第4話【お菓子の好み】
秘密の教室にて。
机を挟んで向かい合うように座っている灯里と藍良。
藍良が真正面から見つめるのに対し、灯里は是が非でも目を合わせないよう顔ごと背けている。
しかし、それでもご機嫌の様子でニコニコ笑顔の藍良。何が彼女を楽しませているのか。
「今日も来てくれてありがとう、蛇ノ目さん」
「い、いえ……」
言葉を交わしてもなお灯里は顔を背けた状態を保っている。
普段ならば顔を合わせずとも下向きの状態で相手を見ているような体勢を取っているのに対し、今は完全に明後日の方向を見ている。それは藍良の視線が強く刺さっているからだ。
「ど、どう……して、そんなに見つめて、いるのですか……」
「蛇ノ目さんが来てくれて嬉しいからだよ」
なぜ?と返すつもりで思わず藍良に向いたが、藍良の瞳がこちらを見ているのが視界に入ったためすぐさま逸らした。
「3秒」
「え?」
「まずは3秒見つめあってみない?」
藍良は自分の手だけが灯里の視界に入るように三の指を立てて見せた。
その指を見つめる灯里。
「あ、あの。そ、そそ、それって」
「嫌ならしない。蛇ノ目さんがやりたいと思ったらやろう」
「……」
灯里が答えられずに俯くと、
「じゃあ、私が振り向かせて見せよう」
と言って藍良は立ち上がった。
すると、藍良は灯里の視界に入るように回り込んできた。灯里もそれに反応して向きを変える。また藍良が回り込み、灯里がまた向き直る。
ご主人の反応を見てはしゃいで走り回る飼い犬のように灯里の周りをクルクル走り回る藍良。
それが30秒ぐらい続いたのち、突然動きが止まる。静寂が訪れた。
灯里はフェイントをかけられたように、困惑し小さな緊張感が走る。
「蛇ノ目さん」
優しい声で灯里を呼ぶ声。その声に振り向くと微笑んで見つめる藍良の姿があった。
目が合った。
「……1、2、―っさん」
3秒経ったと思って、灯里に喜びを伝えようと様子を窺うと、その表情はフリーズしていた。3秒見つめあえたのではなく、目が合った驚きで灯里はキャパオーバーを引き起こしたのだった。
それでも藍良はサングラス越しの彼女の瞳が見えた。
宝石のように輝く灯里の瞳がサングラス越しにも光って見えた。
そっと誘導するように灯里の身体を向き直らせ、後ろから抱き着き優しく囁いた。
「蛇ノ目さん偉い! 頑張ったね」
「あぅ!」
その声にようやく意識を取り戻した灯里であった。




