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成人済み魔法少女@引退したい ~最強魔法少女は無自覚に人々を惹きつける~  作者: パンドラ
第二章 プリズシスタ編

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十八話目 魔法少女は成長したい

 ◇ ◇ ◇


「トリムシスタは動きが直線的すぎる! 魔法に頼り切るんじゃなくて、接近されたときの対応も考えて柔軟に!」

「はいっ!」

「クリムセリア! もっと相手の不意を狙う動きをして!」

「頑張ってます!」


 ……わたくしは何を見せられておりますの?

 三対一、三対一ですのよ? しかも、こちらにはエースクラスのクリムセリアもいるのですよ?

 ですのに、どうして、どうして一発たりともルミコーリアに攻撃を当てることができてないのですわ!


「プリズシスタ! 幻影の精度が甘い! この程度じゃ見た瞬間に判断できるよ!」

「どうしろっていうんですわ!」

「魔力制御をもっと練って! 幻影の魔力密度を高めて!」


 クリムセリア、トリムシスタの二人からの攻撃を捌きながら、わたくしの幻影を見分けながら、それでもなおわたくしたちにアドバイスを飛ばすだけの余裕が彼女にはありますの。

 わたくしにだってわかりますわ。これが、どれだけ隔絶した実力差を表しているのかだなんて。


「遅い遅い遅い! 数の利を活かして相手の逃げ場を無くすように! トリムシスタは他にアタッカーがいるなら、相手を動かす目的で魔法を撃つ意識を頭の中に入れて!」


 クリムセリアの炎の矢をかいくぐり、トリムシスタの魔法を常に警戒して、私の幻影でふさがれる視界をものともしない。

 これが、ルミコーリアという魔法少女なんですの?

 私の知っている魔法少女とは違いますわ。何が違うのか、と言われれば具体的には言えませんけれど。何かが、違います。


「連携が取れてない! プリズシスタ、もっと積極的に指示を飛ばして連携の精度を高める!」

「は、はいですわ!」


 戦いながらなのに、どうしてそこまで何もかもが見えてますの!

 これが、年季が成せる技なんですの?


 そうやって、しばらくの間実戦訓練をして、最終的に、わたくしたち三人は全員地面に大の字で倒れることとなりました。


「ん、まあ今日はこんなものかな」

「きょ、今日は……?」

「ん? もちろん連携が、特にプリズシスタとトリムシスタの連携が上手にできるようになるまでやるよ」


 す、スパルタですわ……っ!

 確かに座学でどうにかできる範疇ではないと思いますけれど、それを踏まえてもスパルタですわ!

 というか、どうして三人がかりであれだけ攻撃されて傷一つ負ってないし息も切らしてないんですのこの方は。怪物か何かではなくて? 本当に同じ魔法少女なんですの?


「ルミコーリア。私も付き合った方が良いですか……?」

「ん? んー、いてくれた方が助かるけれど、クリムセリアは無理しなくてもいいよ。プリズシスタにはできるだけ多い人数での戦いに慣れて欲しいから、都合が合う時に来てくれれば」

「……わかりました。ルミコーリアがそういうなら、付き合います」


 クリムセリアもヘロヘロですわね。きちんと全力を出してたように見えましたもの。

 それでも、わたくしたちよりはるかにいい動きを続けていましたわ。

 これが、魔法少女としての差。わたくしたちは、全然魔法少女として未熟ということですわね。


「今日は土曜日だからー、明日も使えるね。三人とも、明日の予定はどう?」

「も、問題ありませんわ」

「プリズシスタに従います」

「……はい、やります」


 クリムセリア、本当に傷ついている様子ですわね。

 本気で三人がかりでやっても届かない現実に打ちひしがれてしまっているのでしょうか。

 ……このまま明日を迎えても全く同じ未来になる気がしますわ!


「ルミコーリア!」

「ん? どうかしたプリズシスタ」

「ヒント、ヒントをくださいませ! 終了条件と、その達成方法のヒントをくださいませ!」


 おそらく、ルミコーリアとしては一撃ぐらい入れるのが目標だと思ってらっしゃるのでしょうけど! かなりの無理難題ですわ! 少なくとも、今のわたくしにはできる未来がさっぱり想像もできませんもの!

 ですが、ルミコーリアができると思っているのなら、きっと明確な道筋があるはず。

 そのヒントを聞くことぐらいは、悪いことではありませんわよね!


「んー、終了条件としては、私に一撃加えることを目標としてるかな。入れられるぐらいに手加減してるし」


 わたくしたち三人が一斉に驚愕したことに、ルミコーリアは気が付いたでしょうか?

 気が付いてなさそうですわね。ヒントについて考えを巡らせているようですもの。

 これだけ、これだけの差があって、まだ手加減されている?

