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僕の名前は鏑木 秀。かつて天才子役としてもてはやされた過去がある。
そんな僕にはちょっと変わった趣味がある。
その趣味とは、女装だ。
「シュウちゃん、今日もカワイイねっ!」
「はぁ〜い、おさわり禁止でぇ〜すっ。あと僕、女装が趣味だけど、男が好きなわけじゃないから。あ、カワイイって言ってくれたことには感謝します。ありがとう」
週末は女装パブで女装して、気分をリフレッシュしている。
趣味と実用兼ねてるんだけど、こういう勘違いした客がつくと困るんだよね。
「そんな堅苦しいこと言わないでよ、シュウちゃん」
「はい、はい、はい、はい。そこまでよ。お客様は大事だけど、シュウは大事なお店の看板娘なんだから。気安くさわるんじゃないのっ」
人は僕のことを女顔の優男なんて言うけれど、だったら女装しても役に立つわけだから、気にしたことがない。
こうして客からからまれるとすぐにたすけてくれる店長のアキナさんは、筋金入りの女装趣味で、僕にお化粧の手ほどきをしてくれた人だ。
なんの因果かこの店で働くことになったけど、実はまだ恋をしたことがないんだよね。
いや、断じて男が好きなわけじゃないんだよ?
ただ僕、子役だったからさ、同年代はガキにしか見えなかったし、芸能界の裏側も見ちゃったもんだから、恋をする暇がなかっただけなんだよね。
いつか、僕より可愛くなくてもいいから、そこそこ綺麗なお嬢さんと未来について語り明かしたいなというのが、最近の夢なんだ。
「それで? シュウちゃん、子役やってたんでしょ? すぐ泣けるの?」
また別のお客にからかわれてしまった。
「もちろんです。別料金払ってくれたらいくらでも泣きますよ? 涙一粒で千五百円ですけど、どうします?」
なんていうのかな、こう簡単に子役を泣かせれば数字が取れると思っている監督とおなじ感覚の客って多いんだよね。こちとら命削って泣きの芝居をしてたんだからさ、少しは敬って欲しいくらいだよ。
「ほら、またシュウを追いつめてぇ〜。子供が泣いたら数字が取れるなんてナンセンスだわ。そうでしょ? シュウ」
「はい、店長」
「せめてママって呼んでくれない?」
そんなわけで、今日も高級ボトルを奮発してくれたお客様には感謝感激、雨あられってわけ。
お金さえ払ってくれるんなら、いくらでも泣いてあげるんだけどね。
つづく




