閑話-7 烏忙しく
ナノ国郊外 土地管理番号12-3-C 通称:貧富の町にて
「・・・ッ!お願いします!命だけは!」
乾いた銃声の音とともに、また一人この町で命が奪われる。
「・・・どんなに命乞いしてもお前らが犯罪者であるという事実は変わらないんだよ。」
「こいつが『黒鳥』かお前ら、あきらめろ、俺たちには勝てねぇ。」
「ボス!なんてこと言ってるんですか。このままでは全滅してしまいますよ!?」
「全滅するこたぁねぇだろ。なぁ、『黒鳥』さんよぉ。」
「あぁ、もちろんだ、こちらが交渉を始めるというのに勝手に攻撃をしてきたやつを殺しているだけだ。」
「なら、少しは希望が見えたかもな、そちらの要件はなんだ。まぁ大体予想はつくが・・・」
「私たちの要件はこないだの私たちの作戦の一部に邪魔をしたことについて、どう落とし前をつけてくれるか、ということだ。」
「あぁ、うちの若いやつらがあん時ぁ迷惑かけたな。どう落とし前をつける。と言われても、そちらはどうしてもらいたいんだ?」
「話は通じそうだな。こちらの要求は簡単だ。一ヵ月でいい。私たちの組織の傘下に入ってもらう。具体的には、俺専属の部隊になってもらう。どうだ?お前らの命は保証するとしよう。」
「それで解決するっていうんだったら、話は早いな。詳細な条件を教えろ。」
「明日から30日間俺専属の部隊になってもらう。というのはまぁ前提として、お前らの命は保証するし、今殺した奴らの復活もしてやる。ただし、復活した奴らの精神状態は保証しない。後はお前らの自由にしていい。あ、もちろん私たちに逆らうような真似をしたらさすがに首が飛ぶぞ。」
「そんな生ぬるい条件でいいのか?」
「あぁ生ぬるいと思うなら、そうなんだろうな。」
「・・・なるほど、もしそうしたら、今後一切お前らに逆らえないような恐怖を俺たちに与える、そういうことなんだろ。まぁ、そうしなかったら死ぬんだろうが。」
「その通りだ、もしこの交渉が決裂した場合、私がお前らを全員殺す。」
「なるほど、ならば、その案受け入れようではないか。」
「あなたは頭の回転が速い方らしいな。よかったよ、穏便に済ませることができて。じゃあ、そういうことで頼んだよ。」
「あぁ、そうだ、一つだけお前たちに頼みたいことがある。」
「なんだ?まぁ、条件によっては聞いてやらないこともない。」
「なるほど、『ミカエル』が従うものには優しく接するという噂は本当だったか。」
「その通りだ。よかったな。」
「で、頼みたいことなんだが、今回の件でたぶん、私に失望して下剋上してくるような奴が現れるだろう。そして、君も部外者として私の組織の特に若いやつらなんだが・・・に危険視されて狙われる可能性がある。そいつらを一掃してくれないかね?」
「そのくらいなら、あなたたちの組織との友好関係を築くための最初の一歩としてやってやろうか。」
その時ボスがいる部屋の扉が開く。
「ボス!助けに来ましたよ!そいつが敵ですか。今倒します!」
「やめろ、こいつとは今友好的な関係を結んだところだ。」
「ボスは他の組織の傘下に入ることを容認するというのですか・・・!組織としてのプライドはないのですか。」
「皆の安全を優先しただけだ。」
「チィ!おい、お前ら、ボスを正気に戻すぞ!あいつを殺せ!」
多くの殺意が『黒鳥』と呼ばれた存在に向けられる。
「やれるものなら、やってみたまえ。」
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「全滅か・・・手も足も出ないとは、俺たちの組織も若者の教育はしっかりとしないとな。」
「彼ら、弱かったわけではないですよ。数人からは戦闘における才能のようなものも感じられました。しかし、相手が私だったのが悪いんですよ。」
「まぁ、そうなんだろうな。じゃあ、例の契約は明日から、こちらとしても技能向上を目指せるから助かるな。」
「そう言っていただけると嬉しいですね。では私はこれで。」
「あ、ちょっと待ってくれ、まだお前の名前を聞いていなかったな。『黒鳥』はあだ名みたいなもんなんだろ?」
