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騎士と聖女の物語  作者: 丁太郎
騎士と聖女の絆編
36/36

3.はみ出しもの達の頭

★★★★★

Side レイト

モス国首都バーキンにて

(フィアラ、チュリアと出会う前)



「はぁ? もう終わったって? 早すぎだろ」


 パートナーのライザが驚くのも無理ない。

 俺だって我が耳を疑ってるんだから。


「冗談は相手を選んだほうがいいよ」


 傭兵家業はコケにされたらお終いだっつーの。

 だから、少し軽く威圧してしまったとしても俺は悪くない。


「ほ、本当なんだって!あんたらに嘘つくわけないだろ!」


 その必死な表情に嘘はないよーだ。

 なら本当に戦は終わってるってことか。


<マジカヨ!>


 思わずライザと顔を見合わせてしまった。

 ライザも嘘を感じなかった様で表情が マジかよ! と言ってた。


 傭兵の俺達は【テリア王国】と【クドナル公国】との戦争に参戦する為、わざわざ【モス国】までやってきた。

 だとゆーのにどちらにつくか情報収集するまでもなく戦は終わったと傭兵ギルドでたった今聞かされて困惑している最中だ。


「疑ってすまん」


 ギルドの職員にはとりあえず謝っておくか。

 下手に揉めて以後情報収集しにくくのなるのも困るしな。


「どうしてそこまで短期決戦になったんだい? 奴らの恒例行事はいつももっと長いだろ」


「あんたらだから特別に教えるけど」


 そんな前置きから始まった話をまとめると、【アマリア王国】の参戦によりクドナル軍の巨兵隊が壊滅し、2国の喧嘩どころじゃ無くなったってことだった。

 しかもアマリアの神の勇士兵(エインヘリアル)は12騎の上、相当ヤバいのがいたらしい。

 

「一撃で巨兵3体を破壊した(食った)だって? 話半分にしたってデタラメじゃないか」


「目撃証言も多いし、皆同じ内容だからまず間違いない」


 職員が嘘を言っている感じはしない、だとしたら…


<アマリアの近衛騎士団か。やり合いたくはないわなぁ。こりゃ間に合わなくて命拾いだった?>


「アマリアがねえ」


「それでアマリアがなぜ参戦したんだい? 戦が終わってるって事は侵略しにきた訳じゃ無さそうだし」


「あ、それについても理解ってる。これも口外しないでくれよ」


理解(わー)ってるよ」


「アマリアの姫がこの国の第二王子に嫁ぐ事になっていたのは知ってたか? ものすごく美人らしいと噂の」


「そんな話…あったっけ?」


「お!噂には聞いてた美人の姫さんか」


「その姫のお披露目に参加したこの国のお偉いさんから我がギルドのギルド長が聞いた話なんで信憑性は高い話によれば、なんでもアマリア側から輿入れの申し入れがあったらしい。銀髪のそれは美しい姫だったって」


