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【106話】ドリア、驚愕する

 夜会は終わり、参加していた人々が会場から次々に消えていく。


 だけど、厨房の隣の部屋には、僕とドリアさん、護衛が2人にソダツさんがいる。


 僕は今、試されている。

 何を試されているか解らないんだけど、試されている。


 ドリアさんは、食べ合わせの研究が大好きなようで、即席ポン酢を開発したのも、この人だ。


 そして僕に、素敵な食べ合わせがないか、依頼してきたんだ。


 厨房にある食材を見ている。


 ドリアさんは、海岸付近に滞在してる時は、魚の刺身を食べる事があるって聞いた。


 特に好んだのは、赤身の刺身だった。

 これを聞いて、僕はあれを調べた。


 あった、見つけた、発見しました。


 見つけたのは、醤油、蜂蜜、ネギ、きゅうり、アボカド。



 調理技術はイマイチな僕でもこれくらいは出来る。

 さぁ実験です。



 今回、護衛の2人とドリアさんに許可を貰って、目隠しをしてもらった。


 この事を言い出した時、ソダツさんは大慌てだったけど、ドリアさんはすんなりと了承した。


「ヌホォ! 余に食材当てをさせる気か?」

(ここの食材の半分以上は、余が持ち込んだもの。何故そんな詰まらない事を……いや、あの方を信じよう)



 目隠ししたドリアさんに、優しく囁く。


「海で捕れたあの、魚を思い出して下さい。赤みがかった引き締まる身に、醤油をたらして、薬味をそっと添えた逸品」


「ヌハッ!? そ、それはまさかっ、ヌヒッ! それは絶対にあり得ない、そんな食材は持ち込んでいないし、こんな内陸部ではあり得ない!!」


「さあドリア様、口を開けてください。あ~ん」


 落ち着かせるように話し、開けさせた口に、例の物を放り込む。


「モグモグ、ヌホォォォ!! これは間違いなく、あの魚の身! いったいどうやって……ヌハァ!?」


 はい、正解はこれです。

 アボカド+ネギ+醤油=ネギトロ


「ドリア様、もう1品用意しています。もう一度目隠しを」


 興奮してるドリアさんを落ち着かせて、再び目隠しをしてもらう。


「ドリア様は、緑色の大きな果実が好物と仰っていましたね。たしかメロウでしたっけ?」


「ヌヒッ!? ま、まさか……メロウはもう食べ尽くしてる。あの中に代用食があるのかっ?」


 皮を剥いたきゅうりに、切れ目をたくさん入れて、馴染ませるように蜂蜜を塗ったニセメロンを、ドリアさんの口に押し込む。


「モグモグ、ヌヒョッ!? これはまさに、メロウ! いったいどうやったらこうなるんだ?」


 僕は、ドリアさんに種明かしをした。

 

 あらかじめ食べる食材をイメージさせてから目隠しをして食べさせると、思い込みで味覚をある程度騙す事が出来る。


 その上で、自慢の食べ合わせマジック。


 ドリアさんは、感動のあまり僕と繋がりを持ちたいと思うだろう。

 これで、ランディ商会の太いパイプをゲットだ。


「し……」


 し?


「使徒様、御方を試すような真似をして申し訳ありませんでしたぁ!」


 あれ? いつもの『ヌ○ッ!』は?

 何故に、ドリアさんが土下座してるの?

 しかも、太りすぎたせいか、土下座が維持できなくて転がったし。



「余は、余は……伝説の使徒様に会えて光栄でごさいますっ!」


 しかも、転がった事実はなかったかの様にして、話しを進めている。


「いったい、どうなってんのか説明して下さい」



 ……

 …………


 やっと落ち着いたドリアさんから、どうしてこうなったか、話を聞いた。


「ヌフッ! 余は、古くからある遺跡を長年調べて、神の使徒が住まう住居と推測したのだ。 ヌフッ! 少なくとも400年以上も前であると解っているその遺跡は、使徒と思われる方々が、この世界に住まう者共に、数々の恩恵を授けたと推測したのだ。ヌフッ! 私の知るかぎりで言えば、神は人間にはギフト以外の恩恵を与えない。ならば、ターベール王国に遺跡の恩恵をもたらしたのは使徒となる! ヌフッ! 使徒はそれぞれ得意分野があると思われ、我が国ターベールでは、食に特化した神秘の技術が伝えられています。 ヌホォ! 使徒様の齢にそぐわぬお力、目の当たりにして感動しています」


