【107話】帰国途中で
第二回モーニングスター大賞、一次選考通過しました。
神罰転生を読んでくれた全ての人に感謝を。
ここは、今年の八武祭開催地区、パーオーン領。
貴族、富豪、近所に住まう騎士や傭兵、様々な者達が集まる場となる。
そうなると、必ず出没するのは商人である。
利益を求め、人が多く集まる場所に出没するのは、当然と言えよう。
そんな八武祭開催場に、馬車で約1日の距離のある場所で、1台の荷馬車が必死に盗賊から逃げていた。
そう、遠くから人が多く集まるとなると、頻繁に出没するのが盗賊の類いだ。
当然、大貴族を含む大半の人々は、幅の広い安 全な街道を通るが、時間に余裕のない者は近道を通るし、田舎から出発するとなると、街道なんて道は存在しない。
そんな場所に、盗賊は潜んでいた。
盗賊は、運搬能力の有りそうな2頭引き荷馬車を見つけた。
そして馬車を護衛する傭兵は、たったの2人しかいない。
盗賊は、喜んでその馬車を狙い襲った。
盗賊と馬車のレースは長く続いた。
荷馬車の正体は、ある商隊の1つで、八武祭の会場に向かう途中、馬車が破損したため、売り物の類いは全て別の馬車に移していたのだ。
修理が終わり、合流しようかという時に、盗賊に見つかり襲われたのだった。
盗賊は、道が悪い事から直ぐに追い付けると考えていたが、荷物の殆どない軽い荷馬車に中々追い付けないでいた。
だが彼らは、あきらめの悪い盗賊達だった。
互角の逃走劇は、前をゆっくり進む馬車がいた事で、終わりを迎えそうになる。
「しまったぁ! これじゃ追い付かれる。 おいっ、どけぇ! 盗賊だ、盗賊が襲ってきてるんだっ! どけっバカヤロー!」
当然、すぐ後ろで追いかけている盗賊達にも、ゆっくりと進む馬車は、見えていた。
「やった! 獲物が増えた、お前ら気を入れて襲え! 今夜は食い放題だ!」
「馬が、ひい、ふう、みい……5頭もいますぜ、大収穫だっ」
「しかも、前の馬は、かなりいい馬だ。高く売れるぜ」
「バカか? 馬を飼い慣らせば、俺らの狩りの幅が広がる、売るのはもったいねぇ」
「ようし、馬は傷つけるな! いけぇ!!」
「おう!」
「ひゃっはぁ!!」
「襲えっ」
「やっちまえ!」
「トゥース!」
「血を吸わせろぉ!」
盗賊と商隊の接触まで、時間にして1分もかからない距離まで迫っていた。
◇◆◇◆◇
ランディ視点
ターベール王国では、2千の兵士に囲まれる、超ビックリするイベントがあったけど、ドリアさんが連行されただけで済んだ。
ムアミレプ王国では、50名の護衛団が付いたくらいで、驚くような出来事はなかった。
こうして、アルカディア王国に入ってから数日、何事も起きなくて平和だ。
ただ地理を勉強してなかったせいで、王都まで何日かかるか、大雑把にしか分からない。
まぁ、ゆっくりと進みましょうか。
馬車の中で、アーティスと今後について話をしていると、後の方で騒々しい気配を感じる様になった。
ダナムとテスターは前を進んでいるから、違うよな。
「アーティス、ちょっと待って。後ろが騒がしいから見てくる」
御者をしているテインに『そのまま進んで』と言ってから、身を乗り出して後方を覗く。
すると、後続の馬車が僕を罵倒している。
『進め!』『急げ!』『このバカヤロー!!』って言われているのが聞こえた。
ちょっと叱りつけてやろう。
そう思い、馬車を飛び降りて、お仕置きモードになる。
そこで僕の勘違いに気づいた。
お仕置き対象の馬車は、盗賊に追いかけられていた。
心の中で盗賊に説教する。
おいおい、後ろから襲うのに馬の一頭もないのか?
それなら、待ち伏せして飛び道具とか伏兵を使って退路を塞げよ。
しかも、無駄にスタミナだけは、ありそうな盗賊だな。
なら、運動不足の解消をするか。
「神速」
僕は、罵倒したオッサンを通り抜けて、盗賊に突進した。
……
…………
盗賊は、とんでもない雑魚だった。
戦いの説明すらしたくない程の雑魚だった。
2人ほど、頑張った盗賊はいたけど、それでも高等学院の一般生徒並だった。
他は、目も当てられねぇ。
お陰で、敵は容赦なく殺す予定だったのが、全員生かしてしまった。
でも、調子に乗られると嫌だから、男玉は踏み潰しておいた。
盗賊の皆さんは、現在泡を吹いて気絶中。
「あ、ありがとうございます、名のある騎士かと思いますが、どちらの所属で? お礼は本隊と合流してからで良いでしょうか? あっ申し遅れました。ワタクシはシオン商会の一員で、ケンズリと言います」
僕はシオン商会でピンと来た。
シオンって『メクルカ・シオン』『イルムナ・シオン』のシオンだよな?
