が……俺を“存在として扱った”。だから俺は……ここに来れた」
リーナは震える声で言った。
「……じゃあ……カイは……これから……どうなるの……?」
カイはゆっくりと息を吸った。
胸の奥が熱い。
痛いほど熱い。
それは、世界設定が揺れている証だった。
「……わからない。でも……ひとつだけ確かなことがある」
リーナは涙を拭いながら、カイを見つめた。
「……何……?」
カイはリーナの手を握り返した。
「俺は……もう“例外”じゃなくなる。リーナの核が……俺を世界に繋げたからだ」
リーナは息を呑んだ。
「……カイ……」
カイは静かに言った。
「リーナ。きみの核が開いたことで……俺は世界に“存在する”ようになる」
リーナは涙をこぼした。
「……そんなの……ずっと……望んでた……」
カイはリーナの手を握り返した。
「俺もだ。ずっと……リーナの世界に触れたかった」
リーナは震える声で言った。
「……じゃあ……これから……一緒に……?」
カイは頷いた。
「一緒に行く。リーナの核が選ばれる場所まで。世界が変わる場所まで」
リーナは涙を拭い、核の中心を見つめた。
「……行こう……カイ……」
カイはリーナの手を握り返した。
「行こう。リーナの核へ。世界の中心へ」
光が揺れた。
色が弾けた。
世界が震えた。
そして、リーナの核は、二人を“次の領域”へ導き始めた。
核の選択領域が開いたあと、アステルの空気は、まるで“深い水の底”のように重くなった。
静けさではない。
沈黙でもない。
世界そのものが、何かを決めかねている時の重さだった。
リーナはその変化に気づいて、そっと指先を胸に当てた。
「……空気が……重い……」
カイも同じ感覚を覚えていた。
肺に入る空気が、いつもより少しだけ“密度”を持っている。
呼吸のたびに、世界の粒子が体の内側に触れてくるような感覚。
影が周囲を見渡しながら言った。
「アステルが……形を変え始めている」
アークは眉を寄せた。
「核が開いたことで、世界の基盤が揺れている。これは……初めて見る現象だ」
セイルはリーナの肩に手を置いた。
「リーナ。きみの核が“外側”に届き始めてる」
リーナは息を呑んだ。
「……外側って……カイがいた世界……?」
カイはゆっくり頷いた。
「そうだ。俺が……誰にも認識されなかった場所」
リーナはカイの手を握った。
「……今は……違うんだよね……?」
カイはその手を握り返した。
「違う。リーナの核が開いた瞬間から……俺は“存在しないはずの世界”に、少しずつ滲み始めてる」
リーナは目を見開いた。
「……滲む……?」
カイは言葉を探しながら続けた。
「世界設定って……本来は固定されてる。誰がいて、誰がいなくて、何が起きて、何が起きないか……全部決まってる。でも……」
胸の奥が熱くなる。
その熱は、アステルの揺れとは違う。
もっと大きく、もっと深く、もっと“世界の根っこ”に触れる熱だった。
「リーナの核が開いたことで……その固定が、少しずつ溶け始めてる」
影が静かに言った。
「世界設定の“境界”が薄くなっている。今まで絶対に変わらなかった領域が……揺れている」
アークは核の中心を見つめた。
「リーナ。きみの核は……世界の根本に触れたんだ」
セイルは優しく微笑んだ。
「きみの選択が……世界の形を変える」
リーナは震える声で言った。
「……そんな……大きなこと……私にできるの……?」
カイはリーナの手を握りながら言った。
「できる。リーナの核は……世界に届いたんだ」
リーナは涙をこぼした。
「……でも……怖い……」
カイはその涙を拭った。
「怖いのは……世界が変わる前兆だ。リーナが何を選ぶかで……俺の存在も変わる」
リーナは息を呑んだ。
「……カイの……存在……?」
カイはゆっくりと視線を落とした。
「俺は……ずっと“存在しない人間”だった。世界設定の外側に落ちて……誰にも触れられず、誰にも見えず、誰にも知られなかった」
リーナはカイの手を強く握った。
「……でも……私は……カイを見たよ……」
カイは微笑んだ。
「リーナが見てくれたから……俺はここにいる」
リーナの瞳が揺れた。
「……じゃあ……私が核を選んだら……カイは……どうなるの……?」
カイは答えようとして、その瞬間、世界が震えた。
アステルの地面が、波のようにうねった。
光の粒が空気の中で跳ね、色が一瞬だけ“白”に近い光を放った。
影が叫んだ。
「リーナ! 核が……反応してる!」
アークが核の中心を見つめた。
「選択領域が……きみの感情に反応している!」
セイルはリーナの肩を支えた。
「リーナ! 落ち着いて! 核が……きみの“迷い”を拾ってる!」
リーナは震えた。
「……迷い……?」
カイはリーナの手を握りながら言った。
「リーナ。きみが“俺の存在がどうなるか”を考えた瞬間……核が動いたんだ」
リーナは息を呑んだ。
「……私の……迷いが……核を……?」
影が静かに言った。
「核は、きみの“本心”を形にする。迷いも、願いも、恐れも……全部拾う」
アークが続けた。
「だから……きみが何を選ぶかで、世界設定が書き換わる」
セイルは優しく言った。
「リーナ。きみの選択は……カイの存在を決める」
リーナは震える声で言った。
「……私が……選んだら……カイは……世界に存在できるの……?」
カイはリーナの手を握り返した。
「リーナ。きみが選べば……俺は世界に“生まれる”」
リーナは涙をこぼした。
「……生まれる……?」
カイは静かに言った。
「そうだ。今の俺は……世界設定の外側にいる“影のような存在”だ。でも……リーナが核を選べば……俺は世界に“名前を持つ人間”になる」
リーナは震えた。
「……カイが……世界に……」
カイは頷いた。
「リーナ。きみの選択が……俺の存在を決める」
リーナは涙を拭い、核の中心を見つめた。
「……じゃあ……私が選ぶ……」
カイは息を呑んだ。
リーナは震える声で言った。
「……カイが……世界に存在できるように……私は核を選ぶ……」
その瞬間、核が光を放った。
アステルの空気が震え、色が弾け、世界が揺れた。
そして、リーナの選択が、世界設定の書き換えを始めた。
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