「アマリアの狙いはモスと同盟を結んで帝国に対抗しようってところかい。でもこの国の第二王子ってのは初めて聞くね。いたんだ」


「おいおいライザ。まぁ王太子と違って噂は聞かないな。で、まぁなんとなく読めて来た」


「おろそく想像通りだろう。その姫がこの国向かう道中2国の巨兵の戦闘に巻き込まれたらしい」


「はぁ?運が悪い姫さんがいたもんだ」


「なんつー最悪なタイミング。姫さんにとってもクドナルにとってもな」


「ああ、クドナル領内で巻き込まれてしかもトドメをさしたのがクドナル側だった様だ」


「あちゃー」


「で、六強国の中で一番実力を隠しているヤバい国の逆鱗に触れたと」


「よくモスとの全面戦争にならなかったもんだ」


 ライザの言う通りだ。

 この話まだなにかありそうだな。

 ま、なんか駆け引きがあったんだろうさ。


「ともかくそれで無駄足になったんだね」


「そーゆー事だな」


 <俺達の出番は戦が膠着してからだと思っていたんだがなぁ>


 せっかく【破砕のデリカット】が出てない情報もつかんでいたとゆーのに無駄になった。

 とにかくあてが外れたなら外れたで次の行動を考えないとだな。

 他にも情報を探る為、俺たちは傭兵ギルドを後にした。





「とんだ無駄足になったねぇ。レイト」


「移動費丸損かぁ、いやはや参った参った」


 情報屋から得られた情報も飯のタネになりそーなものは無かった。

 このままモスに留まるのは時間無駄そうだ。

 せっかくモスくんだりまで来たんだし、モスが準備中の聖戦に従軍する手もあるけど、まだまだ先になりそーだし、そもそも今回で何度目のチャレンジか忘れたが今まで何度も失敗しているのに付き合うのは死にたいと言っているよーなものだろうし。


<うん、モスは早々に出よう>


 そー考えた時だった。

 ライザが突然立ち止まった。


「ん、どしたー?」


 ライザは答えずに俺に《魔力視》の力を使ってきた。

 とたんに見える世界が変わった。

 驚くから突然にはやめてほしいね。

 景色が色があせた世界に変わってしまった中、鮮やかな色が目に飛び込んでくる。

 

<少女?>


 一人の少女だろう?に目が止まった。

 厳密には少女なのかはわからんけど、そう感じた。


 市場の往来で立止まって物珍しそうにキョロキョロしている少女(仮)はままばゆいばかりの黄緑色の光に覆われている。

 この色は風の魔力だったなー。

 これだけ強い魔力を纏っているならかなりの力を持った聖女と考えていーだろう。

 周囲の誰も彼女に気付きやしないどころか、意識せずに避けているんで何かの力を使ってるっぽいな。


<駄目元でいってみるか?>


 見たところ都会に圧倒されてるお上りさんって感じだし、力がある聖女だとして、まさかこんな市場の往来で話しかけただけで攻撃は仕掛けてはこないだろうし、万が一話に乗ってくれれば強力な戦力ゲットってもんだ。


「ライザもういいぞ」


「ああ」


 視界が元に戻る。

 相変わらずキョロキョロしている少女が立ってる。

 やはり少女で間違いないよーだ。

 魔力につけた色で形しか分からなくなるなんて規格外の魔力の持ち主だ、見た目に騙されると痛い目に合いそうだ。

 それに一度認識したから見えてるだけで意識を他に移せばすぐに見失うに違いない。


「よし、行ってくる」


「あ、ちょレイト」


 慌てるライザなど珍しい。

 それだけあの子はヤバイと感じてるんだろうが、もう既に彼女の前に立ってしまっていた。


「や、お嬢さん迷子かな」


 少女に反応はない。

 自身の実力に自信があって、まさか認識されたと思ってないんだろうな。


「そんなに市場が珍しい? でも女の子の一人歩きは危ないよ」


 この俺の優しく紳士な問いかけに少女がよーやくこちらに視線を向けた。

 しかし彼女の怪訝そうな視線は人を殺せそーなほど冷たい。

 どう生きてきたらこんな目が出来ることやら。

 俺はその視線を真正面から受けつつ最上の笑みで迎える。


「うわ、キモ!」


「いきなりその一言は酷いんじゃない?傷つくよ」


「だってオジサンキモいじゃん」


「オジサン…」


「で、何の用?ナンパはお断りだよー」


 警戒されるのは仕方がない。

 応じてくれるだけましか。

 オジサンなんて言われる歳ではないけど、少女に言われると少しばかし凹むわ。

 が、メゲないよオニイサンは。


「一応心配して声をかけたんだけどな。お嬢さんの力が強いのはわかるけど見える者には見えるんでね。心配しなくてもこちらも連れがいるんだ。安心してくれていいよ」


「いきなりこのバカが声かけて悪かったね」


「おいおい、バカはないだろ」


 会話の流れに乗ってライザが割り込んできたが、いつででも力を使える様にしていた。

 一見そーは見えない様余裕を装っているが、長い付き合いからライザが内心警戒している時は、ほんの少し踵を浮かすのを知ってるんで分かるのだ。

 ここまでライザが警戒を強めるのは本当に珍しい。

 そんなライザの内心を見透かしたかのよーに少女の口角が少し上がった。


「大丈夫だよー私ちょー強いもん。オジサン、オバハン達よりよーーーーーーっぽどね」


「俺たちは敵対したいわけじゃないよ」


 警戒する少女に肩を竦めてみせる。


「じゃあ何?」


「お嬢さんは俺達の力量を計れるようだし単刀直入に言うよ。俺たちは傭兵団『ゼノ』を率いているレイトとライザ。お嬢さんがフリーなら是非入団して欲しいと思って声をかけさせて貰った次第さ」


