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季節はめぐる  作者: 明月莉婭
春と夏の協奏曲
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第9話 過去〜再会の時

『つ、椿(つばき)、様…!』


ーようやく見つけた。

ーようやく主人を見つけられた。

今まで全てが報われるようだった。


しかし、椿は別人になっていた。

『だれです、か?』

凍宮椿(いてみやつばき)は花舞櫻(はなまいさくら)になっていて、自分のことを見向きもしなかった。


『あやめです!菜草(なぐさ)、あやめです!貴方様の従者の、あやめです!』

『あやめ…ちゃん?』

ーよかった。覚えててくれた。

そんな希望は消え去った。

『あやめちゃんなわけないよ…。あやめちゃんはしんじゃったんだよ…?』


『死んでないんです!嘘です、嘘なんです!』

『つばきちゃんも、しんじゃった』

ー意味がわからない

目の前にいるのは確かに主人なのに。

ー貴方様は、椿様ではないんですか?

『もう、つばきちゃんはしんじゃった』

ー貴方様は、誰なんですか?

『そう、ふぶきおにいさまがいってた』

ーそうか。

『ふぶきおにいさまのいってたこと、ちがう?』

ー私と、あやめと同じで死にかけたのか。

『さくら、つばきちゃんしんじゃってかなしいよ』

ー動作も違うのは、あやめと違って本当に死んだからか。

『はなまいさくらになったんだよ』

ー主人をお守りするのが役目なのに。

『つばきちゃんのかわりに、つばきちゃんのからだまもってるよ』

ー守りきれなかった。

ー何を考えているんだ、あやめは。どうせ、本当の主従にはなれないのに。


『あやめから、お願いがあります』

『なんですか?』

『一週間の間、あやめは貴方様にお仕えいたします。もしもあやめだと分かれば解雇にしないでほしいです。分からなければ切り捨ててください』

『きりすてる、なんてできないけど…それでもいいの?』

『いいんです』


それから、あやめの挑戦は始まった。






4日目、櫻が賊に襲われた。


『つば…いえ、櫻様。ここはあやめにお任せください』

『しんじゃう…よ』

少女の瞳には本気で心配する元主人の姿が映っていた。


ー当然だ。私は貴方を守りきれなかったのだから。

『死ねェッ!』

ー私は生きている資格すらないのだから

『死にたくないのなら、これ以上近づかないでください』

ーもし私が生きていていいのならば

『こちらとしても無駄な殺傷は控えたいところです』

ー私は貴方様の従者として生きていきたい。

『殺されるならば殺すまでだ!』

あやめは仕方なく賊一名を斬った。

ー私は貴方様の刀となりたい。

『馬鹿らしい。櫻様を傷つけようとするからだ』

ー私は貴方様のお側にいてもよろしいですか?

『次の相手はこのわしじゃ!』

ー私は貴方様の従者でいてもよろしいですか?

『お前みたいな女など、相手にならんわ!』

ー私を、許してくださいますか?

『櫻様を傷つけた者は一生許さない!』

ー私を、認めてくださいますか?


斬って斬って斬って、殺して殺して殺して




一時間もしたら、あやめは血まみれになっていた。

顔や服には返り血が飛び、腕や足の切られた傷跡からは血が溢れていた。


後ろに何かがくっついた。

ー血…じゃない…

恐る恐る振り返ると、櫻があやめを後ろから抱きしめていた。


『あやめちゃん…しんじるよ…。さくらのこと、まもってくれてありがとう。でも、あやめちゃんもち、でちゃだめだよ…?』

ー櫻様が、信じてくださった。

『いつまでもいうよ、あやめちゃんがいちばんしんらいできるって』

ー嗚呼、

『だからあやめちゃん、しんじゃだめだよ』

ーこの私を許すなんて。

『さくらのこと、ひとりにしないでよ…』

訴えかけるような瞳に圧倒された。

私の主人はこんな方だったと思い出した。


『はい…。このあやめ、櫻様のために誠心誠意仕えます』

『しんじゃ、やだよ』

2人の美しい瞳からは涙が滝のように流れてきた。

『もう、ひとりにしないでね、あやめちゃん』

『はい…』

目の前にいる主人は本当に春のようで、暖かい人だ。


父が太陽なら、兄は月で妹は星だ。


櫻とあやめの境遇は近しい。

父が権力者で太陽。

兄が父を支える月。

その通りなら、櫻とあやめは同じ星になっていたはずだ。

しかし、櫻は違った。

強く兄を支える一番星だった櫻が、再会してみれば太陽のように輝いていた。

その時、あやめは思った。

どこで違ったのだろう、と。

どこで別の道を歩み始めたのだろう、と。

太陽の主人と星の従者。

せめて、自分の意思さえ持てれば月にでもなれたのに。


人生100年時代。あと80年は生きれる。

ーそれなら、私は櫻様を引き立てる月になりたい。

そんなことを切に願った。

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