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 憲兵の制服を着ている人と、鎧を着込んだ兵士。

 うん?

 部署が違うのか?


 観察していると、いつの間にか先程まで俺を引っ張っていた女が消えていた。


 そう、あの女はここまで俺を誘導するための役割を与えられた人だったのだ。

 あのナンパも全部仕込みだな。

 通りでさっさとあのナンパも退散したわけだ。


「はっはっは。驚いたかセイマ!」


 顔を見せたのはこの間の隊長さん。

 その隣には鎧の男。

 何者?


「貴様の包囲網は完成した。もう逃げられないぞ!」


「逃げる気はありませんよ。数は揃えたみたいですね。じゃあ始めましょうか」


「待て待てまだ口上は終わっておらん」


 え、さっさと始めようよ。

 隣にいる鎧の男が口を開く。


「久しぶりだなセイマ!」


 うん? 久しぶり?

 何処かであったっけ?


「どちら様?」


 分からないので素直に尋ねると、男は顔を引き攣らせた後で、顔を赤くして怒り出す。


「ワルアーク様の屋敷を警護していた兵隊長だ!」


「あ、あ〜」


 そうかそうか、あの中の一人か。

 いや、覚えてないよ、一瞬だったし。

 結構人いたし。


 とすると、これは憲兵とワルアークの私兵の連合軍ってことになるのかな?


「貴様がワルアーク様にしたことは許されざる蛮行! 今ここで正義の裁きをくれてやる!」


「なーにが正義の裁きだ。エルフを拉致していやらしいことをしていたじゃないか」


 俺がそう言うと、憲兵の隊長さんが首を回し、私兵の隊長を見る。


「エルフ?」


「全て出鱈目だ! そのような事実はない!」


 え? それで通るの?

 あんな感じで今まで逃げてきたのかな?


「俺に正義や大義があるとは言わないけど、よく恥ずかしげもなく自分に正義があると言えるな」


「黙れ! 大罪人セイマよ。ワルアーク公爵を襲撃し、あのお方を傷つけた罪。断じて許しがたし! ここで引導を渡してやろう」


「そう。じゃあ始めようか」


 質はともかく数はまあそこそこ。

 少しは楽しめるかな?


「待て待て、まだ口上は終わっておらん」


「んん?」


 いつまで喋るの?

 こっちは暴れる気満々なんだけど。


 それからもこの隊長は中身があるんだかないんだか分からない口上をつらつら述べていった。

 もういいよ。

 さっさとやろう。

 こっちは夕飯の買い出しの途中なんだよ。

 やばい、間に合うかな?


 その時、吸い込む空気に違和感を感じた。

 このぴりつく感じ。

 これって・・・。


 毒か。


 俺は自分が風下に立っていることに気がついた。

 なるほど、風に乗せて毒を散布しているのか。

 あの無意味に長い口上は、俺が毒に侵されるまでの時間稼ぎというわけだな。


 納得した後で俺は心から思った。


 老師、感謝します。


「〜故に、貴様のしたことは」


「あー、もういいもういい」


 まだ話続けようとする隊長の口上を遮り、こっちのネタバラシをする。


「さっきから毒を流してるんだろう? 分かってるよ」


 ギクリと、二人は体を硬直させるも、少しすると回復したのか、表情に笑みが浮かぶ。


「がはは! 気づいたか。だが、もう遅い。体が痺れるだろう? 動くこともままならない筈だ。どんなに強かろうと毒には勝てん。これで終わりだ!! がははは」


 そう。

 どんなに強くとも毒に侵されたら終わりだ。

 だからこそ、老師は俺を鍛えたのだ。


 悪戯っ子が悪戯をバラす時ってこんな気分かな?

 俺は告白する。


「俺に毒は効かない」


「がはは、は?」


 隊長の表情が固まった。


「だから、俺は毒無効のスキルがあるんだ。この程度ではどうにもならないよ。ほら」


 俺はその場でバク宙などを披露する。

 うん。体のキレは失なわれていない。


 隊長二人は唖然として、俺を見つめていた。

 だが、私兵の隊長の方は幾分早く回復した様で、眉間に皺を寄せて叫ぶ。


「それがどうした! 見よ、この圧倒的な数を! 貴様を殺すために集った数は千人! 今から貴様を蹂躙してやる!」


 おっ、開き直ったか。

 まあ、本来なら一人にそれだけいれば充分だが。


「ようやくか。よし、来い!」


 俺は刀を抜いて身構える。

 隊長から号令が下された。


「かかれぇ!」

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