「やっぱナンパじゃん」


「ナンパじゃなくてスカウトのつもりなんだけどね」


「どっちだっていいよ。どっちにしろ私フリーじゃないし、その気ないし」


「そうかい邪魔して悪かったね。私達はもう去るから機嫌直してくれ。ほらレイト行くよ」


「おいライザ。わーったって、襟持つなって」


 ライザに襟を引っ張られて少女の前から強制移動させられてしまった。


<まったくライザの馬鹿力め>


 ライザは俺の襟を離した後、早足で少女から遠ざかろーとしていた。

 こんなライザは珍しい。

 俺はどんどん進むライザの後についてライザが警戒を解くのを待つ事にした。


☆☆☆☆☆


「で、さっきはどうしたんだ?ライザ」


 俺の向かいの席に座り紅茶を飲んでいたライザは呆れたとばかりに顔を右の手のひらで覆ってため息を吐いた。


「戒律だかなんだかで昼間に酒の提供をしちゃいけないこの国もどうかと思うけど…レイト、あんたの不感症もどうかと思うねぇ」


「さっきの()の事か? ヤバイってのは解ってたさ」


「その()についていた大量の護衛の方には気付いてたかい?」


「…護衛?いたんか?」


「ほらコレだからレイトは」


「大量の護衛ねぇ…そーなると、あの()の正体が見えてくるな」


「……噂の三つ子の一人ってか」


 やっぱレイザでもわかるか。


「そーそー、【クテレ正教】の秘蔵っ子の大聖女」


 どうやらクテレ神殿ってところはとんでもねー組織らしい。

 さっき出会った大聖女様は聖女の能力が飛び抜けているだけじゃなくかなりの実践経験を積んでいる感じがした。

 あれは顔色を変えずに人を殺せる(もん)の目だ。

 見た目はまだまだ子供だったけど。

 いったいどんな育て方をしたのやら。


「で、なんでそんな大聖女様がこんな場所にいるのさ?」


「俺が知ってる訳ないじゃん。お忍びかなんかだろ」


「ま、関係ないしどうでもいいか」


「はぁ、本格的に無駄足になったなあ」


 ため息しか出んわ。



☆☆☆☆☆



 モスの首都【バーキン】を発って一路、ミレー王国首都【ナストン】を目指す。

 今回、クドナルとテリアの戦に間に合わず、無駄足になったと思ったが蓋を開けてみれば戦力増強って結果になった。

【クテレ】の聖女チュリアとパートナーの聖騎士フィアラだ。

 この二人()訳ありな感じだ。

 ま、毎度のことだけどな。

 出会った時2人は低ランクの冒険者だった。

 そして2人揃って共用語の発音が綺麗だ。

 共に【アマリア王国】出身で間違いないだろう。

 そうアマリアだ。

 クドナルとテリアの戦に参戦した【アマリア王国】

 そこにきて最近冒険者になったアマリア出身の聖騎士と聖女。

 出来すぎてるってもんじゃないじゃないの。

 おそらく国を捨て出奔したってとこだろ。

 ま、我が傭兵団『ゼノ』の面子ははそんなんばっかりだけどな。


 それにしても風の聖女は有り難い。

 傭兵家業は冒険者とはまた違った何でも屋でもある。

 戦闘以外でも有用な魔法やら奇跡が多い風の聖女の参加は大歓迎なのだ。

 新メンバーの2人だが、フィアラは一定以上内に立ち入らせず、同時に踏み込んでもこない。

 馴れ合いたくないんだろう。

 しかし会話をすれば分かるけど、フィアラの情報分析能力は高い。

 元アマリア騎士団の聖騎士なんだろうから剣の腕も確かだろう。

 

