表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

一時間目【デス・アンケート】Ⅲ

  血のにおい……

 

  泣き叫ぶ生徒……


  教室から出られないという恐怖……


  攻略法なんて、見つからない迷宮のようなゲーム……


  (足りない……)


 恐怖という絶望が足りない……


  今回のゲームは、甘すぎる。


  やはり、約束通りゲーム運営者が参加している?


  なら、誰だ……


  試しに、目が会った奴全員に口パクでこう言おう……


  (お、ま、え、は、ゆ、る、さ、な、い)


  いきなり、ビンゴか……


  愛斗……あいつが……


  午前9時13分


  ********


  午前9時23分


  隼牙がした行動により、教室は、恐怖の音が消え去るくらいの静寂に包まれていた。


  考え込む生徒。

  口を開けて驚いている生徒。

 驚き過ぎて動かなくなった生徒。

  モニター越しにソワソワしている《そいつ》。

  様々だった……


  その中で一番驚いていたのは、柊 愛斗だった。


  愛斗は、予想外だった……


  愛斗の予想では、隼牙は、このゲームで死ぬはずだった。


  人が次々と死んでいく、この状況の中で『他人を殺したいと思っている』なんて言えるはずがない……


  言ったら、生徒全員をほとんど敵にまわす事になる……


  それは、いくら隼牙でも出来るはずがない…… と愛斗は、結論を出した。


  だが、隼牙は、愛斗の予想を遥かに上回る行動した。


  愛斗は、隼牙に敗北したも同然だった。


  (神風隼牙…… お前は、一体何者なんだ……)


  愛斗は、溢れ出そうになった感情を押し殺した。


  (やはり、隼牙が『***』なのか?)


  愛斗が色々と考えている中……


  教室は、まだ静寂に包まれたままだった。

  おそらく、3分程度続いただろう。


  「このまま、授業(ゲーム)が終わればいいのに」 と考えていた生徒が多数いただろう……


  しかし、《そいつ》がようやく落ち着きを取り戻した。


  その瞬間、謎の雰囲気に包まれた静寂は、終わりを告げた。


  『何故かな? いつ気づいたの?』


  怖いくらい静かな教室で、最初に声をあげたのは、《そいつ》だった。


  「・・・・」


  「【デス・アンケート】が始まってからずっとだ……ずっと疑問に思ってた……」


  『何を疑問に思ってたんだい?』


  「お前に答える必要はない…… 」


  隼牙は、《そいつ》の問いに冷たく言葉を返した。


  『ふふふ ふふふ 隼牙くん…… 君……僕をバカにしてるのかな? 君が早く答えないと……クラスのみんな殺しちゃうよ?』


  「「!!!!!!!!」」


  『そいつ』の一言で生徒たちは、直ぐ様隼牙の方に視線を向けた。


  (早く言えよ……)

  (死にたくない死にたくない)

  (黙ってないで早く喋れよ!)

  (無口野郎……ふざけんなよ!)

  (あぁ、助けて助けて)

  (怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)


  生徒たちの心の中の声は……隼牙を責めていた。


  それを、察した隼牙は、立ち上がって突然笑いだした。


  「くっくっく……はっはっはっは」


  その笑い声は、密室の教室で虚しく響いた。


  「笑ってないで早く答えてよ! 私たちを見捨てる気?」


  隼牙の不謹慎な行動に紗耶香は、喚き散らした。


  普段の紗耶香からは、想像もできないくらい険しい顔になっていた。


  「なぁ、杉原……これが笑えずにいられるかよ……」


  隼牙は、紗耶香を睨み付けた。

  その後周囲を見渡して、再度紗耶香に視線を戻した。


  「お前らは、俺を見捨てたよな?」


  「「・・・・・」」


  隼牙の一言でほとんどの生徒たちの心の声は沈黙した。

紗耶香も隼牙の一言で下を向いて、隼牙から目をそらした。


  生徒たちは、愛斗の作戦に乗っかり、隼牙を『犠牲者』に選んだことを都合よく忘れていたのだ。


  「本当に都合のいい奴等だな…… 」

 

  隼牙は、紗耶香から《そいつ》に視線を向けた。


  「これで分かっただろ? 例えクラスの奴等が殺されても俺は、別にいいんだよ! だから答える必要もない……」


  そう言いながら、隼牙は、教室に設置されている時計を見た。


  (9時29分か……あと16分……)


  時計を気にしていた隼牙を《そいつ》は、見逃さなかった。


  『しょうがないなぁ、そういう事ににしといてあげるよ……  実際みんな殺しちゃったらつまんないしね……』


  「・・・・・・・」


  『ところでさ、何で時間気にしているの?』


「え、いや、あの、え」


  隼牙は、《そいつ》に時計を見ていた事を質問されると突然、挙動不審になった。

 

