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INFINITY STORY'S ONLINE  作者: 藤花 藤花
第1章 始まりの町と復讐鬼の軍勢
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第13話 屋敷の女の試し、過去の欠片

~~始まりの町 アルヒ 街はずれの屋敷の一室~~ 


「まずは俺達のことを屋敷に招き入れてくださり、感謝いたします」

「いいのですよ。ドルグからもお願いされましたし、広場にいたあなた達のことを見ていましたがとても良い子達のようでしたからね」


 そう言って女性は俺たちのことを微笑ましそうに見ながらにっこりと笑う。


「え゛っ! 見てたんですか!?」

「ふふっ。はい、見ていました。とても仲が良い様子でとても微笑ましかったです」


 思わず顔が赤くなる。あ~、どこからか見られていたのか! そりゃ公共の広場なんだから見られてもしょうがないが……。指摘されると流石に少し恥ずかしい。

 隣を見るとサクヤも顔を真っ赤にして俯いていた。

 その様子を見て女性は先ほどにも増して、微笑まし気な表情をしている。

 と、とにかく話を変えよう! 


「んっ、ゴホンっ! えーとドルグさんから話を聞いているということでしたが、一応これ紹介状です」


 俺はインベントリに入っていた紹介状を取り出し。彼女へと手渡す。

 女性も深く突くつもりはなかったのか、少し真面目な顔になりながら紹介状を受け取り、中身を改め始めた。

 とはいえ、それほど長い内容ではなかったらしくすぐに顔を上げ俺達の顔を見た。


「聞いていた通りですね。刀の扱いを習いたいとのことでしたが、それはあなたとその子で合っていますか?」


 そう言って女性は俺、サクヤと順番に視線を移した。

 そういえばサクヤはどうするか聞いていなかったな? サクヤへ視線を移しどうするか尋ねようと口を開く。

 だが俺が声を出す前にサクヤは彼女に答えていた。


「はい! できれば私も主様と一緒に鍛えていていただきたいです。ダメでしょうか?」


 最後の言葉は彼女と俺への問いだ。

 もちろん、俺は頷く。

 そして俺が了承したのを見た女性もまた了承したように頷いた。


「わかりました。ですが、覚悟してください。あなた方には私の試しを受けていただきます」


 その瞬間目の前にクエストウィンドウが開く。


■《修行クエスト》極みの道 ■

《内容》! クエストが進行しました! 

▼紹介状を持って、町はずれの屋敷に住む者に会いに行け! 

▼屋敷に住む女の試しを受けろ。

【屋敷に住んでいる女の試しを受けお前の覚悟を示せ。その覚悟の向かう先はこの試練を超えた先にある。(期限:1日)】


《報酬》【???】


 うん。クエストが進んだな。それにしても、いまだに女性の名前がわからない。


「それでは道場に移動しましょう。こちらへ」


 女性の後ろについてサクヤと共に移動する。部屋を出て、屋敷の更に奥へと移動していく。美しい庭の真ん中を通るように廊下が伸びており、その先には日本で見たことがあるような木造の大きな道場がポツンと立っていた。

 扉の前まで移動したところで、女性は立ち止まって振り返る。


「ここからはお一人ずつ入ってください。まずは……シュンさん。あなたからです」


 それだけ言って女性はさっさと中へと入って行った。

 俺は緊張を解す様に深く息を吐く。


「それじゃあサクヤ行ってくる」

「……はい、主様。お気をつけて」


 静かに頭を下げ、見送ってくれる彼女の頭を一撫でし、扉を潜る。

 道場に入ると、着物の袖を邪魔にならないように紐で括り、腰に刀を差した状態の彼女が道場の真ん中で目を閉じながら静かに待っていた。


「来ましたね。シュンさん、我が道場にようこそ」


 そう言うと彼女は閉じていた目を開き俺の目をひたと見つめる。


「まずは自己紹介を。私の名はシズカ。神通流派継承者にして、この道場の主。古き御技を今へと繋ぐ者」


 どこまでも平坦で静かな声。だが確かな意思をもって彼女は俺に問いかける。


「あなたの覚悟がどれほどのものか」


 体を半身にしてシズカは刀の柄にゆっくりと手を添える。

 たったそれだけの動き。それがあまりに自然で思わず見逃してしまいそうになる。

 素人目に見てもわかる彼女の技。

 どうすればこんなことができるのだろう? どうすればこの高みへ行けるのだろう? そして彼女はこの高みへ至るのにどれほどの時間を費やしたのだろう? 

 俺はたったそれだけの彼女の動きに魅了されていた。

 (俺もこの高みに……! )

 思わず口元が笑みの形に変わる。心の中で俺は彼女を紹介してくれたドルグに最高の感謝を捧げていた。


「見せてもらいます」

 

 刀を抜き、構える。昔、アース達の祖父に習った構え。だが彼女から見たらとても見れたものではない、稚拙なものに見えただろう。だけどそれでもいい……。それでいい! 


