第28話 走馬灯
『櫻様』
『櫻様っ』
『さ、くら、さ、ま…?』
『さくらさま、』
『櫻様、さ、くら、櫻様』
『櫻様ぁ』
『さくらさま、櫻様櫻様』
ほとんど全て記憶にいる、夏の花の名前を持つ少女。
記憶は走馬灯のように流れていく。
『櫻様、もうすぐ春ですよ』
『櫻様、あとちょっとで夏ですね』
『櫻様、しばらくすればきっと、秋が来ます』
『櫻様、もう冬になるんですよ』
櫻が全てを拒否したってついてきてくれた。
『櫻様、世界に復讐をしましょうよ、精一杯春を咲かせてみせましょう?』
『大丈夫ですよ。櫻様はこの国で唯一の春なのですから』
『喧嘩とかは駄目?喧嘩ではありませんよ、櫻様』
『世界を優しく包み込むのです。優しい復讐、みたいなものです』
櫻が春になったって一緒にいてくれた。
そして最後は
『どなたの差金ですか!?』
『聞かなくてもわかる。お父様だろう?』
『櫻様、ここから先は夏のお二人にお頼り下さい』
『ちょっと実家に帰るだけです。しかし、実家なんて本当に久しい』
『捕らえたいのは櫻様じゃないのなら…この私を連れて行きなさい』
『聞けェッ!これは星華からのご命令だ!』
『櫻様、ここから一番近いのは秋の国です。秋の国へ行ってください』
『手下共!この小娘は見逃せ。私を実家に帰しなさい』
この国の春を守るため、自分を差し出した。
「…くら…櫻ちゃん…櫻様ちゃん」
「ん…」
ーゆめ…?
現実に似た、とても鮮明な夢だった。
「大丈夫?一晩中ずっとうなされてたよ」
「あさひ、さん…」
「だいじょぶ?」
ーあさひさんがしんぱいしてくれてる
『誰かを心配させるような人になっては駄目よ。誰を心配するような人になりなさい』記憶の最初にいつも、母の言葉がいる。
「だいじょうぶ」
作り笑いでもいい。
心配させなければいい。
「だいじょうぶだよ」
朝日も作り笑いをした。
「よかった」
「ん…2人とも早いね…」
湖白を起こしてしまったらしい。
「こはくさん、おこしちゃった…?」
「ううん、勝手に起きちゃった」
湖白はすでに櫻が自分を貶めがちなことを知っていた。
「みなさん…?」
起きたのは七宮花奏。この前、京都で会って以降、共に行動している。
みんな少しずつ色々なことで欠如している。
それでも、弱くはあろうとしない。
そんな存在たちが世界を作り上げるのである。




