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全身麻痺の俺は回復のためにVRMMOの世界で最強を目指す  作者: 和泉大輝
第2章. 廃墟都市に灯る青い謎

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4.森へ、廃墟都市への帰路

門を抜けると、空気が少しだけひんやりした。

街のざわつきが背中へ遠ざかり、前には東へ続く静かな道が伸びている。


しばらく走ってから、速度を落とす。

振り返っても、門から出てくる人影はなかった。


「……誰も来ないね」

ハナも後ろを確認する。


「せやな。今のうちに、できるだけ距離を稼いどこか」


「うん」

ハナは青い依頼書を抱え直し、俺の隣へ並んだ。


街から離れるにつれて、道を歩く人も減っていく。

石畳はやがて途切れ、足元が柔らかい土へ変わった。


「わ、なんか急に静か」

ハナがもう一度、街の方を見る。


「音が減っただけやで」


「人がいないと、こんなに違うんだね」

少し名残惜しそうな声だった。


「さっきまで尾行までついて、人気者やったのにな」


「人気者の意味が違うよ」

ハナが小さく笑う。


少しだけ空気が緩んだ。

俺も周囲を見ながら、歩く速度を落とす。


「ねえ、道は覚えてるの?」

ハナが横から聞く。


「覚えてるで」

すぐに答える。


「ほんとに?」

疑う目やった。


「廃墟から来た時、太陽の位置見てたやろ」

俺は空を指す。

「今も東へ向かってる。このまま森を抜けたら、その先や」


ハナは空を見たあと、じっと俺を見る。


「……それ、前にも聞いた気がする」


「どの前や」


「高校二年の夏祭り」

ハナがにやっと笑う。

「花火の場所はこっちだって、自信満々に言ってたよね」


「ああ、あれか」


「それで、真逆の川に着いたよね?」


「……結果的にな」


ハナが吹き出す。


「結果的にじゃないでしょ。完全に迷ってたよ!」


「あれは、ハナが途中で止めたからやろ」

俺は軽く肩をすくめる。

「あのまま進んでたら着いてた」


「絶対うそ!」


笑っていたハナが、少しだけ真顔になる。


「方向音痴なのに、本当に大丈夫?」


「人混みの中は苦手やけど、こういう場所は別や」

俺は前方を指した。

「森の形、あそこだけ濃く見えるやろ」


ハナが目を細める。


「……ほんとだ。ちょっと暗く見える」


「あそこを抜ければ廃墟や」

俺が言うと、ハナはようやく納得したように頷いた。


「それなら、たぶん大丈夫かな」


「たぶん言うなや」


歩くほどに草が増え、道の両側へ木が迫ってくる。

風も少しずつ冷たくなっていた。


「ねえ」

ハナが前を見たまま聞く。

「今日、どこで寝るの?」


「森の中やな。見通しのええ場所を探して、そこで野宿や」


「野宿かぁ……」

声が少し揺れる。


「初めてやろ?」


「うん」

それでも、ハナは少し笑った。

「ちょっと楽しみかも。おしゃべりとかしようね」


「火を起こして、飯食って、寝るだけやで」


「それが楽しそうなんじゃん」


「蛇とか出えへんかったらええけどな」


「そういうこと言わないでよ」

ハナが嫌そうに周囲を見る。


そのまま進むと、道の先で木々が一気に密集した。

葉が空を覆い、さっきまで広く見えていた空が細くなる。


「ここから森や」

俺が足を止める。


ハナも深く息を吸い、小さく頷いた。


「うん。行こう」


二人で森の中へ入る。

葉の擦れる音と、湿った土の匂いが押し寄せてきた。


しばらく進んだ時、草の奥で何かが走った。


一つやない。

左右から、ほとんど同時に近づいてくる。


(……二匹)

(速いな)


「ハナ、二匹おる!」


低い位置から、二つの影が飛び出した。

蛇の魔物や。


細長い身体には黒と緑のまだら模様。

ぬめった皮膚が光り、口元から細い舌が出入りしている。


「言った直後に出てきたんだけど!」


「俺のせいちゃうやろ!」


一体目が俺へ突っ込んでくる。

地面すれすれを滑るような速さやった。


けど、軌道は読みやすい。

半歩だけ横へずれ、身体を流すようにかわす。


《スキル取得:ステップ Lv1》


蛇が俺の横を抜ける。


「今や!」


「ウォーターボール!」

ハナの手から水弾が飛ぶ。


振り返ろうとした蛇の横腹に直撃した。

細い身体が大きく曲がり、動きが一瞬止まる。


踏み込む。

棍棒を両手で握り、そのまま上から振り下ろした。


鈍い音。

骨ごと潰す感触が腕へ返ってくる。


蛇の身体が地面へ叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


「やった……!」

ハナが弾んだ声を上げる。


「まだや!」

すぐに視線を切り替える。

「もう一匹来るで!」


同じように俺へ来る。

そう思った瞬間、蛇が大きく進路を変えた。


(そっち行くんか)


