32話 戦争開始
「うぅ、寒い・・・」
現在、季節は・・・知らないけど、さすがに夜は寒い。
え?なんで夜に起きているのかだって?もちろんキルトにゼナからの伝言だとかいわれて、ナノ国と鬼国の国境付近で待機中だからである。
流石に領土の中に入ってきていない敵国軍を攻撃することはできないので、国境から1km離れたところで身を隠しているのである。
まぁ、今回危険なのは敵の軍隊でなく鬼国の王・・・百夜と彼女の能力である。よって、今前方にいる軍を俺は相手しない。前方にいる軍を相手するのはキルトである。
「・・・絶対に逆だろ。キルト、お前の方が強いよね?やっぱりお前が王の相手した方がよくない?」
「いや、ゼナの命令だから。逆らったら面倒くさいし、ほら、ゼナも言ってたって言ったじゃん。相手がお前のこと知らなくて混乱するんじゃないかって。」
「それでも、お前が言った方がいいだろ。」
「まぁ、確かにそういわれたらそうなんだけど、俺も相手の国の王城に一人で突っ込んでいくような面倒なことはしないぜ。」
「あ、何お前、俺が今からやることを面倒だと。そう言いましたか。」
「そうだよ。今回一番面倒くさい仕事押し付けられてるのお前だもん。」
「あのくそ国王、後で一発ぶん殴ってやる。」
「いいね、その勢いで百夜をぶん殴ってやれ。」
「そういえば、24時頃から攻撃が来るっていうのが予知内容でしたよね。今って何時だ?」
「23時58分。」
「あ、もう始まるのか。」
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2分後
「あれ、全然攻めてこないけど、本当に戦争始まるの?」
「さあね、未来予知も完璧じゃないだろうから、少しのずれくらいあるんじゃないの?」
「まぁ、そうか、少しのずれくらい・・・」
次の瞬間、ドカンッ!という音とともに後ろの町から炎が上がった。
「あー俺の時計が23.7秒ずれてたわ。」
「それにしても、なんで後ろの町が・・・」
「簡単なことだよ。この国のすべての場所が百夜の能力の射程範囲なだけだよ。」
「まさか、地中に埋めてあった血を使って・・・!」
「まぁ、詳細は実際に戦って確かめるんだな。」
「おい、そういうのって事前に知っておくべきことじゃ・・・」
「さぁ、行ってこい!」
そのままキルトに全力で投げられる。
なんで?右手をつかまれてそのまま遠心力を使って投げられたけど、右手引きちぎれるかと思ったよ。
そのまま1分くらい飛行した。途中で鬼国の王城っぽいのが見え始めたのだが、その辺りで落下を開始し、王城に一番近い森に着地した。
「なんて雑な扱い・・・まぁ、コントロールはいいのかもしれないけどさ。」
それにしても簡単に国境を越えれたものだ。鬼国に迎撃装置とかなくてよかったと思う。
さて、ここからどうしたものか・・・別に何にも指示無いため、最初は念話をすることを考えたが、念はあくまでも空気中の魔素を介して行われるものであるため、察知される危険性があることと、第一キルトたちとの距離が遠すぎて念話が届かないと思われる点からあきらめた。
では、今どうしているのかというと、慎重に進んでいるだけである。王城まで直進でゆっくりと。
「選択を間違ってないといいんだけど・・・」
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「姫様、ナノ国から我が国へ侵入したものがいることが先ほど判明しました。いかがなさいましょう。」
「とりあえず王城まで案内するのじゃ、話はそれからなのじゃ。」
「しかし、それでは姫様が危険な目にあってしまうのでは・・・」
「それはないじゃろうな。見た感じあまり魔力量もあまり大きく無さそうじゃし、どうせばれないように国に侵入してきた間諜じゃろう。どうせ弱いだろうから殺して見世物にしてやるのじゃ。」
「わかりました。」
「それと、各軍の動きはどうなっておる?」
「今回は16軍を16方位に配備しておりますが、各方面に強敵がおり、それらを排除するのに時間がかかる模様です。」
「ほう、ならばわらわは王宮攻略でも行うとするかの。」
「本当にいいのですか?王宮攻略を姫様一人に任せてしまって。」
「よいのじゃ、お前らはいつも通り仕事していればよい、それだけで戦争はあっという間に終わるのじゃ。」
「ならばよいのですが・・・」
「ほれ、用がないなら仕事に戻るのじゃ。わらわも仕事があるからの。」
「では、失礼します。」
「仕事、頑張るのじゃぞ。」
百夜の側近が彼女の部屋から退出する。それと同時に、彼女は部屋に鍵をかける。
「・・・本当はこんなことはしたくないんじゃが、国民のためじゃ・・・」
彼女は能力を発動・・・いや、厳密にはすでに発動しているのだが、能力の操作を開始する。
「『鬼姫』」
能力『鬼姫』それは血を操る能力として広く認知されている。しかし、その本質は血を構成する物質の物理法則等を完全に無視するというものである。
