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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
153/285

152話 不仲

蚩尤と雪姫は互いの意見で衝突。幸助への思い違いで雪姫の暴走。あまりにも状況的に悪いものばかり。


ちなみに、皆さん『蚩尤』は知っていますか?調べてみて、かなりタイプ的な妖怪でした!

俺は特にすることも無く、10日目が経ってしまった。数日間は色々あったんだが、褒姒と出会った後から妙な静けさを感じるぐらい何もなかった。

まるで、嵐の前の静けさのようだった。


古都に来て10日も経ち、俺は古都を去らなくてはならない。


これ以上留まることが出来ない身としては、古都とおさらばするしかない。

準備は前日までに済まし、身支度も忘れ物もない。雪姫に何度もチェックされ、何も問題なと言われた。

「これで大丈夫ね。食糧の備蓄と薬品は私が管理してる。悟美と紗夜、すね子も……淫乱狐も問題ない」

妲己には何かと苛立ちが目立つ雪姫。これでも大分機嫌は落ち着いているのだとか。

「そんなに妲己を睨まなくてもいいだろ?あいつも今回は惜しみなく協力してくれるって約束してくれたんだしよ」

「協力?それは少し違うように思える。淫乱狐は幸助にしか協力しない腹。用心することね」

「なんだよそれ?まるで俺にしか従わねえ言い方じゃねえか」

妲己が俺以外に協力しないとは聞いていない。雪姫の勘違いと思いたい。

「そうね。幸助はあの淫乱狐に魅入られた。これは妖怪の間では異常とも思える出来事。今後、幸助を狙う存在が多くなるかも知れない。だから嫌…」

表情から分かる雪姫の怒り。俺が危険に晒されるのを強く拒む。同時に俺の身を案じ、俺が無茶をしないように見守ってくれる。

しかしだ。雪姫は相変わらず俺の傍を離れず、妲己にすら容赦なく敵意を向ける。いや、妲己の場合は俺が襲われる可能性があるからであり、俺も妲己からの過剰な熱情に頭を悩ましている。

そんな事を考えているというのに、妲己は俺にまた笑みを見せてくる。

何やら沢山の布包みや馬車を用意している。俺を見ては妖艶に笑う妲己は怪しさでしかない。

「喜べ貴様!ワレの財産を全て持ってきたぞ!」

「……はい?」

胸を張って言ってきたかと思えば、意味の分からん事を言い出した。

「淫乱狐。あなたが何を企んでいるか話しなさい。その荷物、何の為に持ってきた?」

更にめんどくさくなった。雪姫が余計に聞くから、碌な事にならねえ気がする。

内心呆れつつも、俺は妲己にその荷物の量を聞いてみる事にした。

「なあ妲己。その荷物、何があるのか聞かせてくれねえか?」

「クククッ、よくぞ聞いた!この荷はワレの2000年の宝物ほうもつ。誰にも明かさなかった秘宝も存在し、この財をあの女ですら把握していない重宝するべく宝。まさか、古都を離れるとなるとは驚きだが、使う時が来た」

「何にだよ?」

思わず呆れて聞いてしまった。勿体ぶるのは良して欲しいと思い、つい本音が口に出てしまった。

妲己は機嫌が良く、俺の本音が聞こえなかったようだ。

「貴様の為、ワレの婿の為にこの財を使うと誓おう!なに、貴様が一生掛けても使えぬ財だ。全て恵んでやらなくもないが、貴様にはちとばかり足り過ぎるようだな?」

どうやら、ここにある富は幾万とあるようだ。

こんな人に貢ぐ妖怪知らねえぞ?

妲己って酒池肉林は有名だが、人へ自分の財を渡すほどのお人好しだっけ?まあ、こいつは俺を執拗に接してくるし、そう思った方が楽だ。余計な詮索をした方が疲れるっていうものだ。

「へぇー凄いな。で?その財は金とかか?」

「ほう?貴様、金銀財宝に目が眩むか?」

「いや、眩んだと言うかよりその金銀とやらは何で俺になんだ?」

俺的にはあまり金銀は他人の物は欲しくない。現に、雪姫に怒られたし。

「婿になる者が金の無心をするか⁉︎呆れたヤツだ。ここに腐る程の財があるというのに貴様は尽きぬ疑問をし続けるのはワレの癪に障る。いい加減、ワレの全てを受けよ」

話聞いてる?俺がそう聞き返したくなるぐらい、妲己との会話が成り立たない。

妲己は人の話を聞かないのが得意、らしい…。




「早く遊びたいな〜!ねえ紗夜?まだ蚩尤は来てないのかしら?」

妲己が持ってきた馬車の上に乗り、退屈そうに蚩尤を待っている悟美。待ち遠しいのか、いつも以上にソワソワしている様だった。

「まだ…かな?悟美ちゃん、本当に言わなくて良かったのですか?」

「どうしてかしら?別にサプライズってことで明かしちゃえばいいでしょ?」

「うん…コウスケ君って怒らない?あの人、怒ると目障りでウザい…」

幸助への不安が募る紗夜。数ヶ月過ごしたとしても今だに受け入れられず、更に幸助の悪い点ばかり見てしまう。見る度に不安が増え、自らが怯えるような様子を見せる。

しかし、僅かばかりに本音が口に出る。紗夜が幸助を目障りとするのに理由がある。

「また嫌がっちゃって〜。幸助君はウザいのは分かるけど、もうちょっとで楽しみが増えるから文句は言わないわ」

「それが嫌……悟美ちゃんが男なんかに…」

「何かあったかしら?」

「…別に」

不安要素しかない紗夜とは対照的に、人との交流に味をしめたのかこの現状を心から楽しんでいる悟美。非常に好奇心が強いのか、幸助の警護中に戦闘するだけではなく、こっそり服や食事を堪能していた。

