閑話-8 百の夜が明けるまで-1
「なんで・・・私がっ・・・こんな目にっ!」
目の前にあるのは、死体の山。数分前まで人であったものである。
「恨むなら自分の運命を恨め。」
その死体の山と彼女との間には1人の男性がたっている。
「さて、君にとっては残念なお知らせかもしれないが・・・」
「ふざけるな!実験が続けられると思うなよ!」
「これも、世界のためだ、世界の終末の回避のために犠牲になるんだ。悪くないだろう。しかも、死ぬわけじゃない。まぁ、一時的には死ぬが、一生を通してみれば悪くない経験だと思うのだが。」
「まだ、死んだほうがましよ!あんたたちに利用されるぐらいなら!」
「なら、残念だったな。君はもう、死ねない。少なくとも君の知識・技術・力では無理だ。」
「・・・っ!貴様ぁ!」
「さてと、君以外にもこの死体の山も処理しなくてはいけないからね。なに、全て君の支配下に置かれるように調整はしておくさ。」
「貴様は、なんでこんなこと・・・!」
「言っただろう、世界の終末を回避するためだと。君にはまだ理解できないかもしれないが、この世界は不安定なのだよ。誕生の経緯自体からして、正直いつ滅んでもおかしくはない。」
「だからと言って、こんなに、数万人を犠牲にする必要も無かったでしょうに!」
「新しい種族を作るんだ。一人二人じゃ足りないに決まっているだろう。」
新しい種族、それは鬼であり、今までは昔話や物語に出てくる。空想上の存在であった。
しかし、今はその種族が実在している。現に、彼女自身がそうであるように。
「貴様の目的が何だかは知らないけれども、なぜ人を食らわなければ生きていけないような存在を作り上げた。いったい何のつもりで・・・!」
「君は昔話を聞いたことがあるかい?もちろんその中のほとんどは人によって作られた、空想上の話だ。ただ、例外もある。」
「例外・・・?」
「誰もが知っているであろうが・・・『神魔大陸創造維持伝』はご存じかな?」
「知ってるわよ。詳しくは知らないけれども、概要ぐらいならだれでも知っている。」
「それこそが例外なのだよ。」
「例外って・・・まさか!」
「そう、あの物語は大体が真実だ。というよりも物語というよりも歴史書に近い。」
「だけど、それがこれとがどう関係しているっていうのよ!あの物語に魔族は出てくるけど、鬼は出てこない。」
「その通りだ、ちなみにここで補足しておくが、あの本は大体が真実だ。要するに一部事実と異なることも書かれている。・・・君は、魔族がどのようにして誕生したかは知っているかい?」
「知らないわよ。それこそこの世界の七不思議に含まれていえるほどじゃない。」
「その通りだ。だが、分かっていることもある。それは純粋な人族という存在から派生している。ということだ。そして、性能は繁殖能力を除いてほとんどが純粋な人族の上位互換だ。」
「そうね。だけど、その繁殖能力の低さによって人間と共存できているともいわれているわよね。」
「そうだ、もし今魔族と人間とが戦えば引き分けに終わるだろう。」
「それに、何か問題があるとでも?」
「そうだ、鬼にはその間に入る。第三勢力となってもらいたいのだよ。」
「第三・・・勢力・・・?」
「そうだ、もしも魔族と人との間で戦争が起きた時にどちらにでも味方になれるようにしておいてほしい。逆に言うとどちらの敵にもなれるようにしておいてほしいということだ。」
「誰が、あなたの要求なんて・・・」
「この世界は三度滅んでいる。三度目は知っているだろう。」
「三度目・・・?私が知っている限りは文明の発達のし過ぎだけれども。」
「そうだ、それが三度目であっている。そして、二度目は・・・」
「まさか!そうか、確かに魔族が出現し始めたのもあの頃・・・!」
「その通りだ、ちなみに一度目の原因はいまだ不明だ。」
「・・・って!こんな話はどうでもいいのよ。それと私達・・・鬼はどういう関係なのよ!」
「そのうち分かるさ。」
「今話せ!」
「はぁ、仕方がないか・・・鬼は魔族をまねて作った存在なのだよ。まぁ、結果としてはその実験は失敗してしまい、人としての理性を失わないために人を食わなければいけなくなったわけだが。」
「鬼は失敗作なのね・・・で、魔族をまねて作った存在、それが鬼であるのならば、鬼の存在意義は・・・」
「それこそ自分で探せ。」
その時、死体の山が揺れた。
「そろそろ、鬼化の完了らしい。後は任せたぞ。」
「誰が任されただなんていったの!」
「お前以外に、誰に任せられるというんだ?では、私はこれで。」
「まちやがれ!おい!まだ聞いてないことも・・・」
瞬きをした一瞬で彼はその場からいなくなっていた。そして、残されたのは・・・
「ここは・・・いったい・・・?」
「どうなってるの?私の体・・・!」
「助けてぇ!怖いよ!怖いよぉ!」
自らの体の異変に気付いた先ほどまで死体だった者たちと、彼女だけである。
「全員が鬼へと変わったですって・・・誰一人残さず・・・そんなこと、あり得て言いはずが・・・!」
その日から彼らの人生は、大きく変わってしまった。




