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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
碧落奔走編
152/285

151話 広い志

昨日は腰の痛みがひどく、動けませんでした。投稿頻度も落ちてるのは申し訳ないと思っています。ストックはありますが、書いておかないと落ち着かなくて……。


実は3月に沖縄から埼玉の方へ移動、というか帰ることになりました。仕事先が埼玉の方になったので、暫くは本土の方で活動します。色々、やりたいこともあるので頑張っていきたいと思います!

その頃、異空間にいる悟美と蚩尤は、互いに力量をぶつけていた。

「面白いわ‼︎こんなに張り合えるだなんて。中国妖怪は魅力的ね!」

「俺もだ。まさか、加護に頼らなくとも俺と同等の身体能力を有しているとはな?異能か?それとも、元からフィジカルが優れているみたいだ」

二人とも、己の戦闘意欲が高く、周りに人がいない為、激しい攻防が繰り広げられている。

三節棍と石剣が火花を散らし、互いは大きな消耗戦を強いられた。

彼らは“覚醒者”と“災禍様”。その実力が一見離れているように見えるが、悟美の脅威的な戦闘力に蚩尤は心が躍っていた。

(これが人間の可能性か。戦国…戦争…通し見てきたが、これ程純粋な殺戮者は数が知れている。大抵が自ら命を削るから早死するが、この女は狂っているが純粋過ぎる。戦闘する度に、おのが成長していると噛み締めている)

悟美が自己進化をしている。そう蚩尤には思えてならない。

人間の成長は数十年で終わる種族。それ以降は経験がものとなり、成長は止まる。

だが目の前の彼女にその壁がなく、常に成長している。

最初は簡単にあしらえる攻撃が、今は全力で弾かなければ押される。数時間という短期間で、目を見張る急速な成長を遂げている。

(こいつは烏天狗、女天狗、九尾狐様の加護を持っているのに関わらず、それを必要としなくても張り合える。信じ難いが、俺をあと数年もない内に超えてしまうかも知れない。フッ…なんと見事に未完された人間だろうか)

獰猛な性格に似合わない褒め称える蚩尤は、悟美に興味が湧く。未完と称したのは、完全なる強さではなく、まだ可能性があると見越しての褒め言葉である。


反乱者としてではなく、武人として称賛を送る。

「…知りたい。その勇姿と限界を感じさせない成長に惚れ込み、貴殿の名が知りたい」

手を止め、蚩尤は悟美に名を聞く。

悟美がここで攻撃を繰り出すようなら返り討ちに遭わせる気でいるが、悟美の態度を見てあり得ないと断言出来る。

「私の名前?面白い牛さんね」

「いい加減名前で呼んでくれ。俺もそこまで心は広くないんでな」

「新城悟美よ。幸助君の守護と私の目的の為に放浪する者よ」

きちんとした挨拶が返ってきた。悟美自身も戦っていく内に蚩尤に愛着を持っていた故の態度である。

“ある禁忌”の罰を受け廃人にならなかったのは、悟美の強靭な精神力があってのこと。人格を変えたものの、今は普通に理性を保っている。

「悟美…そうか!貴殿は悟美であるのだな⁉︎」

「聞き返すほど面白いのかしら?」

「面白い?違うな。俺は貴殿の強さへの探究心に惚れたのだよ。その強さは今後、新たな大戦には不可欠な強さ。此処で消えるのは実に惜しいと思ったまで」

殺す気なら今がチャンスである。消耗したとはいえ、蚩尤の方に武がある。ここで押していけば亡き者に出来る確信はあった。

だが、急成長する悟美を見て気が変わった。

己だけの力で成長する人間の可能性。純粋な興味で悟美を見たいと思った。


妖怪は気まぐれに行動するように、蚩尤もそれに従ったのだ。


「その領域、人間で数千年経とうが辿り着けなかった。しかし、人間の身で災禍様である俺に傷を負わせたその強さは本物だ。初めて見たぞ…貴殿のような得体が知れない強者というのは」

蚩尤は悟美に近付く。悟美は蚩尤の行動になんら不審な行動がないかを見ている。

「もしかして、私に邪な事をするのかしら〜?」

態度は柔らかく見えるが、実際はいつでも殺るつもりである。その証拠に、戦闘態勢を一部解除していない。

「警戒するな悟美。俺は貴殿を気に入った。その強さを更なる高みへ昇り上げ、まだ見ぬ人間の進化を見せてくれ!」

赤い光が蚩尤の掌で踊る。

それを見て、悟美は戦意の解除をする。

「私が好きなのかしら?……まあ良いわ。それなら好きにして」

その光は、決して悟美に不利をもたらすものではない。


蚩尤は悟美に加護を与える事にした。そして、止まらぬ成長が見たいと心が抗えない。素直に応じ、悟美に寵愛たる加護を授ける。

「怪態の狂人に我が加護を授ける。まだ秘匿せし秘めたる志を持ち、まだ見ぬ至高の域に辿り着くであろう者に大きな恩恵と成長を。幼心おさなごころを持つ者には未来を。それを拒絶する者には厄災を。天に見放されても、他者に共感されなくとも、その不屈の精神を持って全てを遂げよ。この地に辿り着いた汝に感謝と尊敬を」