しかし、コソコソする悟美を見つけられない紗夜ではない。当然のように影から悟美を無理やり連れ出し、否が応でも警護をさせた。


待っていること数分、蚩尤が六本の石剣を背負って現れた。

蚩尤が現れた途端、街を歩く者達が萎縮して平伏する。その妖気は場を鎮めるに相応しかった。

「よう!待たせたな悟美」

「シシシッ!おっそいわ。でも、ちゃんと来てくれたのね?」

まるで友達のように待ち合わせる二人を見て、幸助達が唖然とするのは言うまでもない。

「おい…?そいつって『蚩尤シユウ』だよな?」

見覚えのある容姿を持つ蚩尤を見て、一瞬で蚩尤と判別した。

「おい悟美。この人間が松下幸助と言ったか?随分と無邪気な餓鬼に見えるのは気のせいか?」

皮肉を含めて幸助を指差す。蚩尤からすれば、幸助の存在はそれほど大層な人間には見えない。普通の人間としか捉えず、内心は弱者ではないかとまで考えた。

「そうよ?この子が幸助君で間違いないわ」

「ふん、そうか。こんなヤツに従う理由はなんだ?」

不満を隠さずに悟美に聞く。

目の前で配慮せず、蔑まれても幸助は動じない。

「悟美、蚩尤とは一体どんな関係なんだ⁉︎」

当の本人は蚩尤の登場に興奮が止まらないのだ。

「牛さんはこの前遊んで意気投合したのよ!それでね、旅に付いて行きたいってお願いされたからオッケーしたわ!」

簡潔に悟美は幸助に答えてあげた。

「凄えな!蚩尤はかなり強い妖怪だと聞いてるぜ?それはありがてえ!宜しくな!」

幸助は握手を求めた。

しかし、蚩尤には獰猛な目で睨み返された。

その目に獣の重圧があり、睨まれた者を硬直させる威圧が放たれる。

幸助は睨まれた途端、その強い視線に体が硬直してしまう。

「ふん、所詮は面白味のない人間か。俺の顔を見てこの程度ならたかが知れている。悟美よ、この人間に従う理由でも聞こうか?」

視線ひとつで動けない幸助に落胆する。不意打ちのあまり、幸助は警戒心ゼロなのだから仕方がない。

「牛さんは凄いわね。あんな睨みで一瞬、面白いわ。でも、流石に幸助君の警戒心がない時にやっちゃうのは違うわ」

悟美は含み笑いをする。その笑みは当然知らず、蚩尤は首を傾げる。

「何のことだ?」

「幸助君のパートナーがブチ切れだわ。シシシッ!」

悟美はそう伝えると蚩尤から距離を置いた。

同時に、雪姫が凄まじい殺気で蚩尤へと斬りかかる。

「何奴⁉︎」

蚩尤は二本の石剣を両手に握り、雪姫の攻撃を真正面から受け止めた。

「それはこちらの台詞。幸助を弱者呼ばわりするな!」

冷たい視線が蚩尤の目に入る。シリウスの目が異様だと気付き、すぐさま、その首を刎ねようと石剣を振るう。

雪姫は『粉雪コナユキ』で姿を雪へと変え、距離を離す。

「その妖術…貴殿は『雪女ユキオンナ』か?」

「違う…私は雪姫あな。雪女はもういない」

名前は知っている。だが、蚩尤は雪姫に強い疑念を抱く。

「何故だ?名を受けた妖怪は妖術と共に妖力も失うはずだ。明らかに『雪女ユキオンナ』の妖術だったぞ?」

力を失った筈の妖怪が妖術を使い、その名に関する伝承を使える妖怪が目の前にいるのが可笑しいのである。『雪女(ゆきおんな』と同等若しくはそれ以上の妖術だった。


力を維持して名を受けた彼女の存在は異質。雪姫の存在が蚩尤には気掛かりでしかない。

「そう、でも力は失わなかった。幸助から名を賜ったから今の私がいるの。あなたが幸助を侮辱するのは間違っている。出来れば此処での騒ぎは起こしたくない。慎み、彼に言った発言を取り消しなさい」

刀を向け、蚩尤に反思の意思を示して貰う。

考えを改めて貰わなければ凍らせる。強い敵心を向けた今、雪姫は引き返せない。

「取り消す?甘い謝罪だな雪女。敵に謝罪を要求するなら強者でなければいけない。“災厄”に至った奇才な妖怪でも、“災禍様”を倒せるとは思えんがな?この俺を力で捻じ伏せるしか言うことを聞かせられないぞ⁉︎」

蚩尤は実力主義であり、力以外では従わない。ものを言わせるには、それ相応の力を持つ者でなければならない。

「……ならばあなたを殺すまで。人間を尊ばない妖怪は滅ぶのが定めでしかない。私の愚かさも実力で認めさせるまで」

「面白い!貴殿はこの俺に挑むか⁉︎一人の為に挑むとは妖怪の風上に置けないな!だがそれも貴殿の運命だろう!」

場の空気が変わってしまい、二人の間には敵心しかない。

介入する余地が与えられず、今の最悪な状況が作り上げられてしまった。

“厄災”と謳われた雪姫であるが、“災禍様”に属する妖怪に太刀打ちは難しい。

勝負をしなくとも明白、雪姫の敗北は紛れもない。

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