 ひょっとして、わたくしたちとんでもない方に弟子入りしたのではなくて?


「できてない理由は明確なんだけれど……ヒントかぁ。答えにならないようにするのって難しいね」

「うぐぅ」

「でも、求められれば出さないわけにはいかないよね。そうだなぁ……」


 ……そんなにじっくり悩む必要があるぐらい、単純な事なのでしょうか。

 わたくしたちも結構必死に考えて行動していたつもりではあるのですけれども。途中で何度か作戦を練り直す時間もいただきましたし。

 でも、答えは見つかりませんでした。

 魔法の偽装だなんて発想が出てくるぐらいですので、やはり、ルミコーリアとわたくしたちが見えている世界はかなり違うのでしょうね。


「……途中でも言ったことなんだけれど、三人での連携に置いて核となるのは誰だと思う?」

「それは……わたくしではありませんの?」


 ルミコーリアは静かに首を横に振る。

 ええっ! 複数協力する場合、わたくしが指揮官として動けって話だったではありませんか!


「この場合考えるべきことは、どうやって私を捕まえて倒すか。プランは幾つか考えられるんだけれど……逆に、私を捕まえられる可能性がある人は誰?」


 ルミコーリアを捕まえられる人、ですの?

 わたくしの幻影は触れれば霧散してしまうので無理。トリムシスタも向いておりません。わたくしたちでは、直接抱き着くぐらいでしか捕らえられません。

 ならば、答えは一人でしょう。


「クリムセリア、ですか」

「そう考えてみることにするよ。幻影での牽制は抜けられる、なら炎で囲えばいいね。それじゃあ次は、私を一撃で倒せる可能性が高いのは誰?」

「トリムシスタですわ」

「そうそう! なら、プリズシスタが考えるべきことは何?」

「……どうやってトリムシスタの魔法を、ルミコーリアに当てるか、ですの?」


 それは既に考えましたわ。ですが、動きが早くて無理……そこでクリムセリアが出てくるんですのね!


「気が付いたみたいだね」

「クリムセリアにルミコーリアの足止めをしてもらう。その下準備をわたくしがすればよいんですのね!」

「その通り!」


 なるほど。順番に考えるわけですわね。

 最終的にどうしたいかを考えて、どうすればそうなるかを考える。

 ……とても大変そうですわ!


「ただ、普段は二人で戦うわけだから、幻影を上手く使って足止めする必要があるけどね」


 余計に大変になりましたわ!


「二人は普段の活動はどこで?」

「お二人のA市のお隣のB市ですわ」

「じゃあ、もしかしたらクリムセリアと合同で戦うこともあるかもだし、今日の特訓も完全に無駄にはならなさそうだね」


 そう、ですのね。

 でも、普通魔人一体に対して一人の魔法少女が対応するものではなくて?

 そんな複数人で戦うなんて話聞きませんわ。わたくしが言うのもなんですけれども。


「んー、私達の世代の時に一回在ったんだよ。凄い強い魔人が来たことが」

「その時は、複数の魔法少女で戦ったんですの?」

「そうそう。みんなが弱らせてくれてたおかげであっさり倒せたけれど、私がたどり着いたころにはみんなボロボロだったね」


 そ、そんなことがありましたのね。


「だから、もしも来た時に備えて、プリズシスタは周辺の市の魔法少女と仲良くなってほしいよね」

「ですわ!?」

「集団戦の要になるんだから、不仲だったら困るでしょ? ほら、せっかく魔法少女アプリあるんだし、連絡取り合ってみなよ」


 わ、わたくしが連絡を?

 ルミコーリアがそうおっしゃるのなら、やってはみますけれど。わたくしと話してくれるでしょうか。


「なあに、みんな年は近いんだから、世間話から始めればいいんだよ」

「……そんなことしなくても、魔法少女アプリには各魔法少女の魔法とかも載ってるので、それを見ればいいだけなのではないですか?」


 クリムセリアが補足を入れてくださいましたわ。確かに、魔法さえ知っていれば連携もある程度はできるはずですね。


「んー、じゃあクリムセリアは何も知らない相手といきなり一緒に戦える?」

「うっ。できないです……」

「そういうこと。私の世代も――私はあんまりだったけど――活発に交流してたよ」


 昔は今ほど魔法少女の数も多くなかったと聞きますわ。なので、より密接な関係だったのでしょう。

 でも、そうですわね。できることならば、やった方が良いですわよね。


「やってみますわ! ルミコーリア!」

「うんうんその意気だよ。それじゃあ、また明日ね」

「……はいぃ」


 また明日、本日のような訓練があると思うと、少しばかり足がすくんでしまいます。

 どうやらわたくしだけではないようで、少しだけ仲間意識が強まったかもしれません。

 クリムセリア……あなたも苦労してるんですわね。

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