 一方、チュリアの方は根が素直なのか、直ぐに真に受けるので駆け引きに向かない。

 見ていて危なっかしいがパートナーが疑り深いからバランスはとれているんだろう。

 ライザをはじめ、メンバーの聖女達はチュリアを気に入ったようで、からかいつつも可愛がっている。


 

☆☆☆☆☆



「んで、魔物退治受けちまったんだ」


「ああ、断りきれんかった」


 ジョッキを一気に呑み干したライザは悪びれもせずに言い切りやがった。


「まぁ、いいか。大仕事の前のウォーミングアップだ」



 だなんて会話を数日前にしたんだが、さてどうしたものか。

 目の前には浄化され消えゆく魔物の肉塊。

 魔物は俺たち手を下すまでもなく、退治されてしまった。

 いつもなら手間が省けたってもんだなんて思うところなんだが、今回に限ってはそんな軽い気持ちにはなれんかった。

 

 この光景を目の当たりにする少し前のことだ。

 俺達が作戦会議をしていたら魔物がいる砂丘の方から光の柱が立った。

 俺たちも急ぎ顕現しその場所に向かったけど、たどり着い時には戦闘は終わっていて、そこには魔物と化した巨大トカゲだったらしいバラバラの肉塊群があるだけ。

 肉塊は凍っていたんだが、氷が溶けるのと同時に浄化が始まり光の粒子となって消えていった。

 光の柱を目撃してからすぐにたどり着いたにも関わらず魔物は退治され、退治した聖騎士と聖女は姿を消してしまっていた。

 我々の魔力反応に気付くのはこちらも解っているがそれにしても早すぎだろ。

 素早い大トカゲの魔物は俺とライザでもソロ討伐はこの短時間でできるもんじゃない。

 【ミレー王国】か【魔導国ジ・エル】の近衛騎士?

 だとしら俺らに得はない。

 もし在野のペアなら仲間にできないか?

 逆にもしここで逃して後々敵になったら……


『どうするレイト?』


 ライザの呼びかけに我に返った。

 

『ライザ、この周囲の魔力は?』


『今は聖女らしい魔力は全く感知出来ないね。ここに付く前に大騎士を消したのは感じた。それから少し魔力が動いたのまでは感知できたけどその後は全く感知できなくなっちまったよ。魔力を追うのは無理だね』


『そっか、深追いはヤバイかもな。ならとりあえず撤収、撤収』


『ああ、戻るか』


 俺はハンドサインで同行している2組に撤収のサインを出した。


☆☆☆☆☆


 待機組みに見たままを話せば、案の定騒然となった。

 そりゃそうだ、俺らの知る限り氷の聖女は見たことも聞いたこともないのだ。


「おいおいその氷の聖女様を逃しちまったってのか?」


「無茶言うなよー。着いた時にはライザですら魔力も追えないまでに隠蔽されちまったんだぞ」


「ズンキルは魔物の成れの果てを見てねえからそんな呑気な事いえるんだ。もしあの場に居て敵対したらと思うとゾッとする。下手すりゃ俺らもバラバラだったさ。逃す逃さないじゃなねえな、ありゃ」


「こっちは大騎士3騎がかりで相手は1騎だろ。怖じけ過ぎじゃない?」


「いやサブ。ゲイルの危機感も無理はないね」


「ライザ姉御の言うとおりだと思う」


「…氷の聖女…未知だな…」


「だねー、やばそー」


 氷を司る神は居ないとされている。

 だから氷の精霊だけがその力を使う。

 しかし、【初めの聖女様】が【神の勇士兵(エインヘリアル)の秘宝】を生み出して400年、氷の大精霊と契約した聖女はいない。

 氷の精霊自体が希少な上に気まぐれだかららしい。

 まぁ気まぐれで滅多に人前に姿を出さないから希少って言われるのかもだけど。

 それにしても今まで誰も氷の大精霊を従えていない、と思われてきた。

 今までは……


 ふと会話に入ってこないフィアラとチュリアに視線をむける。


<こりゃなんか知ってるな>


 フィアラは普通にポーカーフェイスだったけどチェリアはどこか落ち着きがない。

 こりゃ間違いなさそーだ。

 隣でライザも苦笑していた。


☆☆☆☆☆


「でチュリアはさっきの氷の聖女に心当たりがあるんだろ?」


<おいライザ!単刀直入すぎだろ!>


 呼び出してそれとなく聞こうと思ったらライザの奴がいきなりブッコミやがった。

 しゃーないフォローに回るしかない。


「もし知り合いだったら仲間に誘えないかなって思ってね。もし同業者なら敵に回ることもあるだろうし、知ってる事があったら教えて欲しんだ。傭兵家業に身を置いたんだ、仲間内では協力し合おうじゃないか」