「その通りだ、まぁ別に名前を隠しているわけではないんだがな。『ヤタ』だ。覚えておいてくれると嬉しい。」
「あぁ、覚えておくよ。というか、一生忘れないだろうな。」
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ナノ国郊外 土地管理番号13-13-Z 特危険指定区域内 超高層建造物(超高層ビル) 通称:天使の心臓 50階にて
「あなたも大変ね。監視だけじゃなくほかの組織の相手もしてあげてるだなんて。」
「この部屋に勝手に入っていいとは言っていないはずなのだが。」
「いいじゃない。別に何もない部屋なんだし。」
彼女が言う通り、この部屋には何もない。あるとしたら備え付きの防衛設備くらいである。
「第一、なんでこんな部屋にいるのよ・・・あ、分かった、ペットの回収作業でしょ。」
「正解だ。というかわかっていっているだろうがペットじゃないんだよ。あと、回収作業っていうな。」
「じゃあ、奴隷?」
「どう考えても違うだろ・・・」
「ヤタは本当にペットのことを思ってるわよね。いいことだと思うわよ。」
「お前、仕事に戻っとけよ。今の俺はおしゃべりしている時間さえ惜しいんだから。てかお前、仕事どうした。さぼったか?」
「ひどいわねぇ、さぼりだなんて・・・はぁ、分かったわよ、仕事に戻るわよ・・・」
「あ、さぼってたのは本当だったか。」
「さぼりじゃなくて休憩よ。休憩。ほかに話す人もいないんだもの、仕方ないでしょ。」
「ボスと話しとけばよかっただろ。」
「ボスは忙しいんです。ヤタ、あんたとは違ってね。」
「お前、ぶん殴るぞ。」
「殴れるもんなら殴ってみなさいよ・・・痛っ!おい!本当に殴るな!」
「その程度で済んでるってことは受け身とったってことだな。どれ、もう一度殴るか。」
「ボスに言いつけるわよ、そんなことするなら!」
「さぼってて怒られるのはどっちだ?」
「ぐぬぬ。」
「まぁ、お前はここから忙しいんだろ、頑張れよ。」
「本当よ、ここからしばらくはあんたより忙しいんだから。」
「俺の疲労を味わってこい。」
「くそ外道が・・・」
「残念ながら、ミカエル構成員になっている時点で良くも悪くもお前も外道なんだよな。」
「うぅ、言い返せない・・・」
「まぁ、俺たちが外道になったことにも意味はあるさ、きっとな。」
「ないわよ、そんな意味なんかぁ。」
「いつか俺たちの願いはかなう。それがもうそろそろだと、君は思わないのか?」
「まさか、今回のイレギュラーな件について言ってる?」
「もちろん。」
「なら、答えは簡単ね。今回で王手をかける。それはほかの皆も同じ考えなんじゃない?」
「そうだろうな、俺もその考えだ。」
「そういえば、将棋を持ってきたのって転生者だったっけ?」
「その通りだが。」
「転生者達、今回はどう動くのか楽しみね。」
「あぁ、彼らは常に特異点だからな。」
「まぁ、その特異点の質が問われるのが今回の戦争というわけよ。」
「・・・」
「さて、戦いの準備はできているのかな?」
女はスマホのような機器を取り出し、画面を見る。
そこに映るのはナノ国の様子である。
「準備は順調なようね。」
「もう24時だぞ、まだ始めないのか?」
「いや、今すぐにでも始めるわよ。」
「転生者っていうのも大変なものだね。君のような者の相手をしなければならないとは。」
女は転移魔法を発動させる。
「もう行くのか。」
「えぇ、もちろん。これが私の仕事だもの。じゃあね。」
「じゃあな。仕事終わったら、戻って来いよ。」
転移先には無数のディスプレイが四方八方に設置されていた。
そこに映るのは、ナノ国の王宮やギルド本部そして、一番大きなディスプレイに映っていたのは神宮寺 快成とその後ろに広がる景色である。
「あぁ、快成君、君と会うのも久しぶりだね。あ、まだ直接会えないんだった。」
次に女は別の画面に目を移す。
「ほかの奴らも準備万端ってわけか。楽しみだね。」
女は能力を発動する。
「さぁ、戦争を始めよう。」




