第26話 "秋"の脅かし
水風湖白、陽虫朝日、花舞櫻は今日も北に向かっていた。
エゾより南、下総半島に晴れの家はある。
「あさひさん、こはくさん、あそこにおんなのこ、いるよ」
「ん、どこどこ?」
「あ、あそこ」
「んん、ほんとだ」
「くるまいす、だね」
「車椅子?うーんうーん、誰か車椅子の人いたようないなかったような…」
「あ、七宮花奏さんじゃない?」
「あー!!そうそう、その子その子」
「ななみや、かなで、さん?」
「うん、曇りの女の子、だったよね?」
「うん」
「…あ、」
「どした?」
「かなでさん、くるまいす…?」
「そうだけど…」
「まえ、あきのとこいたときにみました」
「あー、花奏さんって秋の護衛官の娘らしいよね〜」
「曇りの神になる可能性も秋の神になる可能性もたったとか…」
「うんうん、でもあたし、あんま話したことないなあ。こはちゃんは?」
「うーん、こはもあんま話したことないかも。なんかお母さんが怖くて近寄れなかった気がする…」
「あーね、お母さん怖いよね」
「うんうん」
「それで…あの子はどうする?」
「もちろんたすけよう、よ」
櫻は車椅子の少女に近づいた。
「てつだいましょう、か?」
振り向いた少女は、思い浮かんだ少女と重なった。
* * *
「 」
静かな車内。
春になったばかりの外は見えず、薄暗く感じる。
車内には冬主従、冬御用達運転手、そして秋の護衛官がいた。
数日前のこと。
『白城様、冷寒様、"秋"にきていただけませんか?』
秋の護衛官から電話が来て、何だろうと思いながら取ってみれば、開口一番こう言われた。
『秋は今、雪に狙われ始めています。助けて、いただけませんか?』
『…秋は雪と接触したと聞いた』
言葉を選びながら、白城は言う。
『ええ、その通りです』
相手は悪びることなく肯定した。
『なら、なぜ"冬"に助けを求める?"夏"や"春"もいるだろう』
『"冬"は"春"と仲がいいと聞きました。"春"は"夏"とも仲良くしているようですので、最悪他の季節につながるかと思ったまでです』
ー思惑があるようでない、か
『"春"なら1発で済むだろ』
『そうですね』
ーなんだ、この女は
『そのとおりです』
得体の知れない何かが襲ってきているような感覚がした。
『私についてきていただけますか?』
秋の護衛官は冬の神に銃口を向けた。
あってはならないことだ。
『奪い取って撃つこともできますよね?でも、貴方様はそうなさらない』
全てを読まれているような言葉にぞっとする。
『私は秋と夏と曇、三つの御家と関わりがあります』
ただの女が「怖い」。
『ついてきてくださいますか?』
女は不気味な笑いを浮かべた。