「……来訪者、シュン! 参ります!」


 そう俺が名乗った瞬間、俺は彼女の殺意に飲み込まれた。

 

 ━Side シュン Out━  

    |

    |

    |

 ━Side シズカ━ 

 ちょっと面白そうなやつを見つけたんだ。

 私にそう言ったのは、私がこの町に来てから世話になった男だった。

 

 当時、私は残酷な運命に翻弄され、何もかもを失い、この町に逃げて来た。心も体も疲弊し切りいっそのこと何もかもを終わらせてしまおうかとも思った。

 今でも思い出せる、最愛を失い、最愛から託された最愛すらも奪われたあの瞬間。

 その時に私も終われれば良かったのかもしれない。だけど私は終われなかった。最愛の人がそれを望まなかったから。


━君は、生きて、生き延びて、しあ……せ……、あ……て……━


 抜け殻のようにただ歩き、屍のようにただ生きて最後にこの町に辿り着いた。

 私はあの時、相当ひどい顔をしていたのだろう。目に付いた適当な宿に泊まろうと歩いていたところで、声を掛けてきたのがドルグだ。

 おすすめの宿があると無理やり私を引っ張っていき、飲めと酒の入ったジョッキを握らせる。

 今考えると完全に不審者だ。

 だがその時の私はそんなことを考える余裕などなかった。生きなければと考える心のどこかで終わりたいと思っていた。だからなにも考えずに酒を煽った。

 ところが結果的にそれが良いほうに転んだのから人生はわからない。

 酒に酔ってなにもかもドルグにぶちまけて気づくと宿の一室で眠っていた。

 起きれば二日酔いで頭がガンガンするし、気持ち悪いしで気分は最悪。

 だけど今まで見るのも嫌だった朝日がほんの少しだけ輝いて見えた。

 その後からはあっという間だった。冒険者であるドルグの仕事を手伝い、奔走する日々だった。最愛の人に習った技が役に立つ日が来るなんて思わなかった。

 そんなことをしている内にもう終わりたいなんて考えることもなくなっていた。

 

 月日が流れある程度の資金が溜まったところで土地を買い、今の屋敷を建てた。昔、最愛の人と共に過ごしたあの家の面影がある家。

 最愛のあの人が残した技を、思いを次へ繋げるために。

 だが誰にでも教えてやる気などない。刀の扱いを手習い程度に教える程度ならいい。だけどあの人の技はそれを継ぐに足る器を持ったものでなくては。

 それ以来ドルグは時折、こうして見込みのありそうな者を見つけては私の元へ送ってくる。

 まあドルグの冒険者業を手伝ったとき散々助けて、貸しを作ったのだからこれくらいはしてくれてもいいだろう。

 今のところは見込みのあるものはおらず簡単な手ほどきをしてあげるだけで返すことになっている。

 

 そして今日ドルグが送り込んできたのは、来訪者の少年だった。

 スキル【千里眼】を使って、門の前に来た少年達を見る。

 白く角度によってほんの少し青く見える雪のような髪に天の色を宿した瞳を持つシュンという名の少年。

 その少年は黒髪の小さな鬼の角を持つ、可愛らしく幼いサクヤという従者を引き連れていた。

 ドルグが言うには彼は召喚術士なのだという。

 あまり詳しくは知らないがモンスターなどを使役するテイマーに似た職だと聞いた。つまり幼い女の子を使役しているということなのだろうか? 

 思わず表情が険しくなってしまう。

 様子を見ていると彼は疲れた表情の彼女を労わり、近くの広場で彼女を膝に乗せて頭を撫で始めた。

 その時の少年の姿を私はこの先、忘れることなどできないだろう。

 従者の少女に向ける優しい瞳。労わりと共にどこか愛情を感じさせる暖かな雰囲気。その雰囲気に少女もいつの間にか寝息を立てている。


 その姿に、雰囲気にあの人の面影が重なる。あの人もあんな風な瞳を私に向けていた。

 しばらく私は動くこともできずに彼らを見ていることしかできなかった。

 気が付くと彼らは屋敷の門の前に再びやってきている。

 ハッとした私は急いで彼らを出迎えに外に出ていき、彼らを客間へ連れていく。

 その間、私は高揚を抑えるのに必死だった。別にあの人に雰囲気が似ている彼に惚れたとかいうわけではない。私の最愛はあの人だけだ。

 ただもしかしたら彼が、彼こそがあの人の技を継いでくれるのではないかと思ってしまったのだ。

 あの人と同じ空気を持つ少年。見た目は全然似てないし、刀士でもない。だけど……


 今私は道場で彼と対峙している。お世辞にも彼の構えは良い出来とは言えない。

 だけど……人が刀を握り、覚えた技を振るう時、それを支えるのはいつだって……


 それを彼に教え、そう在れる器があるかを試す! そのために……


 私は敢えて彼への殺意を剝き出しにする。さあ、どこまであなたがついてこられるか……私に見せてほしい! 


━Side シズカ Out━ 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんかシズカさん地の文だと性格変わってる気が…?
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