2人の親父がマスターベーシ○ンって名前の。
「シオン商会って、マスターベさんが頭の、あの商会かい?」
それを聞いたケンズリさんは、ビックリしている。
「えっ、か、会長と繋がりがあるので?」
「んっと、繋がりがあるのは、メクルカとイルムナの方だよ。親父さんには、以前に挨拶をした程度だ」
「坊っちゃんの方でしたか。それは丁度良いです。偶然にも、ワタクシがこれから向かう本隊には、会長と2人の坊っちゃんも居ます。これも何かの縁、お礼は良いものを、と頼みますので、ご同行願えませんか?」
おおっ、本当に丁度良い!
ムアミレプ、アルテシアンナ、ターベールと繋がりを持ったから、商会立ち上げのために、メクルカとイルムナのどっちかを貰おうと思っていたんだ。
「うん、僕に『バカヤロー』と罵った事を伝えないとね」
「えっ、いやっ……あの、すいませんでした!!」
みるみる顔を青くしたケンズリは。即頭を下げた。
「……」
(謝るの早っ、仕方ないなぁ、処罰しないって約束させてから喋っちゃおう)
ダナム達に事情を話して、ケンズリって人の道案内で進んで行く。
道は思っていたより悪く、到着したのは翌日の昼時になった。
聞いた話だけど、ここは8年に1度、八武祭のある年に栄える町、エレファンだ。
早速、シオン兄弟に会うため行動したが、彼らは八武祭を観戦してるため、ここには居ないそうだ。
なら僕も見に行こうかな。
って事で、シオン兄弟は後回しにして、八武祭観戦をする事にした。
ダナムとテスターを連れて、八武祭の会場に着くと、これから最終戦が始まるところだった。
最終日とあってか、普段の2倍の入場料を取られて会場入りした。
どうやら試合は、ギリギリ始まっていない。
間に合った。
試合形式は、僕が参加していた3年前と同様、1度に2試合の様で、片側がほぼ満席、もう1つはガラガラだった。
あの時は気づかなかったけど、面白い形をしたメガホンを持っている人が、解説をしている。
叫んだ声を、真後ろに伝えやすくするための、特殊メガホン。
そのメガホンから、解説者の声が聞こえる。
『さあ、盛り上がった8対8の大熱戦も、今回が最終戦! 対戦するは最下位決定戦のノルデンバーグ高等学院VSノースコート高等学院! この試合はどちらも敗けられない試合ですねぇ』
ああ、解りますとも。
誰だってビリにはなりたくない。
後で待っている、お偉いさん達の冷たい眼差しって嫌だもの。
『もう1試合は、サウスコート高等学院VSウエストコート高等学院、この2チームは今まで無敗で6試合を勝ち抜いています。 奇しくもこの2学院の特徴は両手魔法! すなわち、両手魔法が勝利の鍵となっているのは明白です! ただ、今までの試合を振り返ると、苦戦しながらも勝ち進んできた、ウエストコート高等学院より、全試合圧勝したサウスコート高等学院が有利と言う見方が多数です。さぁ、両手魔法使い同士の戦いは、どんな結果をもたらすのでしょうか? そろそろ試合が始まります』
そうか、サウスコート有利か。
一昨年は、テスターバスターのチームが優勝したって話だから両手魔法が完全無欠じゃないのは証明されているが、あいつパワーが半端ないからなぁ、右隣にいるテスターを見る。
「ん? どうした、ランディ」
「何でもありません」
「ランディ、それよりお前の義妹の様子が少しおかしいぞ」
ダナムの言葉で、アリサがレギュラーメンバーに居るのに気づいた。
「確かに」
そうだ、アリサの様子に違和感を覚えた。
それは、何かの制限があって、全力で戦えない感じに似ている。
そう、僕も死者蘇生の呪文だけは控えてるから、アリサの感情が解る。
でも、アリサ程度なら全開で闘っても、スカウト合戦にしか、ならないと思うけど。
それなら、僕が雇うから大丈夫。
僕は試合開始直前のアリサに向かって叫んだ。
『アリサッ! 全開で行けっ! 後の面倒事は(国様やバカ王子が)引き受ける、アリサの力を見せてみろ!!』
この後、大きな声を出した事に、だいぶ後悔した。
11月11日、閑話②気になる植物
改稿しました。
主に、測定器の測定結果を修正。




