【こぼれ話】君を守るための誓い
それは一瞬の出来事だったという。
彼らの両親に起きたその不幸な事故は。
葬儀の日、ヴァインとクライドは手を繋いで泣いた。
ロイエンタールは厳しい顔でひたすら涙を堪え続けていた。
ヴァインとクライドは抱き合って泣いた。
泣き続けた。
泣きつかれて抱き合ったまま眠った。
起きて、優しかった両親がいないことにまた泣いた。
また眠り、目覚めてはまたふたりで泣く。
ヴァインにしがみついて泣きじゃくるクライドを見て、彼の瞳にある決意の火が灯る。
数日後、ヴァインは祖父の執務室を訪ねた。
「…入れ。おお、ヴァインか、どうした?」
既に王位を退いていたヨーゼフは、若くして王位を継ぐことになったロイエンタールの補佐として王宮に戻っていた。
彼は可愛い孫の来訪に相好を崩して迎え入れ、メイドに命じて茶と茶菓子を用意させた。ソファにヴァインを座らせ、自分も隣に腰を下ろす。彼はその大きな手で可愛い孫の頭をぽんぽんと撫でた。
「お祖父様、僕は騎士になりたいと思います。」
ヨーゼフは、ヴァインの唐突なその宣言に驚いた。
「どうした、ヴァイン。騎士物語でも読んだのかな?」
「僕は強くなりたいのです。ロイエンタール兄様を支えられるように。クライドを守れるように。」
ヴァインの脳裏には、落涙を耐え肩を震わせるロイエンタールの姿、ヴァインにしがみついて泣きじゃくるクライドの姿があった。大好きな兄、大切な双子の弟。
「皆を守りたい。もう誰も泣いたりしないように僕が守るんだ。」
その子どもらしく真っ直ぐな瞳。
ヨーゼフは彼を優しく諭す。
「剣の練習がしたいのなら、良い師をつけてやることもできるぞ。騎士は楽な道ではない。剣や槍の厳しい鍛錬、魔法の修練、遠征や野営などの訓練もある。それはお前に耐えられるのかな?」
「耐えられます!僕は本気です!」
―ふう…この子は真っ直ぐで真面目で頑固だ。言ってもすぐ諦めるような子ではない。
あの、1000年に一度の女神の交代時に起こるという騒乱、あれがこの子の世代で起きないとも限らない。生きる術を身につけておくのもよいか…―
「分かった、ヴァイン。少年兵の訓練を受けられるよう手配しておこう。お前はまだ8歳だ。とはいえ、一度やると決めたのなら、簡単に音を上げるのではないぞ。」
「ありがとうございます、お祖父様!頑張ります!!」
後に《鉄壁の死神》とも呼ばれることになる、ヴァルデマイン・フォン・ローゼンブルグ。
これが騎士となる日の第一歩であった。
これが第46話に繋がります。
彼ら双子の心の乖離として。




