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マフィンの不思議で不可思議な物語  作者: キョナ
season2 貴方の不思議で不可思議な物語
12/30

ようこそ、不思議で不可思議な世界へ。

素敵な出会いが君を待ってる。

僕の鼓膜の遠くで知らないクラシックを誰かが演奏する音が聞こえた。美麗なテンポとメロディーだが、僕には遠い遠い世界で誰かが演奏しているようにしか感じなかった。

そして僕は少し前にイデアに言われたことを思い出す。


―――貴方の中に何かがいるっていうこととか。


僕は首を大きく横に振る。そんなはずはない。僕は前世は普通の人間だったはずなのだ。少なくともマフィンはそう言っていた。

でも、もしイデアが言うことが本当ならば。


マフィンは僕にその何か、いや怪物というものの存在を隠そうとしていることになる。そんなはずはない。僕と彼女は約束したんだ、お互い欺き合わない関係になろうと。

もしイデアの言うことが正しいならマフィンは僕に嘘をついたということになる。そんなの許せない、許せるはずはないんだけれど。

彼女が僕の事をもし思って僕を歯を食いしばりながら欺いているというのならば僕は彼女を責めることはどうしても出来そうになかった。

そんな時、インターホンが一回鳴った。きっと煙たしがカードを持って戻ってきたのだろうと思い動かずその場から返答する。

「入っても構いませんよ。カードを持ってきてくれたんですか?」

返事はない。ドアも開かない。どうしたのだろうと首を傾げてドアを開けにいくと、風の音が聞こえるかというスピードでドアは僕の前を通過した。危うく顔に当たりそうになる。

「煙たし、危ないじゃないか…」

急にドアを開けた煙たしを叱ってやろうとすると、目の前にはクスクスと笑みを浮かべる見知らぬ少女の顔があった。僕は他人にからかわれたのだろうかと少し半笑いになる。

「えっとー。君は?」

僕は見知らぬ少女に声をかけた。なんかこの言い回しは誘拐のようで嫌だが実質彼女が僕の部屋に来たのだから誘拐ではないだろう。

が、少女は確かに美しかった。虹色に輝く長髪は勿論、遠い世界を見つめているかのような真っ青な瞳。そして調った顔付きは元々の世界にいたならば余裕でアイドルとなるに相応しい美しさを兼揃えていた。

「空。私の名前は空」

透き通るような声だ。僕は少し唾を飲み込んだ。

「ああ、もしかして403に住む女の子だよね。話は聞いてるよ、点滴や紅蓮からね」

彼女はゆっくりと顔を僕に向けた。寝むそうな顔、優しそうな笑顔。それらはどこかで見たことがあるような気がするがはっきりとは思い出すことは出来ない。きっといつものようにデジャヴだろう。

そんなとき彼女は驚嘆の顔を僕に見せ付けて震えるような声で呟いた。その声も僕には懐かしく感じたわけだが、そんなことは今はどうでもいいことだった。


「お兄ちゃん?」


突然の彼女の宣言に少し僕の顔が強張った。そして直にゆっくりと顔に熱が篭っていくのを感じる。

「え?」

彼女は僕の胸に飛び込んできた。そして顔を僕の腹部の服に押し付けた。

「お兄ちゃん、ずっと会いたかった。元気にしてたの?やっぱりこの世界に連れて来られていたんだね」

「ごめん、君、誰?」

僕の発言に彼女は顔をあげて悲嘆な声で呟いた。

「お兄ちゃん?覚えてないの?」

「残念ながらだが僕は君の兄ではないよ?君のような素敵な妹がいればいいなとは思ったことはあったかもしれないけどね」

彼女は僕から離れてまた下を向いた。傷つけてしまっただろうかと僕は心配になる。が、彼女は晴々としたように僕に笑いかけた。

「ごめんなさい、私の人違いだったかもしれない」

「そうだったのかい?なら良かった」

「…私の名前は空。少しお話したいな」

僕は了承し彼女を中に招き入れる。彼女にしがみつかれた際、僕は恥ずかしいとか驚きの前になんだか懐かしい匂いを感じた。それは僕にとって落ち着く、懐かしい思い出のようだった。

「いらっしゃい、空ちゃん。夜行性じゃあなかったっけ?」

「ええ、夜行性ですが新しい住居者が増えましたので。わざわざ起きてきたんですよ」

「それは悪かったね。ところで空ちゃんはどうして今日のパーティーのような物に参加しなかったんだい?」

彼女はソファーで脚の膝と膝を擦りあわせる。

「なんだか皆さんが怖いので」

「怖い?」

「ええ、少しだけですが人間恐怖症のような不治の病にかかってしまっいるんですよ」

彼女は自虐のような微笑みをして僕に話し掛けた。僕は真剣に話に聞き入る。

「そういうのって、辛いんですか」

「辛いですよ、でも何だかなれてきました」

「でも僕には落ち着いて話しているように見えるのですが」

「貴方と話していると落ち着くんです。なんだか私のかつて大好きだったお兄ちゃんと相似していて。あの、よければこれからもお兄ちゃんってよんでも構いませんか?」

彼女の濡れた瞳の視線と僕の視線が交差し、僕はあまりの美しさにくっと歯噛みする。

「構わないけど、それで君の兄は怒らないのかな?」

「お、怒らないですよ。きっと。お兄ちゃんはめったに怒らない穏和な性格でしたから」

彼女は過去の記憶を蘇らせるようにうっとりと話した。そんなにそのお兄さんはかっこ良かったのだろうか。なんだか男として少し悔しかった。

「ではよろしくね、お兄ちゃん!」

「はは」って言う僕の笑いの後、僕の記憶はそこで小さなフラッシュバックを起こした。苦しさと吐き気が同時に込み上げてくる。その上もう少し、もう少しと辛い記憶がゆっくりと蘇ってきた。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

