第四十二話:ソファの真下の歪みと掃除屋の鉄槌
瀬戸の親分が身動きを封じられている本革ソファ。その周囲に漂うおぞましい霊気の出どころを突き止めるべく、有世はすぐさま手元のタブレットへ鋭い視線を落とした。
「――晴明先輩、見つかりました。この総本部をまるごとフリーズさせている術式結界のコア、その発信源は……まさに今、瀬戸の親分が座られているそのソファの真下です!」
有世のその言葉が探偵のオフィスばりに張り詰めた部屋に響いた瞬間、博雅の拳に黄金の氣が、道満の指先に黒紫の霊気の火花が同時に爆ぜた。
「OK。親分が自身の霊力で結界を押し留めとるのを利用して、その足元に一番エグい呪物を隠しやがったな、睦会のクソどもが」
俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、掌の中でカチャリと冷たい金属音を響かせながら、親分の足元へ向けて一歩を踏み出した。
「ハッ、上等や。親分、ちょっとそこ動かんといてな。日本一の看板の真下に仕込まれた違法なゴミクズ、俺たち掃除屋が力ずくで引きずり出してブチ壊したるわ」
ソファに深く腰掛けたままの瀬戸の親分は、凄まじい眼光のまま不敵にニヤリと笑い、俺たちの突入を黙って網膜にロックオンしやがった。
俺が騰蛇の黒紫の業火を右手に宿し、親分の足元の重厚な絨毯を容赦なく剥ぎ取った瞬間、そこから現れたのは、ドス黒い粘液を滴らせながら奇怪な拍動を繰り返す、不気味な髑髏の呪物だった。
ギャァァァァァァァッッッ!!!!!
依り代を暴かれた瞬間、総本部の壁や天井から、教頭の時とは比べ物にならないほどの、睦会のどす黒い怨霊のトラフィックが津波のように一斉に俺たちへ向けて牙を剥きやがった。
だが、新生徒会としてこの街を守る俺たちの防衛線は、そんなローカルバグのような襲撃に1ビットたりとも揺らぎはしねえ。
「――道満、博雅! 上から降ってくる雑魚どもをまとめて焼き払え! このコア(呪物)は俺が直接タスクキルする!」
俺の声と同時に、道満の呪術と博雅の黄金の氣が総本部の闇を真っ二つに裂き、俺の放った騰蛇の絶対火力が、ソファの真下で脈打つ最大のエラーコードへと真っ正面から突き刺さった。
日本一のヤクザ組織の最深部でブートされた、新生徒会と九州の巨悪による初の直接迎撃戦。動かない総本部の冷え切った空気のなかで、俺たちのストリートの熱量は、仕掛けられた最悪な罠を内側から爆破するように、狂おしく、激しく燃え上がりやがったんだ。