また、効果範囲は彼女の認識可能な範囲内に存在するすべての生物の定義上血としてあらわされる物すべてである。
これによって、彼女の認識するすべての血の状態や質量、体積の変更が可能となる。また、血を構成する成分まで変えることができたりする。
ちなみに彼女の認識する範囲というのは魔法で強化されてはいるものの、ナノ国すべてと自国である。要するに彼女の能力を使えばナノ国の住民の血を一瞬で凝固させたりすることが可能なのである。ただ、それでは一人ひとり殺していかなければいけないため、彼女がとった方法はナノ国の地下に彼女の血を張り巡らせておくことである。
質量や体積を変えられる。ということは血を個体にさせ、さらに形状を自由自在に操ることも可能なのである。要するに『鬼姫』が発動した瞬間、ナノ国の地下から大量の血が襲ってくるということである。
今ナノ国の地下にある血を根とするのならば、そこから枝分かれした凝固した血が木が生えるように出てくるということである。
と、ここまで、説明すれば一応、先ほどの町から炎が上がった現象にも説明がつく。彼女は自身の血を鋭い針状のものへと変化させ、地下から血を出現させ町の武器庫を破壊したのである。もちろん弾薬などもいくらか置かれているため、それが破壊され、爆発したのである。
「これで、王宮の破壊は完了じゃの、後は・・・」
「どういうわけで俺をここまで連れてこさせたんですか。百夜さん。」
「もうたどり着いたのか?道を開けていたとはいえ、はやいのう。」
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鬼軍第三部隊にて
「よし!時間だ!行くぞお前らぁー!」
「「「おおおぉぉ!!!」」」
「百夜はこのアリス領を攻めるなと言っていたが、守護獣だがなんだか知らねぇが、俺たちの相手じゃねぇ、目にもの見せてやれ!」
「さすが団長っすね、百夜様の意見も気にしないだなんて。なんて豪快な!」
「ふははは、そうだろうそうだろう。いつか鬼国の王になるのはこの俺様だからなぁ。はははは。」
「ちなみに具体的にはいつ頃鬼国の王の座につくおつもりで?」
「ふん、決まっているだろう。この戦争が終わり次第、百夜のやろうを殺すだけだ、そうすれば、この国は俺らの者だ!」
「うおぉ、さすが、団長!一生ついていきます!」
「そうかそうか、お前らは、俺についてくるだけでいい。俺の命令通りに動いてさえいれば、今後の暮らしも保証してやる。」
「ありがとうございます!」
「さぁ、お前ら、進むぞ!」
「「「おおぉぉぉ!!!」」」
・
・
・
数分後
「ふん、守護獣だか何だか知らねぇが、全然出てこねぇじゃねえか、せっかくなら、戦ってみたかったのだがな。」
「ふーん、それなら、今から殺りあおうか。」
それは、軍全体に響き渡る、美しい声だった。
「ほう、守護獣か何かか?隠れてないで出てきやがれ!」
「出てきてもどうせ視認できないでしょ。」
「なめやがって・・・!いい加減出てきやがれ!」
「まったく、うるさいわね。」
次の瞬間、何かが団長の後ろを横切ったような気配がした。
「チッ移動速度は、速いのか・・・」
後ろを振り向く団長、しかし、時すでに遅しである。
「な、んだと・・・」
後ろにいた隊の者たちが全滅していたのである。しかも、首を斬られての即死である。
「ひぃ、だ、団長!ここはいったん撤退しましょう!」
「いや、大丈夫だ、ここまで見てきてわかったが、相手は速度に特化している。ということは、おおよそ攻撃力はそこまで持ち合わせていないだろう。」
「そ、そういうものなんですかね?」
「おい、とっとと出てきやがれ!隠れてないで正々堂々と戦いやがれ!」
「戦争を仕掛けている時点で正々堂々もくそもないと思うけど、」
「それは、百夜が命令したから仕方なくだ!」
「まぁ、いいか、姿くらいなら見せてあげても。」
すると、森の奥から、一人の・・・少なくとも人の形をした何か、が出てきた。
「おいおい、姿を見せるとか言っておいて、ローブを着てうまく顔を隠しやがって。武器は・・・鎌か何かか。まぁいい、お前、名はないと言う?」
「答える必要も無いかな。」
「なんだとぉ!俺は鬼国第三部隊隊ちょ・・・」
「雑魚が、うるさいわね。」
地には名を名乗ることすら許されなかった団長の首が転がっていた。
「ひぃ、誰か、誰か助けてくれぇぇ」
後に残された隊員たちは混乱し、逃げ惑う、しかし・・・
「面倒くさいけど、一応ナノから頼まれてるのよね・・・一匹たりとも逃がすつもりは、無い。」
後に残っていたのは血の池だけであった。
「あー、またかなり盛大にやってくれたねぇ。一応、聖域の中にも血のにおいは入ってくるというのに。森の中に聖域があること忘れてるんじゃないだろうね。」
「セブン、そんなことより、少しくらい快成のこと手伝ってあげないの?」
「あぁ、そうだった。ここからが面白いんだ、失敗は許されないからね。」
「これを面白がるのもどうかと思うけど。」
「さて、快成、君の全力を見せてくれ。」