彼女の心配の声ももう聞こえない。聞こえない聞こえないのだ。

そう、何も。

僕の感覚は全てシャットダウンしてしまったらしい。

「僕は…」

そこで僕は突如現れたいくつもの真っ青で傷だらけの腕に無理矢理僕の中の第二の不思議で不可思議な世界へ引きずり連れて来られてしまった。その腕が何なのかという疑問と引きずられる痛みで僕は意識を失った。




…。


ようこそ、不思議で不可思議な世界へ。

主よ、我が主よ。貴方の来場をずっとずっと待っていました。

本当に、いつ会えるのかとずっと思っていましたよ。

ですが、そんなのも過去のお話。馬鹿みたいなお伽話です。

主、貴方は常に今を見て過ごしていなければなりません。

前世のように、貴方は孤独で戦い続けなければならないのです。

ああ、そんなに悲嘆なさらないで。

確かに貴方の中に貴方の幸福を憎む怪物もいますがそんなものばかりではありません。ご安心を。

貴方の世界で貴方に刃向かうなどもっての他。全ては私の刀の錆びにして差し上げましょう。

私が下らない怪物に天地を教えてやるのです。

そう、全ては貴方様の為に。

ところで、え?私は誰ですって?

そんな、主冗談でもなく私の事をお忘れになられたのですか?

いえ、主が記憶を忘れるなどありえるはずがありません。

私が貴方の脳に巻いておいた記憶解除の結解が破られたということですか。

辛い、辛いですね。

貴方を守り切るのが困難なのかもしれなくなってきました。

ですが主、ご安心を。私は貴方を守る兵器。

この命が尽きるまで貴方を守るため戦い続けましょう。

ああ、話がかわってしまいましたね。申し訳ございません。

私の名はキボロメンチゼン兵士001。貴方にはかつてからハジメとあだ名を付けて頂きました。

ええ、これからもハジメと呼んでいただければ光栄です。

ふふふ、貴方にはきっと知りたい事があるのでしょう?

私には分かります。

貴方の存在が一体何なのか。そう聞きたいのでしょう?

申し訳ございませんがそれをお答えすることは出来ません。

正直な所、分からないのです。

貴方の事を知っているのは貴方だけ。ですが、貴方が怪物の力を宿っていることは分かります。

ええ、怪物の力とは、ですね?それは自己再生能力など、人間には成し得ないものを宿る人。

それが貴方なのです。だから、私も今貴方の側に入る。貴方を守っているのです。

もう、時間ですね。私が貴方の元に姿を現す時間は貴方が今いる世界に制御されているようなのです。

その世界を築いた人の名前を教えていただいてよろしいでしょうか?

え?

は?

それは冗談ですか?主。

冗談では、ないんですか。

冗談では、ないんですね。

本当にマカロン・スプリングが作ったというんですか?

もし本当にそうならば、私は何も手伝うことが出来ません。

彼女に逆らうほどの力など私には無いのです。

ですが主、これからも彼女には十分に気をつけてください。

ふとした瞬間に殺されかねません。

では、もう時間ですので。

近いうちに何としても貴方に会えるように私からこの彼女の制御をばれない程度に破っておきましょう。

では、また会いましょう。


僕はその世界に一人残されてしまった。

やけに冷たい風が僕の肌を撫でていったのがなぜか寒気を呼び出したのは覚えているがそれ以外は覚えていない。



「大丈夫なの?お兄ちゃん!」

彼女の叫びで目が覚めた。左瞼をぴくぴくと動かす。

「大丈夫さ。少し気を失っていたのかな」

「本当に大丈夫なんですかあ?」

のんびりとした声。わお、いつの間にか煙たしが勝手に僕の部屋に入り込んでいた。

「本当に大丈夫さ。でも少し頭痛が鳴っている。君達は今日は帰ってまた来てくれないか」

「うん、お大事にね」

「分かったよ。また、明日くるね?お兄ちゃん」

「別に来なくてもいいよ?」

二人はドアの前で小さく手を振って帰っていった。僕は疲れのあまり動けなくなりそのまま地面に倒れ込んだ。「ハジメ、かあ」という独り言をゆっくりと吐き出し、僕はにこやかに笑った。

「すごい謎な物語になってきたよ、マフィン。こんな君との出会いの物語はあってもいいのかな」

僕はそう言って力尽きて地面に倒れ込んだ。



「今回のゲームのおつまみは何にしましょうかね」

お菓子の入れ物をの中をのぞきながらマカロンは小さく微笑んだ。

season2の二話目です!

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