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憲兵と私兵

「なんなのだあいつは!!」


 ダン! と憲兵隊長であるモーリスは机に拳を叩きつけた。

 大人しく捕まらないばかりか抵抗され、まさかの返り討ちに遭ってしまった。

 あれではまるで稽古をつけてもらっているかのようだ。

 まるで相手にならなかった。

 腕が立つとは聞いていたが、まさかあれ程とは。


「隊長。あのセイマに関する情報ですが」


「何かあるのか?」


 隊員の一人が挙手をする。


「この間、ニルデラートファミリーが壊滅したと報告を上げたかと思いますが、どうも、それをやったのがあのセイマだという話です」


「なんだと!?」


 ニルデラートファミリーは長く暗黒街に根を張ったマフィアの中のマフィア。

 その勢力も最大であり、かなりの構成員がいたかとは思うのだが、それが突然壊滅してしまった。

 それをやったのがあのセイマだというのか。


「何人でやった?」


 奴には仲間がいるのか?

 ワルアーク公爵を襲撃したのも一人ではないのか?


「いえ、一人のようです。たった一人でニルデラートファミリーを壊滅させたと」


「たった、一人で」


 喜んでいいのかどうなのか分からない報告だ。

 仲間がいないことを喜んでいいのか、そんな馬鹿げたことをたった一人でやりおおせたと嘆けばいいのか。


「ニルデラートファミリーの構成員はかなりの人数がいた筈。それを一人で壊滅させたとなると」


 では、こっちは何人の憲兵を動員すればいいのか?

 百、二百では足りないだろう。

 たった一人にそれ以上動員するのか?

 馬鹿げている。


 だが、


「出来るだけ多く集める。その上で奴を叩く!」


 これ以上舐められてたまるか。

 必ず捕まえて絞首刑にしてやる。


「それでは足りぬだろうな!」


「誰だ!?」


 突然一人の男が部屋の中に入ってきた。

 身なりのいい男だ。

 見るからに貴族。

 モーリスは畏まった。


「貴方は?」


 男は微笑を浮かばせる。


「私はワルアーク様に使える者。ダッツニール。貴方方に協力したい」


「ワルアーク卿に?」


 なるほど、被害者であるワルアーク自らが報復に乗り出したというわけか。


「合同で奴を叩くというわけですな?」


「その通り。貴方方にとっても悪い話ではないと思うが?」


 確かに、憲兵を総動員してもセイマ相手では不安が残ると思っていたのだ。

 これは渡りに船か。


 それに公爵からの申し出。

 断りにくいし。


「分かりました。よろしくお願いする」


「ふっふっふ。ああ、こちらには作戦があるのだ」


「作戦ですと?」


 ダッツニールは狩人さながらに目を細める。


「何も数で攻めるだけが能ではない。つまり、こういうことだよ」


 そうして、二人はセイマを捕まえるために作戦を話し合った。

 セイマ包囲網は狭まりつつあった。






「そーれ」


「そーれ」


 子供たちがシーソーで遊んでいる。

 俺が作った会心のシーソーだ。

 楽しんで欲しい。


「そろそろ変わってよー」


「もういいでしょー?」


「えー、まだ乗りたーい」


「ほらほら順番だぞー」


 俺は子供たちにジャンケンを教え、順番を決めさせた。

 まあ、簡単な構造だし、その内飽きるだろうが、それまでは大いに楽しんで欲しい。


「さて、夕飯の買い物に行こうかな」


 俺は子供たちから離れ、夕飯の買い出しに行くことにした。

 さて、今日は何を作ろうか。

 シチューはこの世界にもあるんだよな。

 じゃあハヤシライスでも作るか。

 献立を考えながら、通りを歩いていると、男女が言い争っている声が聞こえてきた。


「離してください」


「いいから付き合えよ」


「いや、離して」


 ナンパか。

 女の人は結構嫌がっている様だけど・・・。


「そこの人! 助けて!」


「え、俺?」


 助けを求められてしまった。

 まあ、助けるのはやぶさかではない。

 俺は二人に近づいた。


「あー、その人嫌がってるぞ? やめた方がいいんじゃないか?」


 俺が男に話しかけると男は視線を逸らせた。


「チッ!」


 捨て台詞を吐いた後、男はさっさと立ち去っていった。

 おお、話せばわかる時もある。

 また暴力沙汰になるのではないかと思ったが、こんなこともあるか。


「ありがとう! あなたは恩人よ!」


「いや、大したことは。あの彼もすぐに引いてくれたし」


「是非お礼をしたいわ! 一緒に来て!」


「え? おい」


 女の人は俺の手を掴むとぐいぐい引っ張っていく。

 何この人やけに積極的!


「いや、いいよ。大したことしてないし。俺も用事あるし」


「そんなわけにはいかないわ。さあ、こっちこっち」


 女の人は強引に俺を引っ張り何処かに連れていく。

 どうしよう。

 振り払うのは簡単だが、お礼をしたいらしいし、無下にするのもな。

 夕飯までまだ時間はあるし、いいか。


 そう思って引っ張られるままに進んでいくと、どんどん街の中心から外れてきた。

 どこまでいくつもりだろうか?

 おいおい、そのまま行くと門をくぐって外に出ちゃうぞ?


 流石におかしいと思い始めた。

 この女の狙いは何なのか考えた時、なんとなく読めてきた。

 はっはーん。そういうわけか。

 門を出た先にはいくつもの人の気配。

 やっぱりだ。


 そこにいたのは、人、人、人。

 何人いる?

 何百。

 あるいは千を超える人数がそこにはいた。


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