悟美は蚩尤の庇護化へ入る。

だが、悟美自身にとって加護とは単なる延命の手段でしかない。

來嘛羅に加護を授けられた時点で1000年の寿命は約束されている。そこに500年程の寿命が追加されたに過ぎない。

「貴方って面白いわね。私を気に入るだなんて」

悟美は面白そうに聞く。

「そうだな。貴殿がこの世界に迷い込んだのも何かの縁と出会う為だったのかも知れないな。では悟美よ、今後もこの地に残らないか?」

蚩尤は悟美に古都の住民にならないかと勧める。

「どうしてかしら?なんのメリットがあって?」

当然、悟美は不思議に思う。誘われる理由に心当たりない様子。

「悟美ならこの都市で経験を積めばいずれは強者に名を連ねる。覚醒者が多い今でも尚、その名を古代から現代までの間に刻み残した者は数が少ない。元人間であったが妖怪を正統な理由もなく殺害し、今や“災禍様”にのし上がった『オダマキ』。人間界で様々な裏切り行為に走って強さを得た呂布奉先。天の使いとも称され、今尚多くの人間に妖怪同様の加護を授け軍勢を従える天草四郎、ジャンヌダルク。女帝で知られ、その勇ましさに慕う者が多いラズィーヤ。僅か1年前で“三妖魔”の一人である『酒呑童子シュテンドウシ』の直属配下に属したと噂され、古都と怪都の道を妨害する謎多き異端者の藤原陽輝ふじわらあかり。貴殿ならこの者に遅れは取らない。だがしかし、今の実力では勝てるかどうか分からん。なら、俺の元で身を寄せてもいいはずだ」

妖界で名を残すことは相当な危険がある。

人間を良く思う妖怪はいるが、大都市に住む者でも人間に憎悪を向ける妖怪は多数いる。

名が知られれば居場所や人物を特定され、命が狙われる。

そして何よりも、“ある禁忌”の一つにも関係してくるのである。

そこで、悟美を古都に匿い、その成長を自らが施すと提案する。庇護下と手元に置くことで安全を確保する。

悟美なら幸助に従わなくとも別に構わない。來嘛羅にも自由は大抵認められている為、ここで身を置いても問題などない。 


悟美は口元を歪めて笑う。

「嫌だわ」

「っ⁉︎……何故だ?」

真剣な表情で蚩尤は問う。

断る理由を聞き、悟美の真意を受け入れる。

「だって、そんなのつまんないでしょ?古都は魅力的で太古の妖怪や災禍様が多くいるから此処で住んでも悪くないわ。鍛錬も積める、自分を磨く場としては最高の提供場所に違いないわね。でも〜シシシッ!こんな鳥の籠で生活してもつまんない。こんな狭い場所で力比べなんて意味はないわ」

「で?悟美は古都を狭い場所だと言うのか?此処は最都を除けば広大な土地と最大人口を誇る。それはつまり、悟美は何を比喩した?」

不快には思えず、寧ろ悟美の一言一句に可能性が潜んでいる。蚩尤はそう確信した。

彼女なら屈託に拘らず、大きな思想があるのだと。

「全てよ。ぜーんぶ小っちゃいの!妖都と古都見たけど、私には退屈で耐え切れない。支配者に監視されて成長するなんて嫌。私は自由に、そして楽しく強くなりたいの!誰のしがらみに苦しまず、私が私の好きに強い人をこの手で滅茶苦茶に壊してあげたい。可笑しいかしら?異能を開示されて精神狂っちゃってるからこうなっちゃったのよ。だけど面白いからいいよね?だって生きている内にやり残さないようにしないとだから」

蚩尤は悟美の価値観を共有され、その願望とやらに強く共感した。


もう問いは必要はないが、念の為に確認する。

「貴殿…これからは悟美と生涯呼称させて貰う。それでだ、來嘛羅様に『契り』をした者が自由を求める事は可能なのか?」

「あれは関係ないわ。來嘛羅は私を縛ったりなどしない。私が幾ら暴れても面白く見てくれる妖怪。ずっと親のように見てくれる親戚の叔母・・さんのような人ね。だから自由に幸助君に加担して放浪の旅に出たのよ!縛らないから良いのよ!」

悟美は後腐れのない和かな笑みを見せた。


狂った狂人かと思ったが、悟美が人を心地良くさせる笑顔が、蚩尤の心を射止めた。

蚩尤はこの時、悟美をたかが人間として見れなくなってしまう。


「ふっ…悟美の晴れた心を見た気がするな。分かった、もう止めはしない。その代わりなんだが……俺を放浪の旅にお供をしてもいいか?」

自身から願い出る。

「いいわ。貴方も来るならどうぞ?」

悟美は即答で承諾する。

密かに仲間が増え、幸助の方は一層強固な強者に囲まれていく。


そして夜叉も、幸助の存在に大きな疑問を追及していた。

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