 チュリアはカチュアに視線を向けた。

 この2人の関係は明確に上下がある。

 ライザと違ってチュリアは基本的に判断の決定権を聖騎士のカチュアに委ねている。

 案の定口を開いたのはカチュアだ。


「ひょっとしたらって程度の話なんだけど…チュリアの同郷の知り合いかもってだけ。ただねその知り合いにはそんな力は無かった筈、ねぇチュリア」


「はい、彼女は聖女ではありませんでしたよ」


「なんで言い切れるんだい?」


「どうせバレてるだろうから言うけど、私もチュリアもアマリアの出身でね。チュリアはそいつと同じ日に【聖女検査】を受けているんだ」


「んなのいくらでも力を隠せるだろ。真面目に祈らなければいいだけだ」


「普通ならそうなんだけどね。詳しい事情は知らないけどその時そいつも役人の目に止まってチュリアとは別に王城に連れて行かれて王城の魔法陣で正式に儀式をしたらしくてね。その時に精霊【ミレー】と契約したって話さ」


「精霊【ミレー】って【ミレー王国】の国名になってる精霊じゃないか」


 へぇ、そーなんだ。なんだかんだでライザは詳しいな。


「はい、ミレーを建国した初代に女王はミレーと契約していたってことでしたよね。でも【ミレー】って氷の精霊とはいえ下位ですし大騎士を顕現させることは出来ないですよ」


「ん?そうだったか?」


 たしか初代ミレー王は聖女だった筈だな。

 どーゆーこった?


「氷の大精霊は確認されてないし、そもそも氷の精霊については知らない事が多いのさ、エルフでさえね。大精霊も下位精霊もひとまとめで【ミレー】と呼んでしまってるだけかもしれないね。 で、チュリアは 同郷の知り合いの可能性を考えているだね」


「ええと……氷の精霊と契約を結ぶのってほんとに希少って聞いているからもしかしてってだけだけど、でも彼女の精霊にそんな力があるとは思えないし……」


「力を隠している可能性もあるんじゃないか」


「王城の魔法陣でやった検査だったからね。契約した精霊の力の大きさは誤魔化せないと思うけど…まぁそっち方面は専門じゃないからね。ひょっとしたら精霊自身が力を隠していたかもしれないね」


 ふむ、カチュアもそれらを知ってるってことは アマリアにおいて氷の精霊と契約を結んだという者の情報は秘匿されてないってことだろうか?


