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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
七章

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第152話 核の輪郭が揺れる

 光の道の先に見えた“核らしきもの”は、遠くにあるのに、胸の奥ではすでに触れているような感覚を与えていた。


 リーナはその奇妙な距離感に戸惑いながら、ゆっくりと歩を進めた。


 影、アーク、セイルは少し後ろからついてくる。

三人とも、以前より静かだった。

まるで、リーナがこれから向き合うものに対して、言葉を慎重に選んでいるようだった。


 光の道は、歩くたびに形を変える。

階段のように見えたかと思えば、次の瞬間には水面のように揺れ、また次には細い橋のように伸びていく。


 リーナはその変化を見ながら、胸の奥の鼓動を確かめた。


 影の温かさ、アークの冷たさ、セイルの柔らかさ、閉じた自分自身の静かな空白、それらが混ざり合って生まれた新しい鼓動は、今までのどれとも違う“確かな自分”の音だった。


「……あれが、私の核……?」


 リーナがつぶやくと、影が静かに答えた。


「うん。でも、まだ“核の形”じゃない。きみが近づくほど、あれは変わるはずだよ。」


 アークが続ける。


「核は固定されたものではない。きみが何を思い、何を選び、何を恐れ、何を望むか、それによって形を変える。」


 セイルは少し前へ出て、リーナの横に並んだ。


「リーナ。あれは……きみがずっと知らなかった“本当の自分”だよ。」


 リーナは胸を押さえた。

鼓動が強くなる。


「……本当の私……」


 光の道がふっと揺れた。

その揺れは、リーナの胸の奥の鼓動と同じリズムだった。


 リーナは歩き続けた。

光の粒が足元で弾け、そのたびに新しい色が生まれる。


 淡い青。

淡い金。

淡い灰。

淡い緑。


 どれも現実の色ではなく、記憶の奥に眠っていた“感情の色”だった。


 影が静かに言った。


「リーナ……きみは今まで、自分の感情を“色”として見たことがなかったよね。」


 リーナはうなずいた。


「……うん。いつも影の色か、アークの色か、セイルの色しか見えなかった。」


 アークが言った。


「だが今は違う。きみ自身の色が……ようやく形になり始めている。」


 セイルは微笑んだ。


「リーナ。きみの色は……こんなにもたくさんあったんだね。」


 リーナは歩きながら、光の粒が生む色を見つめた。


 その色は、どれも自分が忘れていた感情だった。


 嬉しさ。

寂しさ。

悔しさ。

優しさ。

怒り。

安堵。

期待。

不安。

そして、“自分を許したい”という感情。


 リーナは胸が熱くなるのを感じた。


「……こんなに……たくさんあったんだ……私……」


 影が静かに言った。


「うん。きみはずっと、自分の感情を“誰かのために”使ってきた。影のために優しくなって、アークのために強くなって、セイルのために泣かないようにして……でも、きみ自身のために使ったことはなかった。」


