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弱者を踏み付けにしておかないと死ぬ病

挿絵(By みてみん)


しばらくして私の元にラッセルとレヴィンがやってきて

「先程の男は連行させたから、安心していい」

と声を掛けたが


私からすれば

「結局、あの人、何だったんですか?」

と腑に落ちない。


ラッセルが

「昨日話したな?選択起動型スキルは使える限界を過ぎれば『スキルが不発で終わる』と」

と確認した。


私が頷くとラッセルは

「お前のように選択起動型スキルの使える限界が『倒れる』とかだと『自分自身の体調管理不足でスキルを使えない』ようにも見える。

『人によっての仕様の違い』はスキルの使用回数限界に限らずだが、そういったものはきちんと考慮する必要がある。

だがそういった考慮すべき案件を考慮に入れず『怠けている、自己管理してない』と腹を立てる者も世の中には居るという事だ」

と言い、更に言葉を続ける。


「アイツはそういった問題をこれまでにも起こしてきている。しかも今回は同じ騎士団内ではなく、騎士団所属でもない民間人の冒険者であるお前に対して行っている。

ただ心情的には分からないでもない所もあるんだ。目が潰れた患者がアイツの従兄弟だからな。

患者の男は民間人の冒険者で、アイツが誘った事で任意で騎士団の訓練に参加していた。

早めに治療して欲しかったんだろうが、アイツからすると『後回しにされてる』ように見えていたようだ…。

後先考えずに衝動的に弱い者に感情をぶつけるああいう生き方は感心しないし、身を滅ぼすキッカケにもなるので、改善して欲しいところだが、俺達が何を言ってもヤツの耳には入っていかないらしい…」

と事情を教えてくれた。


「要は派閥内の身内で、皆の足を引っ張る疫病神みたいな男って事ですか?」


「端的に言うとそうだ」


「…なんて名前の人ですか?」


「ドミニク・ハーツホーンだ」


「また、ハーツホーンさんですか…。薬材商ギルドのギルマスのハーツホーンさんの性格がアレな感じだったんで、『ハートフィールド公爵派って一枚岩ではないんだろうな』と思ってはいたんですが…。

ハーツホーン家の人達は『弱者を踏み付けにしておかないと死ぬ病』にでも罹ってるんですかね?」


「…似たようなものかもな?…これからお前に【治癒】スキルを使って欲しい患者もハーツホーンなんだが、お前と同じ冒険者だし、面識がある筈だ」


「………」

(治してやりたくないな…)


患者に対する好き嫌いというのは医療機関の人達にもあるのだろうけど、私にもやはりあった。


それでも包帯でグルグル巻きにされて顔もよく分からない「ハーツホーンさん」にちゃんとスキルを使って魔力消費して治療するのだから…


自分で内心

(私って律儀で誠実な人間だよね…)

と自画自賛した。


ちゃんと魔法が効いた手応えはあった。

「ちゃんとスキル使いましたが、本当に効いたのか、包帯を取って確認してもらえますか?」

と私が言うと


レヴィンが確認も兼ねて患者の包帯を取っていく。

患者はグッスリ眠っているらしく頭を持ち上げられて包帯を外されてるのに起きない。


「目を覚まして目を開けてくれない事には失明を免れたかどうかは分からないんだが…」

とラッセルが苦笑する。


私は

「…腐りかけの顔の肉も目玉もちゃんと復元してるんで、視神経が回復してなくて片目が見えなくなってても見た目は元通りだし問題ないんじゃないですか?

足とか手をくっ付けた人達も神経とか筋肉とか一度切断されてるんでリハビリしないと見た目だけ元通りで、動きは訓練し直しになると思いますよ。

スキルで命は繋げても『何もかもが元通りになる』などとは期待しないでくださいね」

と注意喚起しておく。


「…それにしても、この『ハーツホーンさん』の顔、何処かで見たような…」

と思ってる間に、当の患者が目を覚ましたらしく


「…ん、…ん?」

と間抜けな表情で目を開いた。


「ちゃんと見えてますか?」

私が問いかけたが


「………」

返事はない。


(やっぱり視神経が回復しきれてなかったか…)

と私が魔法の限界について考えて居ると


患者はラッセルを見ながら

「ギルマス…」

と呟いた…。



********************



他の患者に関しても

「目を覚まし次第、損傷していた箇所の動作確認をさせる」

と約束してもらって私は宿屋へ帰った。


朝、目を覚ましてからこのかた治癒魔法を使っては寝る、という事しかしていないが疲れたのである。


(普段使わない魔法を使うと効率が悪くて疲れやすい、とか、そういうのが原因としてありそうだ…)

と自分でも思った。


本当は

「冒険者ギルドへ行って、ガメつく緊急依頼の依頼報酬が振り込まれているか確認するべきだろう」

と思わないでもないが…そうする気が起きなかった。


部屋に帰り着いて思ったのは

「何か美味しいものを食べたい!」

という事だった。


部屋に帰り着いて、お寿司と刺身を「バックオーダー」で出し、美味しく頂いてから、またベッドに横になった。


寝てばかりだと太りそうな気もするが、お腹が出っ張った気配はない。

魔力を消費することでカロリー消費されてるらしいので、魔法を使って何も食べずにいたら逆にドンドン痩せていくのかも知れない。


(宿屋の晩御飯も食べたい)

と思ったので、そんなに長くは昼寝できない。


それでも「食っちゃ寝」が魔力回復に一番効果があるので、今日くらいは自堕落に「食っちゃ寝」してて良い筈だと思った…。

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