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第一話……カーヴ登場

 俺の名はカーヴ。

 火星自治政府の兵器工場にて造られた戦闘用バイオロイドだ。

 長年、この赤茶けた大地で戦闘を行っている。


 ……が、ある日、塹壕で飯を食っていたら、まばゆい光に包まれ、知らない世界に転移してしまった。

 これは、そんな異世界での日々を綴った記録である……。




□□□□□


「……伯爵様。召喚は成功ですぞ……」


 眩い光が過ぎ去ると、俺の前には二人の男がいた。

 周りを見るも見慣れない部屋。

 足元には怪しげな魔法陣が描かれている。


「伝説の勇者殿! お待ちしておりましたぞ!」


 ……伝説の勇者だと!?

 一体何の話だ。

 それにここは一体どこだ。

 見慣れぬ赤い絨毯が俺を不安にさせた。


「さぁさぁ、こちらへ。お疲れでしょう?」


 男のうちの一人は、劇に出てくるような魔法使いのような痩せた老人。

 もう一人は、貴族のような身なりの良い青年であった。


 俺は魔法使いのような男に案内され、立派なテーブルに二人と共に席に着く。

 質の悪い車酔いのように足がフラフラした。

 正直いって気持ち悪い。


「ここはどこだ? あんたは誰だ!?」


 俺は疑問に思っていることを最小限にまとめて聞いた。

 どうやら、どこかに連れ去られたということだけは分かっている。



「私は召喚士のトム。こちらにおわすはクリフォード伯爵様である。そして、ここはクリフォード伯爵領にある領主館じゃ」


「訳が分からない。俺には任務がある。元の場所に返してくれ」


 トムという男は誘拐犯なのだろうか?

 俺をさらってもなにも出ないぞ。


 それに、俺は火星の自由を守る戦士だ。

 戦友たちを見捨てて、戦場から逃げ出したくはない。



「それは無理じゃな。すぐに理解は難しいだろうけども。まぁ諦めて私たちの要望を聞いてほしい」


「……」


 凄く勝手な奴だな。

 これが率直な感想だった。


 とりあえずトムという男の説明によると、俺は勇者召喚という儀式でこの世界に招かれたらしい。

 つまりは違う世界へと転移させられたのだ。


 ちなみに、話によれば俺は選ばれた人間らしい……。

 ……まてよ、俺は人間じゃないぞ。



「悪いが、俺は人間じゃないぜ!」


「またまた、御冗談を! もし魔族ならこの精霊石が青く光ることはありませんぞ」


 魔族っていったいなんだ?

 ここは所謂ファンタジーのような世界なのだろうか。


 話が変わるが、俺の表皮は人間を模してあった。

 よって、間違えられるのも無理はないと思う。


 周囲を見回すも、ここの文化レベルは低いようだ。

 地球暦でいえば、中世か近世といったところだろう。

 俺が人間に造られた存在と言っても、ここでは理解してもらえそうになかった。



「……まあいい。で、俺に要望とは何だ?」


「実は王女様が魔物に誘拐されましてな。それを伯爵様が助けに行くのだが、それを護衛してほしいのだ」


「なんだと? そんなの俺じゃなくてもいのではないか?」


 伯爵様と言えばお偉い様だろう。

 態々他所から人を呼ばずとも、自分の部下だけで何とかなるだろう。


「いやあ、それを言われると困るのじゃが。それに部下を沢山連れて行って救出したのでは伯爵様の名声が上がらない。伯爵さまとお供の1名だけで王女を助けてこそ美談になるのじゃよ。そこで信用できる一名として勇者殿に白羽の矢を立てたのだ……」


 トムが言うには、今回の勇者召喚は実験の意味合いも大きかったらしい。

 全くもって迷惑な話だ。


 安定して成功するようなら、勇者召喚は王家も手を出そうとしている技術らしい。

 冗談じゃないぞ!

 単なる人さらいじゃないか。


 ……だが、俺には両親や子供がいるというわけではない。

 話を聞くにつれ、次第に人助けができるなら、やってもいいと思えるようになっていった。



「伯爵様ってのは、あんたか?」


 俺は身なりの良い青年に話を振る。

 彼の髪は金髪で肌は色白く、眼は透き通る様に青い。



「……え、ええ。そうです」


 うーむ。

 見るからに気が弱そうな青年だ。

 これは誰かが手伝わなければ、お姫様は救えそうにないな。



「こ、これ、前金です……」


 青年が怯えながらに差し出してくれた革袋の中を見ると、金貨がたくさん入っていた。

 ……んん?

 悪い話じゃないな。


 言っては何だが、俺はお金に弱いタイプである。

 というのは半分冗談だが、伯爵様が弱弱しい上目使いでこちらを見て来るのだ。


 いやいや、分かったよ。

 そんな目で見ないでくれ。



「まぁ、やってみますかい」


 俺は頭をかきながらそう返事をした。



「あ、ありがとうございます。勇者様!」


 俺は伯爵様に手を取られ、厚くお礼を言われた。

 伯爵さまのテンション的に、もはや王女様は助けも同じの感じだ。



「いやいや、そんな喜ばれても……」


「いえいえ、伝説の勇者様が味方に付いて下されば百人力です!」


「ええ、そうですとも!」


 はしゃぐ伯爵様に相槌を打つトム。

 私はとても困惑した。

 それにきっと、俺は伝説の勇者様じゃないってば。


 その日。そんなドタバタがあり日が暮れた。

 俺は伯爵様に夕食をご馳走になり、とりあえずその日の夜は彼の館で休むことになった。


 ……しかし、とんでもないことになったな。

 明日は早いらしい。

 俺はランプの灯を消し、意識をまどろみの中へ戻すことにしたのだった。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

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