「ちなみにその同郷の知り合いってのを思い浮かべたって事はそいつは今アマリアには居ないんだね?」


「と、思う」


「はっきりしないね」


「私達はそいつの監視役じゃないから、今どこで何してるなんて知らないね」


 まったく、せっかくカチュアが突っぱねてるのに、チュリアの目が泳いでいるから更に隠し事してるの丸わかりだ。


「チュリアも知らないか?」


「え、えっと…今どこで何をしてるかまではほんとに分かりません」


「じゃぁ理解っている範囲では?」


「行方不明よ……生死も含めて不明ね」


「なるほど、可能性はゼロじゃないって事だね」


「まぁ、そうなるなあ。 さっきのアレが知り合いがそうなのかは兎も角、単独で行動してるなら傭兵というより冒険者ぽいな。とりあえず今のところは、だけどな」


「ああ、そうだね」


「ま姿をけしちまった以上、どうしようもないか。ちなみにその同郷さんの特徴ってあるのかい?」


「身長はチュリアと同じ位でかなりの美人だね。髪色は銀髪だけど染めてるかもね」


「性格は温厚だったよ故郷に居た時は、だけど。王都に行ってからは会う機会がなくって直接話してないけど、噂では物静か大人しい娘って」


 静かで大人しくて相当な美人の娘が国を出奔ねえ。

 なんか引っかかる。

 聖女検査で失格だったのにアマリアの王城に連れて行かれて、王城で特別に再検査されて氷の精霊と契約。

 それだけで特殊な立場だよねぇ…でもって現在は出奔。

 同じく出奔している同郷の聖女のチュリア。

 カチュアとチュリアと出会ったのも、氷の聖女に遭遇したのも偶然にはちがいないだろーけど…なにか釈然のしない。

 全ては一つの出来事…【アマリア王国】が【クドナル公国】と【テリア王国】の戦に参戦したことと関係がある気がするんだよなあ。

 根拠はないけど。


 そもそも【アマリア王国】はそもそもここいらでは滅多に話に出てくる国じゃない。

 物理的な距離があって身近じゃない大国なのだ。

 それがあの戦争の話をモスのギルドで聞いて以降、すごく身近になった。

 アマリア出身の聖騎士カチュアと聖女チュリアが【アマリア王国】の騎士団の所属だったのは二人の話の内容から間違いないだろーし、氷の精霊と契約した同郷の娘は間違いなく国に保護されたって感じだ。

 チュリアとカチュアがモスに居たのは多分アマリアの行軍に便乗して出奔したってところだろう。

 二人は出奔した理由はなんとなく理解る。

 重用されない立場んだろーなきっと。

 まあ傭兵になる聖騎士あるあるだな。

 

 で問題の氷の精霊と契約した同郷さんの方はなぜ国を離れた?

 大人しい性格なんだろ?

 どーにも違和感がある。

 精霊と契約をしたのは保護された後だ。

 つまり保護された理由は精霊との契約とは別にあるって事だ。

 他にどんな特徴があるかいえば、相当な美少女だった…って…それが保護された理由か?

 

 チュリアと一緒に聖女検査を受けたなら歳はチュリアと同じか。


 もし美少女だったことが保護された理由だったとして、国で保護するほどの美人ってことだ。

 しかしあそこは代々女王が国を治めている。

 本来美女を囲う必要がない。


 そこまで考えた時、モスのギルドで職員が言った言葉がふとよぎった


 ”アマリアの姫がこの国の第二王子に嫁ぐ事になっていたのは知ってたか? ものすごく美人らしいと噂の”


 ギルドの職員がアマリアの姫が相当な美人だと何故知っていたのかは置いておくとして、モスに嫁ぎにくる途中巨兵の戦闘に巻き込まれて死んだとされている姫。

 もしその姫がアマリアに保護された美少女で実は生きていたなら……

 突飛で現実味が無い思いつきだけど。


「可能性はゼロじゃないわなぁ」


「なにがゼロじゃないのさ」


「あ、まあなんでもない」


 思わず口にでてしまったか。

 アマリアの姫に関することだから二人が隠そうとしているってのもそれならそれでいいか。

 それよりもなんか…何かに…巻き込まれちまった気がする。



☆☆☆☆☆



 補給の為立ち寄った村では驚かれた。

 というのも魔物が発生した方から俺たちがやって来たからだ。

 魔物はもう居ないと伝えると大層喜んでくれた。

 魔物が村に来るんじゃないかと恐怖を抱えた日々を過ごしていたからだ。

 こういった辺境の村々は魔物避けの結界を使っているもんだが、それでも不安だろうし商人が通らなくなったら死活問題になる。

 

 そこで村長から冒険者3人組が静止も聞かずに魔導王国側にある小国、即ち魔物のがいる砂丘に向かったと聞いた。

 この地方の覇権を争うミレーと魔導王国だが、お互い交易が無いわけではない。ミレーの属国の小国としても海洋交易を行うミレーからの物資は必要なのだろう。

 

 この冒険者3人が氷の聖女御一行に違いないだろ。

 行き先は小国ではなく、その先にある魔導王国ってところか。

 見失った以上3人についてはどうしようもない。

 せいぜいに敵になる事が無いように祈るくらいか。

 無事に補給を俺たちは本命の依頼を果たすべく、目的地を目指して村を発った。


(続く)

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