真っすぐ、ハナへ向かっている。


「ハナ、下がれ!」


地面を蹴り、二人の間へ割り込む。

棍棒を出すより、蛇の方がわずかに速かった。


牙が腕へ食い込む。


「っ……!」


焼けるような痛みが走った。

刺された場所から、熱が身体の奥へ広がっていく。


《スキル取得:毒耐性 Lv1》


「ダイキ!」

ハナの声が響く。


「大丈夫や!」


蛇が腕を離し、一度距離を取った。

低い姿勢のまま、次の攻撃を狙っている。


視界がわずかに揺れた。

指先も少しだけ鈍い。


(毒か。思ったより回るん速いな)


蛇が再び動く。

さっきより速い。


踏み込もうとした足が、わずかに遅れた。


「ウォーターボール!」

ハナが魔法を放つ。


けれど、焦ったせいか狙いがずれた。

水弾は蛇の横を抜け、木の幹へぶつかって散る。


その隙に、蛇が一気に距離を詰めてきた。


低い。

速い。


この身体では、もう追いつけへん。

避けようとすれば、後ろのハナへ届く。


なら。


(……ここや)


あえて動かない。

踏み込まず、その場で待つ。


牙が迫る。


俺は左足を前へ出した。


蛇の口が開く。

そのままブーツへ噛みついた。


がっ、と硬い音がする。

革越しに、牙が食い込もうとする力が伝わってきた。


(狙い通りや)


痛みはある。

けど、引かない。


《スキル取得:覚悟 Lv1》


蛇の動きが止まった。


「捕まえた」


棍棒を両手で握る。

ブーツへ噛みついた蛇の頭へ、そのまま振り下ろした。


鈍い音。

蛇の身体が大きく跳ねる。


まだ牙が外れない。


もう一度。

今度は、体重ごと叩き込む。


蛇の頭が地面へ押し潰され、細長い身体から力が抜けた。


《ポイズンスネークを撃破しました》

《レベルアップ Lv13→14》

《スキルレベルアップ 毒耐性 Lv1→2》

《スキルレベルアップ 打ち下ろし Lv3→4》


「……終わりや」


足を引くと、牙がブーツから外れた。

息を吐いた瞬間、身体が大きくふらつく。


棍棒を地面について、どうにか倒れずに踏みとどまった。


「ダイキ、大丈夫!?」

ハナが駆け寄ってくる。

「ヒール!」


柔らかな光が腕を包む。

牙の跡が塞がり、痛みが少しずつ引いていく。


けど、身体の奥に残った熱は消えない。

指先の痺れも残っていた。


「まだ毒が残ってる」


「もう一回!」

ハナがすぐに手をかざす。

「ヒール!」


再び光が身体へ染み込む。

じわじわと熱が引き、浅くなっていた呼吸も戻ってきた。


「……助かった」

俺は大きく息を吐く。


「ごめん。外した……」

ハナが悔しそうに唇を噛む。


「最初の一発で流れ作ってくれたやろ」

棍棒を支えにして立ち上がる。

「あれがなかったら、一匹目にもっと時間かかってた」


「でも、二匹目は……」


「あいつが急にハナ狙ったんや。しゃあない」

俺は軽く腕を動かしてみる。

「次は当てたらええ」


ハナは少しだけ顔を上げた。


「……ほんと?」


「ほんまや」

俺が頷くと、ようやく表情が少し緩んだ。


倒した蛇を見る。

黒と緑のまだら模様。


毒の残っていそうな牙。

細長い身体。


少しだけ考える。


「……これ、食えるんかな」


ハナが即座に顔をしかめた。


「絶対やだ!」


「焼いたら意外といけるかもしれんで」

棍棒で蛇を軽く指す。

「ウナギみたいな感じで」


「やめて。想像させないで!」


ハナが蛇から二歩ほど離れる。


「冗談やって」

俺は笑いながら手を振る。


もう一度だけ蛇を見る。


(……ほんまに、いけそうやけどな)


「行こか」


「うん……」

ハナはまだ少し引いた顔のまま頷いた。


俺たちは倒れた蛇を残し、森の奥へ歩き出した。

東の廃墟までは、まだ遠い。


___


ダイキ

職業 なし

レベル 13→14

スキル

打撃 Lv16、打ち下ろし Lv3→4

ダッシュ Lv1、ステップ Lv1

回避 Lv4、予測 Lv3

毒耐性 Lv2、覚悟 Lv1


ハナ

職業 なし

レベル 4→5

スキル

ウォーターボール Lv4→5

ヒール Lv1→2、プロテクション Lv1

ダッシュ Lv1

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