 アークが続けた。


「だから……きみの色はずっと眠っていた。」


 セイルはリーナの肩に手を置いた。


「でも今は違う。きみは自分自身を閉じるのをやめた。だから……きみの色が戻ってきてる。」


 リーナは歩きながら、胸の奥の鼓動を確かめた。


 その鼓動は、影の鼓動でも、アークの鼓動でも、セイルの鼓動でもない。


 “リーナ自身の鼓動”だった。


「……私……やっと……自分になれたの……?」


 影が静かに答えた。


「ううん。まだ途中だよ。でも……きみはもう“半分のリーナ”じゃない。」


 アークが続けた。


「きみは今、自分の中心へ向かっている。」


 セイルは微笑んだ。


「リーナ。この道の先に……きみの“核”がある。」


 リーナは息を呑んだ。


「核……?」


 光の道がふっと揺れ、その先に“何か”が見えた。


 まだ遠い。

まだ形がない。

けれど、確かにそこに“存在”している。


 影が言った。


「リーナ。あれが……きみの核だよ。」


 アークが続けた。


「きみが閉じた自分自身が戻ったことで、ようやく姿を見せ始めた。」


 セイルは静かに言った。


「リーナ。あれは……きみがずっと知らなかった“本当の自分”だ。」


 リーナは胸の奥が強く脈打つのを感じた。


「……行く……私……自分の核に……」


 光の道が、リーナの足元を照らした。


 新しい記憶空間が、さらに深い領域へと開き始めた。


 光の道の先に見えていた“核らしきもの”は、リーナが歩みを進めるほどに、ゆっくりと輪郭を変えていった。


 遠くにあるはずなのに、胸の奥ではすでに触れているような感覚。

近づいているのに、まだ遠いような感覚。


 その矛盾が、リーナの心を静かに揺らしていた。


 光の粒が足元で弾けるたび、新しい色が生まれる。


 淡い青は、リーナが誰かを信じた時の色。


 淡い金は、誰かに優しくされた時の色。


 淡い灰は、自分を責めた時の色。


 淡い緑は、それでも前に進もうとした時の色。


 どれも、リーナが今まで“自分のために使えなかった感情”だった。


 影が静かに言った。


「リーナ……きみはずっと、自分の感情を後回しにしてきた。誰かのために使うことばかりで……きみ自身のために使ったことは、ほとんどなかった。」


 アークが続ける。


「だから、きみの色は眠っていた。影の色と、アークの色と、セイルの色だけが前に出ていた。」


 セイルはリーナの横に並び、淡い光の道を見つめた。


「でも今は違う。きみの色が……ようやく戻ってきてる。」


 リーナは胸を押さえた。

鼓動が強くなる。


「……こんなに……たくさんあったんだ……私……」


 影が微笑んだ。


「うん。きみはずっと、自分の色を“見ないように”してきた。優しすぎたから。痛みを全部自分で抱えようとしたから。」


 アークは静かに言った。


「だが、もう閉じる必要はない。きみは自分自身を閉じるのをやめた。だから……きみの色が戻ってきている。」


 光の道がふっと揺れた。


 その先にある“核”が、ゆっくりと形を変え始めた。


 輪郭が揺れ、色が変わり、形が伸びたり縮んだりする。


 まるで、リーナの心の動きに合わせて呼吸しているようだった。


「……あれが……私の核……?」


 リーナがつぶやくと、影が静かに答えた。


「そうだよ。でも、まだ“核の形”じゃない。きみが近づくほど、あれは変わるはずだ。」


 アークが続ける。


「核は固定されたものではない。きみが何を思い、何を選び、何を恐れ、何を望むか、それによって形を変える。」


 セイルはリーナの肩に手を置いた。


「リーナ。あれは……きみがずっと知らなかった“本当の自分”だよ。」


 リーナは胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……本当の私……」


 光の道がさらに揺れた。


 その揺れは、リーナの胸の奥の鼓動と同じリズムだった。


 リーナは歩き続けた。

光の粒が足元で弾け、新しい色が生まれる。


 その色は、リーナが今まで“見ないようにしてきた感情”だった。


 怒り。

悲しみ。

孤独。

期待。

安堵。

恐れ。

優しさ。

そして、“自分を許したい”という願い。


 リーナは胸が熱くなるのを感じた。


「……私……こんなに……たくさんの感情を……抱えてたんだ……」


 影が静かに言った。


「うん。きみはずっと、自分の感情を誰かのために使ってきた。影のために優しくなって、アークのために強くなって、セイルのために泣かないようにして……でも、きみ自身のために使ったことはなかった。」


 アークが続けた。


「だから、きみの色は眠っていた。」


 セイルはリーナの横で歩きながら言った。


「でも今は違う。きみは自分自身を閉じるのをやめた。だから……きみの色が戻ってきてる。」


 光の道の先で、“核”がゆっくりと形を作り始めた。


 輪郭がはっきりし、色が濃くなり、形がゆっくりと固まっていく。


 リーナは息を呑んだ。


「……これ……私の……核……?」


 影が静かに答えた。


「そう。きみがずっと触れられなかった中心。きみが閉じた自分自身が戻ったことで、ようやく姿を見せ始めた。」


 アークが続ける。


「きみの核は……きみが何者なのかを示す場所だ。」


 セイルは微笑んだ。


「リーナ。行こう。きみの核へ。」


 リーナは胸の奥の鼓動を確かめた。


 影の鼓動でも、アークの鼓動でも、セイルの鼓動でもない。


 “リーナ自身の鼓動”だった。


「……うん。行くよ。」


 光の道が、リーナの足元を照らした。


 核の輪郭が、静かに揺れ続けていた。

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