 この人、自分の肉体管理は出来てないけど、思ったより馬鹿じゃない。


 僕も、神器や遺物と呼ばれているマジックアイテムには、興味と疑問があったから彼の話は楽しい。



「ヌフッ! 使徒様は、何か使命など帯びているのでしょうか?」


 使命? ないけど、仲間との合流かな。

 その前に、世話なった人達に、ある程度のお金をプレゼントしたい。


「使命は、僕が立ち上げる商会の繁栄と、日々の食事を美味しく食べる事でしょうか」


 ドリアさんが、眼球がこぼれそうなくらい、目を見開く。


「ヌホォッ!! 余が付き従うに相応しい御方! ヌフッ! 使徒様の商会を強固にするにあたって、あの神の果実を我が国で育てたいのですが? 余の名と神の果実を使えば、独占的に我が国の名産品をアルカディアに届けられましょう」

 


 ……

 …………



 と言うことで、クリエイトフードフリーで収穫前のキウイを召喚して、空き地に植えまくる事にした。


 ただ、僕の召喚容量は限られているので、植えてから数年のキウイしか出せなかった。


 ソダツさん号令のもと、添え木を作って、大農園を作成した。


「ヌフッ! ランディさん、これの収穫はどのくらい待てばよいのでしょう?」


 ドリアさんが使徒様、使徒様と煩いから、強引に名前で呼んでもらった。

 これが僕のルールだって言ったら、素直に聞いてくれた。

 代わりに『余の事は、ドリアとお呼びください』って言ったから、ドリアさんと呼んでいる。


「たぶん、2年くらいで実が成るかと思いますね」


「ヌホッ! それならば、遺跡から発掘された『成長剤』を使えば、問題解決です。ヌハッ! ドロワット! ゴーシュ!」


 無口な2人の護衛が動き出す。


 そして、成長剤を使ったキウイは見事な実を宿したキウイに変わった。


「す、凄い……」


「ヌハッ! 我が国は『食』に特化した物が多いのです」


 これが、ターベール王国のキウイが世界中に広まるきっかけとなった。



 ……

 …………


 そして数日が経過した。


「ドリアさん、ソダツさん、お世話になりました」


 ダナムやテスターには、大人しく帰ることも出来ないのか? とブツブツ言われたけど。


 醤油とマヨネーズを独占流通するくらい、良いよね?


 あれ? なんかドリアさんの服装が違うんじゃない?


 まるで旅に出るような服装だ。

 もしかして、王都までの道のりは過酷なのかな。


 後、ソダツさんが超青い顔をしてるのは何故?



「ヌハッ! このような少数で国越えをするのは、初めてであるが、ランディさんは『武』も嗜むとか。ヌフッ! それにドロワット、ゴーシュは我が国でも10指に入る強者、心配無用ですぞ」


 こいつ、一緒に来る気かよ?


「ドリアさん、まさか僕と一緒に来るの?」

 敬語なんて使う気遣いは、もうない。


「ヌヒッ! 余はライトグラム男爵家に留学する事にした。なので大臣は辞任しました。ヌフッ! 心配無用、これでも余は第三王子である。大臣を辞任しても我が国の商会に便宜を図るのは雑作もない」


 いや、まって王子が国を無断で、出ちゃったら大問題でしょ?


「ヌホッ? 余の心配ですか? 余は既に神器により辞任を知らせ、今後の事も伝えた。心配あるまい」


 まさか、通信機でも有るのか?

 そこで、ソダツさんの口が開いた。


「我が国では、暗号で中継点をいくつも経由して、情報を伝えることが出来ます。ただ詳細は不可能で、今回伝えた暗号は『ドリア≡ダイジン≡ヤメル≡コクガイツイホウ』でした。他に近い言葉の暗号が見つからず、無理やり発信されられて……」


 ソダツさんの、顔が真っ青な理由が解りました。



 こうして、僕とダナム、テスター、アーティス、テイン、ドリアさん、ドロワット、ゴーシュの旅が始まる。



 ……

 …………


 追伸、ムアミレプ王国手前で、2千のターベール軍にドリアさんは、連行されてしまいました。


 ちょっとホッとしたよ。

さて、人間は錯覚する生き物です。


昔の人は、ジュゴンを人魚と間違えたらいですから……


味覚も、曖昧です。

不思議な事に鼻がつまっていると味覚にも影響がでますし、視覚にも繋がっています。


だけど、自分で書いておきながら、キュウリにハチミツでメロンとか……風邪を引いていたんでしょうか?


他にはミカン、海苔、醤油とか、プリン、醤油そして、トマト、砂糖なんて食べ会わせがありました。


申し訳ありませんが、真似をされて『違うわぁ』『無いわぁ』とか言われても、作者は責任を持てませんので、食べ合わせは自己責任でお願いします。


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