憲兵、私兵連合軍
「かかれぇ!!」
千人に及ぶ憲兵と私兵が俺一人に突っ込んでくる。
このままではその勢いに飲まれてしまうだろう。
俺は疾駆する。
そのまま先頭の奴に前蹴りを喰らわせ、兵は後ろに吹っ飛ぶ。
何人もの人を巻き込んで吹き飛び、勢いが止まる。
よし、ここからだ。
「剣神雷鳴流、波光」
この技は氣を刀に纏わせることによって刀身を伸ばし、間合いを長くする技。
これで複数の相手を同時に吹き飛ばすことが出来る。
白い空間でよく使っていた技だ。
俺は数十人を同時に吹き飛ばす。
「なっ、なんだあれは!?」
「そらそら!」
吹き飛ばす。
打ち倒す。
何人もの兵がなす術もなく倒される。
「くそ! 網だ。網を投げろ!」
網が高々と投げられ、俺の真上に到達した。
が、そんなもの。
風魔法を使い、網の向きを変えてやると、網は明後日の方向に飛んでいく。
何の関係もない兵に網が降り注いだ。
「お、おのれぇ! 次だ。魔法隊前へ」
周りの兵が離れていくと、代わりにローブを纏った魔法使いが前に出てきた。
手をかざすと飛び出てくる魔法。
炎、氷、石つぶて、雷が俺へと殺到する。
中々の飽和攻撃。
だが残念!
全ての魔法を刀で打ち払う。
「ほ、炎や雷までも切り裂くだと! そ、そんな馬鹿なぁ!!」
この刀、天ノ羽斬は老師、神から与えられた物。つまり神剣だ。
格でいえば魔剣などより遥かに上な筈。
魔法程度払えないわけはない。
「くそう! くそう! 攻めろ! 攻め続けろ! 何百人やられても構わん。奴を休ませるな! 一時と休ませず体力を消耗させ続けろ!!」
へえ。
一日何万ものモンスターと戦っていた俺の体力を消耗させる?
面白い。
やれるものならやってもらおうか。
「かかれ! かかれぇー!」
千人の憲兵、兵士との戦いは激化していく。
「か、かかれぇ! かか、れぇ、 か、か、れぇ、ェー」
枯れた声で途切れ途切れ声を張り上げる憲兵隊長。
が、その声で士気が上がったのはしばらく前までだ。
既に兵の数は数十人を残すのみとなった。
兵たちは完全に戦意喪失しており、隊長の声に乗って俺に向かってくる者はいない。
この場での戦い、決着はついた。
「ど、どうしたお前たち! 捕まえろ! 奴はまだ立っているぞおー!!」
「もう皆戦うの嫌だってさ」
この世界に来て初めての大集団戦だった。
そこそこ楽しめたけど消化不良ではあった。
最低あと五千は欲しい。
「じゃあ、残ってるあんたたち。お相手願おうか?」
隊長二人はビクリと体を震わせる。
憲兵隊長は声の張り過ぎで息も絶え絶えの状態であるし、私兵隊長は顔面蒼白で震えている。
俺がゆっくりと近づいていくと、私兵隊長の判断は早かった。
「てっ、撤退! 撤退する!!」
「あ、おーい。倒れてる兵。このまま置いてくのかよぉ」
俺の言葉も聞かず、隊長二人は残った兵と共に去って行った。
ふむ。
じゃあ俺も帰ろうかな。
遅くなっちゃった。
買い出し買い出し。
「失敗しただとう!?」
ダッツニールの報告を受けて、ワルアークは激昂した。
吉報のみを待っていたワルアークの落胆は激しかった。
怒りも立ち上るばかりだ。
「千人の人数で奴に挑みました。しかし、しかし、奴はそれを容易く跳ね除けた。奴は、あの男は化け物です。とても人間とは思えません」
タカタカ震えながらダッツニールは受け答えをした。
「何が化け物だ。くだらん言い訳をするな。奴は我が屋敷に侵入してわしに暴力を振るったのだぞ、断じて許せん」
今は回復魔法で傷は癒えているが、殴られた時は酷く腫れていた。
あの時の痛み、屈辱、忘れはしない。
絶対にこのままでは済まさない。
必ず殺してやるとワルアークは誓う。
「わ、私はもう、無理です。あの男の前に立つのが恐ろしいのです。どうかお許しを」
「ダッツニール。貴様ぁ!」
カタカタと震えるダッツニールを睨みつけるが、当人は下を向いて震えるのみ。
ああ、こいつは駄目だとワルアークは思った。
ポッキリと心が折れてしまっている。
「ふっ、まあいい。保険はかけておくものだな。必要ないと思っていたのだが、おい、入ってこい」
ワルアークがパンパンと手を叩くと、ドアが開き、二人の人物が姿を現す。
ダッツニールは不思議に思い、二人を見て、驚愕した。
「まさか! この二人は!」
知っている。
この二人を知っている。
王都でも有名人だ。
一人は筋骨隆々の男で、胸元を大きく開いた服を着ており、胸筋が盛り上がっている。
顔も厳つく、鼻には大きな傷があり、男の勲章もばかりに目立っている。
手には巨大は戦斧が握られている。
この男の名はゴラム。
S級冒険者だ。
もう一人は女。
ゴラムとは対照的にスレンダーな体格で、緑を基調とした服を着ており、顔にも体にも目立った傷はない。
やや吊り目だが、端正な顔立ちの美人だ。
この女の名はカルラ。
同じくS級冒険者である。
S級が二人。
モンスターが大量発生する大討伐クエストなどでなければ見ることが中々ないビックカードである。
「数で駄目なら質だ。この二人なら必ずセイマを殺してくれるだろう」
ワルアークは悪そうな顔で笑った。
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