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崩壊の序章

 マントとフードを被り、貧民街を闊歩する俺。

 目指すは情報屋だ。

 ニルデラートファミリーについての情報が欲しい。

 前に利用したことのある情報屋の元へと向かう。

 昼だと言うのに薄暗い路地にその人物はいる。

 なんでも名の売れた情報屋らしい。

 俺が顔を出すと、ニヤリと笑って迎える。


「よう、あんたか」


「情報が欲しい」


「また人攫いの情報か?」


 前にこの情報屋を利用したのは、この王都にいる人攫いの情報を得るため。

 かなり渋ったが、金でなんとかした。

 おかげでいくつかの人攫いから子供たちを救い出すことが出来た。


「今日は違う」


「なら、何を?」


「ニルデラートファミリーについて知りたい」


 そう言うと、情報屋は顎鬚に手を当てて弄り始め、小さくため息をつく。


「やっぱりあんたか。ニルデラートファミリーと揉めてるっていうのは」


 流石に情報を仕入れるのが早い。

 もう掴んでいるのか。

 俺はそれには答えずに、情報屋に詰め寄る。


「構成員の人数、支部などの組織図から場所。知っていることを全て教えて貰おう」


 情報屋は唸った後に、視線を外す。

 すると、五人ほどの男たちが俺を取り囲んだ。


「どういうことだ?」


 まあ、分かりきっていることだが、一応聞いておくことにした。


「あんたは金払いはよかったんで気に入ってたんだが、悪りぃな。いくらなんでもニルデラートファミリーとことを構えようって奴に情報は売れねえや。俺も命が欲しいからな」


 確かに、これは俺が迂闊だったかな。

 ここでニルデラートファミリーと敵対している俺に情報を流すということは即ち、ニルデラートファミリーを売ることに他ならない。

 暗黒街のドンを敵に回したくはないだろう。


「まあいい。こいつらに聞こう」


 それが戦闘の合図となったのか、それぞれの男たちが武器を構えて俺に襲いかかって来た。






「さて、誰から聞こうかな?」


 倒れ伏し、血を流す男たち。

 誰か叩き起こして話をするか。

 すると、ずっと黙っていた情報屋が絞り出す様に声を出した。


「信じられねえ・・・ニルデラートの屈強で知られる組員たちがこうも容易く」


 屈強?

 こいつらが?

 おいおい、こんな奴らじゃ組なんて守れないだろう。


「なんならお前が喋るか? 俺に脅されたって言ってもいいし金も払うぞ?」


「あんた。ニルデラートファミリーを、どうするつもりだよ?」


「聞かずとも分かるだろう? 潰すんだよ」


 情報屋は頭をガリガリとかきながらため息をつく。


「正気とは思えねえ。あのニルデラートを潰そうだなんてよ」


「本気だよ。で? どうする? 話してくれるのか?」


「ああ、いいぜ。俺はしばらくこの都を離れることにするわ」


「助かる。金は弾むさ」




 この日からニルデラートファミリー傘下の組が次々に襲撃され潰されていった。






「どうなってやがる!!」


 吠えたのはニルデラートファミリーのドン、ブッハ=ニルデラートその人だ。

 だが、威勢よくとは言えなかった。

 その顔には焦燥が浮かび、額には健康的ではない白っぽい汗が伝わる。


 ここ数日でニルデラートファミリー傘下の組が根こそぎ潰された。

 一体何処の組の攻撃かと思ったが、そういうわけではないらしい。

 敵は一人。

 たった一人の男だという。


 最初にそれを聞いたブッハは報告に来た構成員を殴り飛ばした。

 たった一人に壊滅させられるとは何事だと。

 だが、そうも言っていられなくなった。

 連日続く壊滅の報告。

 相変わらず敵はたった一人。

 たった一人に何百人という構成員がやられているという事実。

 合わせると既に千人をゆうに超える構成員がやられているのだ。

 たった一人に。


 一つ、また一つ潰されていく組に、次第にブッハも恐怖してきた。

 一体何者なのか?

 何が目的で攻撃してくるのか?

 いや、狙いは大体わかっている。


 一つは金だ。

 冗談かと思ったが、大して大きくもないアイテムボックス(魔法の道具。見た目よりも多くの物質を収納することが出来る)に金品を全て入れているという。

 アイテムボックスにも許容量は存在するのだが、その男の持っていたアイテムボックスは何処に収納限界があるのか分からない程の量を悠々と収納し、全てを奪っていくという。


 もう一つは奴隷。

 何故か所有している奴隷を全て連れて行ってしまうということだ。


 一体何がしたいのか分からない。

 分かっていることは完全に舐められているということ。

 この天下のニルデラートファミリーが簡単に壊滅させられていく。

 止められるものなら止めてみろと言わんばかりだった。

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