  『ん??? まさか……今まで……ただの時間稼ぎだったとか言わないよね?』


  隼牙は、突然俯いた。

  立ち上がっていた隼牙は、椅子に座りうつ伏せになった。


  その様子を見ていた、生徒たちと《そいつ》は、驚きを隠せなかった。


  『まさか…… 嘘だろ…… 流石にびっくりした…… 攻略法なんて初めから知らなかったのか……』


  隼牙の不自然な行動の連続で《そいつ》を含めた生徒全員混乱していた。


  『くそー! 騙されたぞ! もう怒ったぞ……次の質問は、不意を突いて他の人に当てるつもりだったけど……隼牙くん……また君に答えてもらうよ……』


  隼牙は、うつ伏せたままニヤリと誰にも気付かれないように笑っていた。


  (計画は、ほとんど完了した……)


  隼牙は、自分が犠牲者になったとき3つの事を計画した。


  [計画1]誰もやって無いことをする。

  すなわち、【問題】を<白い機械>を外して答える。


  [計画2]時間稼ぎをする。

  すなわち、いろいろなキャラクターを演じることで相手を混乱させる。頃合いを見て時間稼ぎと気づかせる。


  [計画3]予想する

  すなわち、計画1、2によって《そいつ》が吐き出した情報で、この授業(ゲーム)の核となる本当のルールを予想する。それと、同時に攻略法を導きだす。


  《そいつ》 は、言った……

  『何故かな? いつ気づいたの?』と……


  <白い機械>を付けていなかった状況での、その質問は、

  毒針は、嘘。

  もしくは、嘘発見機は嘘。


  その2つの嘘に絞られる。


  奥田啓が死んだことから、予想すれば毒針は、真実という事になる。


  嘘発見機は、嘘 ……


  では、何故……奥田啓は、死んだのか?


  それは、予め調べておいたデータと一致しなかったからだろう……


  それが、隼牙の結論だった。


  その結論が出た瞬間、攻略法は、出来上がった。


  「今」だ。


  データは、大雑把に言えば過去の物だ。

  先程の【2問目】を例にすれば「今は、殺したいと思っていない」

 と言えば、判断するデータがないため正解になっただろう。


  そして、その攻略法が正しいか確かめるための[計画2]


  この[計画2]で《そいつ》を怒らして、また自分に質問をさせる。


  隼牙は、失敗すれば命がなくなる3つ計画を見事にやり遂げた。


  『では、【3問目】行くよー! 隼牙くんには、スペシャル問題を出してあげよう!』


  隼牙は、起き上がり《そいつ》の方に視線を向けた。


  (スペシャル問題? 何だ、それは……)


  隼牙は、少し不安になった。


  もしかしたら、自分の予想は、外れたのではないかと……


  『では、【3問目】真田(さなだ)花鈴(かりん)は、人殺しだ! さあ、どっちかなー? どっちかなー? 早く答えてー!』


  隼牙は、その問題を聞いた瞬間、崩れ落ちた。


  (そういう事か……ようやく分かった)


  隼牙は、死を受け止めた……


  この授業(ゲーム)の正体は、ほとんど隼牙が予想した通りだった。


  <白い機械>は、嘘発見でない。


  予め調べておいたデータが判断材料。


  しかし、1つだけ大きな事を見落としていた。


  この授業(ゲーム)は、その人が一番言いたくない真実を問題として、問われるという事だ。


  過去を乗り越えた者にしか、答えることができない……


  【3問目結果発表】


  花鈴は、人殺しじゃない。


  『ぶぅ〜 不正解でぇーす! 君は、過去を乗り越える事ができなかったんだね! 情けない男だなー』


  クラスがざわついた。


  それは、この異常な空間の中で今までほとんど冷静だった隼牙が死ぬという結末になったからだろう。


  しかし、当の本人は今から、死ぬというのに冷静なままだった。


  花音と冷は、後悔していた。

隼牙が犠牲者に選ばれる時、何故愛斗にもっと反論しなかったのか。

二人は、自分達の無力さに絶望していた。


 隼牙は、その2人に歩みよって言葉を放った。


「生きろよ……」


その瞬間、花音と冷は涙が自然でてきた。


「ごめんなさい…… わたし…… あなたの何の役にもたたなかった…… うっうっ ごめんなさい……」


花音は、泣きわめていた。

冷は、涙を流しながら隼牙に駆け寄ろうとしたが隼牙が(来るな)と手で合図した。


「ありがとうな 俺のために泣いてくれて!」


隼牙は、今から死ぬ者とは思えないような笑顔だった。


  そして、自分の席に戻った


  隼牙は、目を閉じた。


  (過去を乗り越えるよりさ……大切な事は、あると思う……たとえその人が死んでいても……大切な人を守る事ができたなら後悔はない)


  『それでは、嘘つき者の隼牙くんは〜〜〜 レッツ死刑ー!』


  (でも、復讐できなかったのは、くやしいなぁ)


  『プシュっ』


  隼牙は、静かに倒れた。


  午前9時35分


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 


 


 


 



 

 

 


 


 


 


評価だけでも良いんでよろしくお願いいたします!

後、しばらく諸事情で間が開きますがこれからもよろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