【124話】式典パーティ
サンジェルマン第二王子の生誕20年の式典と、サンパウロ第一王子が、正式に皇太子となる式典が同時に開催される事となった。
それは、サンパウロ王子が4年前に行われた、生誕20年式典よりも数倍の来賓が国外からやって来ていた。
もちろん、国外から来る来賓の交通手段は馬車であり、到着日時に相当な誤差が予想される中、予定日より10日近くも早く、3つの国が同時に王都に到着した。
その国は『ムアミレプ王国』『ターベール王国』『アルテシアンナ王国』の三ヶ国だ。
通常『大臣』『副大臣』『侯爵』良くて『公爵』『第三王子より下位の王族』が、少数でやって来る場合が多いのだが、今回この三国は違った。
ムアミレプ王国は、女王アンジェラが2体の生きた遺物『アプレンティスの衛兵』を連れて、その力を誇示するように、王都に入った。
ターベール王国は当初、宰相とその配下を使う予定だったのだが、ある事件から予定を変更して、追加で3人の大臣が参加を決めた。
ターベール王国の大臣は大半が、王族で占められていて、今回3人の大臣は国王の嫡子だった。
そして大国アルテシアンナは、王族こそ来ていないが、王位継承権一桁の公爵が七家もアルカディア王都に足を踏み入れた。
その中には、次期国王に内定している、王位継承権第一位『カールハイツ・ドルデルガー』の姿もあった。
そして、日を追うごとに、続々と他国から来賓の貴族、重鎮がやって来るのだった。
◆
◇
◆
これから、大パーティにディナーを食べに行くランディです。
この日のために胃袋を鍛えに鍛えました。
ついでに、お持ち帰り用の、保存ケースもドリアさんから2つも借りましたからねぇ。
しかしクラリスが、未だにごねているんですよ。
「ねぇ、本当に行かなきゃダメ? 私、行きたくないっ」
「母さん、いくら可愛くお願いしても、ダメですよ。父さんは騙せても、僕は引っ掛かりませんから」
「ランディ、失礼なっ! 確かに今のクラリスは可愛かったがな。だが、あきらめろクラリス。オレたちはランディの陰に隠れてコソコソと食事をして、後は、隅に避難する。この流れで行くと決めたじゃないか」
そう、ロイエンとクラリスには『侯爵に知り合いなどいないし、子爵なんか気にも留めないだろうから、美味しいご飯だけ食べて帰ろう』と説得したんだ。
「でも、嫌な予感がするのよ」
クラリス、そんな事言うの止めてくださいな。
「ランディ殿、馬車の準備は出来ました」
今回の護衛役に任命した、ペンタゴン。
理由は、弟のヘキサゴンが来賓として来るからだ。
もう、兄弟として過ごす事は叶わないが、せめて同じ城内で食事でも出来ればと思った。
特注の三頭牽引式の馬車に乗り、郊外の古城に向かう。
形式的な式典は午前中に終わり、昼過ぎから深夜にかけて、盛大なパーティが開かれる。
ただし、式典に参加をしない招待貴族も数が多すぎる事から、一足先に第四区画の外庭、第三区画の庭園は昼前から入場を始めている。
外庭では、来賓の付き人や護衛も参加出来る区画で、許可を得た食料系の商店が、屋台を作って料理を提供していた。
ここでの食事は無償で提供されるが、名前を売るには絶好の機会であり、材料費は国が出しているって話だ。
もちろん、ここにはレジーナの弟子達が数人紛れ込んでるって話だ。
だが、僕の目的は城内の宮廷料理。
レジーナの弟子たちを労ったら、庭園区画に入ろうと思う。
「ランディ様、ロイエンルーガ様、クラリス様、入り口に到着致しました」
どうやら、考え事をしていたら、もう目的地に着いてしまった様だ。
「ご苦労様です」
帰りは、いつになるか不明だから、彼は暫く休憩の後は、待機時間となる。
会場の外側には、来賓客の従者が多く滞在して、
お祭り騒ぎになっていた。
外側には柵が張り巡らしてあり、犬や猫の侵入すら困難だと思われる警備が『金翼騎士団』『銀角騎士団』『黒尾騎士団』によってなされていた。
そして、金翼騎士団でもマントを羽織る程の騎士がゲートを護っている。
僕とロイエン、クラリス、ペンタゴンの4人は、ゲートに向かった。
「ようこそ『ノイエフォレスト城』へ。失礼ですが、プレートの確認をさせて下さい」
マントの騎士が、迷わずロイエンのところにやって来て、招待状の役割を示すカードを確認しに来た。
お兄さん、それを持っているのは僕だよ。
僕はロイエンの隣に来て、銀製のプレートを見せた。
僕を見た騎士団達がギョッとした表情に変わる。
「少年の姿で、銀のプレート……ゴクリ……ライトグラム子爵」
「ああ、実力は王宮騎士団団長を上回ると言うあのライトグラム子爵か……」
「一対一じゃ無敵のライトグラム子爵がここに」
「……プ、プレート確認致しました。護衛の方にはこちらを」
僕とロイエンとクラリスを確認したあと、ペンタゴンに綺麗に装飾された小型の盾とメイスを渡していた。
なるほど、武器の持ち込みは一切禁止となっていたけど、念のために武器をここで渡すのか。
面白いシステムですね。
外庭に入ると、そこは別世界……何て事にはならなかった。
普通でした。
しかし、この場は招待された子爵、男爵が集まる区画で、ぐっと人は減っていき、身なりの良い貴族ばかりが目に入る。
「ランディ、お前何をしたんだ。あの良いとこの坊っちゃんで構成されている金翼騎士団が、尊敬の眼差しで見てたぞ!?」
「あなた、私聞きました。王宮騎士の団長より強いって。ランディやり過ぎちゃダメって、あれほど言ったのに」
それ、言われる前の出来事かも知れないんだけど。
「なっ、ランディ、王宮騎士の団長と言えば、国内で1位2位を争うほどのバケモノって話だぞ!? 本当に倒したのか?」
実は、リッツ教官と二対一で闘った以降、一度も手合わせしてないんだよな。
去年の話なのに、大袈裟だな。
「ちょっと話を盛ってますね。去年、ちょっとした事で闘うはめになって、両者ダウンで引き分けました」
「いや、それでも、最強相手に引き分けとか……もう手の届かない強さになったんだな」
「あなた、ランディは今でも身体を鍛えていますわ。一年前は互角でも、今は……」
二体一で闘ったのは、内緒にしておこう。
「そ、そんな……ランディ殿と互角の騎士がいるだと!?」
ガタガタと震えているペンタゴンには、正直に話しておこう。
何故かドリアさんとペンタゴンには、ついつい素の実力を見せてしまっている。
何故だろう。
ゲートの中央から内庭にかけて、道が整備されていて、カーペットらしき物が丸めて転がっている。
まさか、レッドカーペットか? 金掛けてるなぁ。
たぶん、来賓の到着に合わせて、敷かれるのだろう。
外庭に用事はないから、早めに内庭に行こう。
そう思った時。
「ロイエンルーガ!? ロイエンルーガか? なんで、きさまがこんな場所に居るんだ?」
「ん? なっ!? タ、タイム? タイムの野郎か」
見た事があるような、ないようなおっちゃんと、ロイエンが指を差し合っていた。
さぁ、ついに敵の登場……かもしれません。
タイムさんとは誰でしょう?
幼年編に答えはあります。




