第二十九話 王者の闘い
舞台で繰り広げられるのは、激しくも的確な攻防の数々。
「"流星群"!!」
「"剛拳"!!」
空から降り注ぐ星のカケラが鉄の拳に打ち砕かれた。
「まだよ! "豪脚"これで終わり!!」
トーナメント二位の"かりん"はそう言って、先日のイベント十位を収めたアーチャー・ゲイルの眼前に躍り出る。
「"ファイアーバード"!」
「なにっ!? きゃぁっ!!」
ゲイルは冷静に後ろへ飛び退き、弓の焦点をかりんに合わせる。
弓から放たれた矢は火を纏い、勢いをつけてかりんを呑み込み連れ去った。
かりんはその炎に耐えられず後方へ飛ばされる。
そのまま仰向けに倒れる。
「もうむり! アッツい!! 負けた!!」
かりんの元気なリタイア宣言により、試合は決着が着く。
両者ともかなり白熱したようだ。
かりんはどうやら体力がもう切れたらしい。それと同時に集中力も散漫になる。
会場には声援が続いていた。
声援はゲイルのものも、かりんのものも、入り交じっている。
実況担当のアナウンスにも熱が籠っていた。
「続きまして、お待ちかね!! このゲーム開始からのナンバーワン"カナト"プレーヤーVSトーナメントの覇者"ユウ"プレーヤーが入場致します! 解説のお鈴さん、勝敗の行方はどう見立てますか?」
「そうだな、カナトは攻撃ペースが速い印象があり、そのペースに巻き込まれると不利になる。しかし、ユウさんも技術面は文句なしの実力。冷静に一つ一つの技を対処するのが勝利への道ですね」
「なるほど! では、ユウ選手が如何にして"冷静"を保てるか、がキーになりますね。さぁ、準備が整ったようです! 運命の一戦が始まります!」
司会の煽りと共に入場するカナトとユウ。
楽しそうに口の端を持ち上げるカナト。
対象にユウは緊張しているのか、肩に力が入っているのを感じた。
開幕。
会場の声が最高潮に盛り上がり、耳が痛くなる程だ。
二人は一気に駆け出す。
間合いが二人の射程になると、金属音が激しくぶつかり合う音が響く。
先に攻撃を始めたのはランサーであるユウの方だった。
ユウは魔力で輝く槍を構えて一突き。
カナトはそれを軽々大剣で弾くと、大きく横に振りかぶり勢いを殺さずユウに叩き込む。
「ぐっ……!!」
ユウは思わず声が漏れ、足を踏ん張らせるが、少し後方へ弾かれる。
「おっと力が篭ったか? まさか、痛かったわけじゃねぇよな?」
語尾を強くしてカナトは言い放つ。
ユウはそんなカナトを睨みつつ、槍を天に向けて立てた。
「"サンダーボルケーノ"」
その途端、地面が割れ、ユウを中心に地面から紅色の雷と炎が沸き上がる。
それは天に昇り、突き立てた槍に雷が落ちる。
槍はバチバチと音を立て始め、紅い光を持った雷を纏った。
ユウはその槍をカナトに向けて放った。
その雷はカナトを覆い隠す程のレーザーになる。
カナトは「"防壁"」を使い前方に現れた防御の壁で自身の身を守ろうとするが、あまりの力にそれは破られた。
ユウはやった! と言いかける。
しかし、そこにはまだ、確りと両足を地面に着けたカナトが楽しそうにユウを見ていた。
「この程度でやられてたまるかよ!」
カナトはそう言ってユウに一気に距離を詰めた。
手に持っているのは"大剣"ではなく"双剣"。
スキルでなのだろうか? 初めて目の当たりにする一瞬の武器変更にユウは驚いた。
対して、双剣によりスピードが一段と上がったカナトは調子よく間合いを詰める。
繰り出される左右の鋭い刃に、ユウは身を守る以上手も足も出ない。
「"ブレードウィング"」
カナトの双剣が輝く。
刃が魔力を持つ風を纏う、それを振るうと空間も切れるほどの鋭い一太刀になる。
ユウは間一髪で避けたが、二振り目を脇腹に食らってしまった。
肉を抉られる感覚がユウに伝わる。
「まだまだ!! そんくらいでくたばらねぇよな?」
カナトは好戦的な瞳をギラリと光らせた。
次に片手ずつ持っていたのは"ラブリュス"つまり、両刃斧だ。
柄の部分が長い鎖で繋がっており、ジャラと音を立てて地面で揺れる。
そして、左右対称に付いた大きな刃が強い光を持った。
「"トリガーアックス"!!」
二本を併せて力任せに振り下ろされたそれは、ユウの頭上から足先までを縦に切り分ける。
ユウが呻き声を上げて後方へ倒れかける。
しかし、ユウはグッと足を堪えてそれを防いだ。
身軽な様子で距離を開けたカナトは「いいね」と笑う。
ユウは睨むようにカナトを見ると再び槍を構え、速いテンポで刺突攻撃を繰り出す。
カナトはそれを両刃斧で弾きつつ、距離を詰め始める。
「近づかせない!!」
ユウがそう言って槍を低く構えた。
「"サンダーラッシュ"」
ユウの槍が再び雷を纏う。
一段と上がった攻撃スピードにカナトは少し押されたが、射程距離を詰めて"大剣"に再び持ち直すと大振りな攻撃で槍を一気に弾いた。
「"狂鬼"」
カナトの体からオーラのようなものが発せられる。
それは以前フラウが欲しいと言っていたスキルで、全体的なステータスをランダムでアップするものだ。
カナトのレベルになると使い勝手が悪そうだが、カナトは敢えてこれを手に入れた。
「今日、俺は、ツイてるみたいだなあ! お前は強かったが、もっと強くなれ! そんでまた闘おうぜ!!」
カナトはそう言って大剣に持ち変える。
「"デットエンドセメタリー"」
カナトは魔力を纏い巨大化した大剣を真下に振り下ろす。
それはユウだけではなくリングを割り、地鳴りを起こし、観客席や闘技場の周辺にまで衝撃波が及んだ。
一瞬の静寂。
そして、次に視界が開けた時はリングにはカナトただ一人が大剣を担いで立っていた。
次いで客席からは割れんばかりの声援が響く。
カナトは機嫌良くリングを立ち去る。
その姿を見た司会は慌てて台詞を読み上げた。
解説席にいたお鈴は、関心と衝撃で表情に出た驚きを隠せずにいた。
○
ユウはあの一撃で自分が消滅したことを覚えた。
ユウが次に目を覚ますと、控室に強制送還されており、呆然と佇んでいる。
控室に設置されたモニターには、雄叫びや興奮で目を血走らせるプレーヤーが多く存在した。
そして、カナトの戦い方が初めて大衆に晒された。
司会も解説もカナトの隠し持っていたスキルをどう説明しようかと模索しながら話している。
やっぱり強い、悔しい、勝てると思ったのに、そう思ったユウだがどこか晴れやかな気分で終わりを実感していた。
ふと、フレンドの申請枠にカナトの名前が入ってくる。
メッセージには「また戦おうぜ」とカナトらしい言葉が添えられており、苦い笑みを浮かべるしかなかった。




